特定技能「農業」とは|対象業務・試験・派遣・協議会・2号
目次
「うちの作業は特定技能で任せられるのか」「派遣で受けられると聞いたが、条件は何か」——特定技能「農業」を検討する農業経営体が最初に突き当たるのはこの2つです。結論から言うと、農業で押さえるべき固有ルールは①対象になる業務区分(耕種農業全般・畜産農業全般)②必要な試験③農業特定技能協議会への加入④雇用形態ごとの上乗せ要件(直接雇用にも雇用経験が要る・派遣元は限定列挙)の4つで、加えて労働時間の扱いも多くの分野と違います。農業は、労働者派遣の形態が認められる2分野(農業・漁業)のうちの1つであり[1](分野ごとの雇用形態は対象分野の一覧)、長期就労につながる特定技能2号もあります。[2]
この記事の要点
- 派遣で受け入れられる数少ない分野 — 季節で作業量が変わる農業に合わせた仕組み。直接雇用も可。
- 試験の免除は範囲が違う — 技能実習2号の修了による免除は、技能試験は対応する職種・作業のみ/日本語試験は職種を問わず。協議会には在留諸申請の前に加入します(費用はかかりません)。
- 雇用形態ごとに上乗せ要件がある(直接雇用にも) — 直接雇用なら「過去5年以内に同一の労働者を6か月以上継続して雇用した経験(又は労務管理の経験)」、派遣なら派遣元になれる事業者が限定され派遣先にも要件。ここで止まる経営体が多いので先に確認を。
- 2号は試験だけでは移行できない — 2号試験の合格に加えて実務経験(職長2年以上または現場3年以上)が必要。在留期間は上限なく更新でき、家族の帯同も可能です。
- 労働時間・休憩・休日は労基法の適用除外 — 多くの分野と違う扱い。ただし深夜割増賃金は適用されます。
本記事は一般的な情報提供です。農業分野の要件・対象業務の範囲・派遣の要件は変動するため、最新の内容は出入国在留管理庁および農林水産省の分野別の運用方針・運用要領で必ず確認してください。
対象となる業務区分
農業で従事できる業務は、次の2区分に整理されています。
- 耕種農業全般 — 栽培管理、農産物の集出荷・選別など。
- 畜産農業全般 — 飼養管理、畜産物の集出荷・選別など。
⚠️ どちらの区分でも「栽培管理」または「飼養管理」が従事する業務に含まれていることが必要です(農林水産省の相談窓口のFAQ)[3]。集出荷・選別だけ、関連業務だけを担ってもらう形は認められません。
関連業務には、その農業に従事する日本人が通常従事する作業に付随して従事できます。運用要領別冊は次の6つを例示し、専ら関連業務に従事することは認められないと注記しています(専従は在留資格に該当する活動として認められません)。[4]
- 自社(派遣の場合は派遣先)が生産した農畜産物を原料・材料の一部として使う製造・加工
- 自社(同)の農畜産物の生産に伴う副産物(稲わら・家畜排泄物等)を原料・材料の一部として使う製造・加工
- 農畜産物(自社が生産したものが含まれる場合に限る)の運搬・陳列・販売
- 農畜産物を原料・材料として製造・加工された物(自社生産分を使ったものが含まれる場合に限る)の運搬・陳列・販売
- 副産物を原料・材料として製造・加工された物(たい肥等の肥料・飼料等。同じく自社分を使ったものに限る)の運搬・陳列・販売
- その他、自社で耕種農業・畜産農業に従事する日本人が通常従事している作業(畜産と耕種の複合経営で畜産の技能を持つ人に耕種の作業を任せる場合、冬場の除雪作業に従事する場合など)
別冊も運用要領も、「どこまでなら付随的か」を時間の割合では定めていません。 「全体の3分の1まで」といった数字を挙げる解説もありますが、別冊が定めているのは在留資格に該当するかは在留期間中の活動全体を捉えて判断するという考え方です。数字で線を引くより、主たる業務(栽培管理・飼養管理)が実態として中心にあるかで組み立ててください。[4]
見落としやすいのは5と6です。たい肥や飼料の運搬・販売、複合経営での作目をまたぐ応援、冬場の除雪は、いずれも別冊が例示した関連業務です。一方「他社から仕入れた農産物の加工・販売だけ」は該当しません。
該当する/しないの実例
「うちの作業は農業に当たるのか」は、農林水産省の相談窓口のFAQに回答があります(抜粋)。[3]
| 作業・事業 | 農業分野での扱い |
|---|---|
| ゴルフ場の芝・樹木の栽培管理 | 該当しない(日本標準産業分類でゴルフ場の施設管理の一部) |
| 造園業 | 主たる業務としては不可。主な業務が耕種農業全般で、日本人も通常業務として造園作業を行っているなら関連業務として可 |
| きのこ栽培 | 菌種から栽培する場合は対象になり得る(原木を山から切り出して出荷する場合は林業。個別判断) |
| 養蜂 | 対象(日本標準産業分類「0129 その他の畜産農業」) |
| 馬の飼養管理 | 事業形態・目的により該当しないおそれ(競馬・乗馬目的は畜産局競馬監督課へ相談) |
| 養鶏で鶏の捕獲作業のみ | 不可(飼養管理業務を必ず行う必要がある) |
| GPセンターでの卵の洗浄・仕分け | 飲食料品製造業分野(養鶏場の業務には従事できない) |
複合経営なら区分をまたぐ余地もあります。FAQは、日本人従業員が主たる業務にあわせて他方にも付随的に従事しているなら、特定技能外国人も他方の業務に関連業務として従事できるとしています(下記の「両方の試験が要る」のは、他方を主たる業務として任せる場合の話です)。
農業以外の事業を兼営していても受け入れられます(耕種・畜産農業を行っていることが申請書類から判然としない場合、出荷高の証明・青色申告書等の追加提出を求められることがあります)。迷う作業は農林水産省の相談窓口(連絡先は別冊に一覧)へ照会を。
雇用するのは農家だけではない(JA・請負も可)
運用要領別冊は、農業者(農家・農業法人)に雇用される場合だけでなく、対象業務を自ら行う、または農業者から請け負って行う農業者等の団体(JA、酪農ヘルパー利用組合、コントラクター組織等)に雇用されて従事することもできるとしています。[4]
さらに相談窓口のFAQは、特定技能所属機関と各農業経営体が業務委託契約を結び、集約した農作業に従事してもらう形(農作業の請負)も可能としています。個々の農家が単独で受け入れ体制を組むのが難しい地域では、この形が現実的な選択肢になります。[3]
⚠️ 請負でやるなら、指揮命令の線を間違えないでください。 同じFAQは「指揮命令関係は、特定技能所属機関と特定技能外国人との間にあることにご留意ください」としています。作業を委託した農家が現場で直接指示を出す形にすると、請負ではなく労働者派遣に当たるおそれがあります。人に指示を出したいなら、請負でなく直接雇用か派遣を選ぶほうが整理しやすくなります。
農業で必要な試験
受け入れには、本人が技能試験と日本語試験の両方に合格していることが必要です(どちらか一方ではありません)。[5]
- 技能試験 — 「1号農業技能測定試験」[4]。耕種農業全般・畜産農業全般のうち、従事する業務に対応した区分を受験します。⚠️ 耕種と畜産の両方を主たる業務として任せたいなら、両方の試験に合格している必要があります(耕種だけの合格では畜産の業務に従事できません。ただし上記のとおり、複合経営で日本人も付随的に従事しているなら関連業務としての従事は可能です)。[3]
- 日本語能力水準 — 分野別運用方針は「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上と定め、運用要領別冊は国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)または日本語能力試験(N4以上)での確認を挙げています。水準と各試験の対応は特定技能の日本語試験で解説しています。
技能実習2号の良好修了による免除は、技能試験と日本語試験で範囲が違います。ここを一括りにすると、採れると思った人が採れません。[4]
- 技能試験の免除は、対応する職種・作業に限られます — 耕種農業の業務区分で受け入れるなら耕種農業職種の3作業(施設園芸・畑作/野菜・果樹)、畜産農業なら畜産農業職種の3作業(養豚・養鶏・酪農)の技能実習2号を良好修了していることが必要です。例えば養豚の技能実習を修了した人を耕種の業務で受け入れる場合、技能試験は免除されません。
- 日本語試験の免除は、職種・作業を問いません — 技能実習2号を良好に修了していれば、修了した職種にかかわらず国際交流基金日本語基礎テスト・日本語能力試験(N4以上)のいずれも免除されます。
- 免除を受けるには証明書が要ります — 別冊は、技能試験の免除を受けたい場合に技能実習2号修了時の農業技能評価試験(専門級)の実技試験の合格証明書の提出を求めています。専門級の実技に合格していない場合(技能実習法施行前の旧制度の実習生を含む)は、技能試験と日本語試験の両方を受けて合格するか、実習実施者が作成した技能等の修得状況を評価した文書の提出が必要です。「修了しているから大丈夫」で止めず、手元の書類を先に確認してください。
これから増えるのは、育成就労からの移行ルートです。 令和8年1月23日閣議決定の分野別運用方針は、1号の技能水準を「次のいずれかの試験」とし、従来の1号評価試験と並べて育成就労評価試験(専門級)の合格を掲げています。育成就労の作業区分(耕種農業=施設園芸・稲作畑作・果樹/畜産農業=養豚・家きん・養牛)ごとに対応づけています。[5]技能実習の職種名とは呼び方が変わるので、移行を前提に計画するなら区分の対応を先に確認してください(育成就労の対象分野)。
技能実習からの移行は、農業でも実務に慣れた人材を受け入れやすいルートです(特定技能・技能実習・育成就労の違い)。試験の全体像と分野別の合格率(令和6年度の試験実施状況報告書の1号の全行を編集部で合算=農業は89.3%)[6]は特定技能の試験で解説しています。
受験の実務:採用時期は「試験の日程」で決まる
農業技能測定試験は、全国農業会議所が主催し、プロメトリックがCBT(コンピュータ試験)で実施しています。1号と2号は別の試験で、条件がかなり違います。[7][8]
| 項目 | 1号農業技能測定試験 | 2号農業技能測定試験 |
|---|---|---|
| 受験料(日本国内) | 8,000円 | 15,000円 |
| 出題 | 学科・実技+日本語で指示された農作業の聴き取り/70問程度・60分 | 学科・実技(安全衛生管理を含む)/50問程度・60分 |
| 実施国・言語 | 日本を含む14か国・16言語 | 日本のみ・日本語のみ |
| 受験資格(年齢) | 満17歳以上(インドネシア国籍は満18歳以上) | 満17歳以上(インドネシア・ミャンマー国籍は満18歳以上)+実務経験の要件 |
| 国内で受験する場合 | 在留資格を有する者が対象(告示で定める機関発行の旅券を所持しない者を除く)・日本国籍は受験不可 | 同左+事前に全国農業会議所の書類確認 |
| 予約・キャンセル | 59日前〜3営業日前(土日祝は4営業日前)・キャンセル不可 | 3営業日前(土日祝は4営業日前)まで・キャンセル不可 |
| 結果 | 合否は試験終了時に画面表示・通知書は翌日〜5営業日以内 | 同左 |
| 再受験 | 試験日の翌日から45日間は同じ試験を受けられない | 同左 |
| 試験水準 | 国内実務3年以上で7割程度が合格(1号の実施要領) | 国内実務7年以上で3割程度が合格(令和6年度の実施状況報告書) |
採用計画に効くのは、不合格なら次の受験が最短でも45日後という点です。合否は当日わかりますが、そこから結果通知・申請が続きます。試験の合否は入社時期を1〜2か月単位で動かす変数として見ておくのが安全です(海外受験の料金は国ごとに異なります)。
⚠️ 国内試験の受験資格は実施要領が「在留資格を有する者」と定めています(法務大臣が告示で定める機関の発行した旅券を所持していない者は対象外)。[9]元技能実習生などすでに日本にいる人を採るルートは、ここを満たすかで最初に決まります。あわせて主催者は、国内受験について、二国間協力覚書(MOC)締結国の国籍を持たない人が申し込んだ場合、合格してもスコアレポートが在留諸申請の書類として認定されるかは保証しないとしています。[7]
農業特有の受け入れ手続きと労務のルール
農業分野では、他分野と共通する受け入れ要件に加えて、次の点を押さえる必要があります。
農業特定技能協議会への加入
加入は「受け入れてから」ではなく「在留諸申請の前」です。運用要領別冊は、特定技能所属機関が当該外国人に係る在留諸申請の前に農林水産省の農業特定技能協議会へ加入しなければならない、と定めています。さらに令和6年6月15日以降は、初めて受け入れる場合でも、申請時に協議会の構成員であることを明らかにする書類の提出が必要です。[4]
農林水産省の案内では、申請フォームから申し込み、加入通知書は申請日から概ね2週間程度で届くとされています(同ページは「相当期間〔例:2週間〜1か月〕を経過しても連絡がないときは事務局へ」とも案内=日程は1か月見ておくのが安全)。入会費や年会費等の費用はかかりません。[11]
| 誰が | 協議会との関係 |
|---|---|
| 直接雇用の受け入れ企業 | 構成員になる(在留諸申請の前に加入) |
| 派遣元(労働者派遣事業者) | 構成員になる(特定技能所属機関は派遣元) |
| 派遣先(働いてもらう農業者) | 構成員ではないが、協議会への必要な協力が求められる |
| 登録支援機関 | 加入の対象外(支援計画の実施を受託した場合は協力を求められる) |
つまり派遣なら加入するのは派遣元で、自社(派遣先)は「派遣元が構成員か」を確認する側に回ります。他分野の協議会は分野別協議会の一覧で確認できます。
相談窓口のFAQによれば、加入に特段の審査はありません(入力内容の確認が必要なときは担当官から連絡が入ります)。ただし加入後は、登録情報の変更の報告と、受け入れている特定技能外国人がいなくなったときの退会が必要です。加入通知書は保管してください(申請のたびに構成員であることを示す書類が要ります。FAQは「2回目以降の受入れの際に必要」と案内していますが、令和6年6月15日以降は初回から必要です)。[3]
在留諸申請では、協議会の構成員であることを確認できる書類に加えて、雇用形態に応じた誓約書の提出が必要です(分野参考様式)。[4]
| 受け入れの形 | 提出する主な書類 |
|---|---|
| 直接雇用 | 特定技能所属機関の誓約書(第11-1号)+協議会の構成員であることを確認できる書類(支援の全部を委託するなら第11-4号) |
| 派遣 | 特定技能所属機関(派遣元)の誓約書(第11-3号)+派遣先事業者誓約書(第11-2号)+協議会の構成員書類+労働者派遣事業許可証の写し(全部委託なら第11-4号)。さらに派遣先関係として派遣先の概要書(参考様式第1-14号)と労働・社会保険・租税の法令を遵守していることを証明する資料 |
誓約書・協議会の書類・労働者派遣事業許可証の写しは運用要領別冊[4]、派遣先の概要書と法令遵守の資料は運用要領本体[12]が定めます。なお申請書類の作成や申請取次は行政書士などの専門家の領域です(ここでは「何が要るか」の情報提供に留めます)。
雇用形態ごとの上乗せ要件(直接雇用にも「雇用経験」が要る)
農業は派遣形態が認められていますが、上乗せの要件は「派遣のときだけ」ではありません。ここは見落としやすいので、自社がどちらに当たるかを先に確認してください。
⚠️ 要件の実体は「方針」ではなく省令・告示側にあります。 令和8年1月23日閣議決定の分野別運用方針(別紙13)は派遣元を能力の言葉で書いていますが、派遣元の該当性を定めているのは特定技能基準省令で、運用要領別冊はその解説です。[5]方針の文言だけを読んで「組織の種類は問わない」と判断しないでください。
- 直接雇用で受け入れる場合 — 受け入れ企業(特定技能所属機関)に、過去5年以内に同一の労働者(技能実習生を含む)を少なくとも6か月以上継続して雇用した経験(法人の場合、業務を執行する役員が個人事業主として雇用した経験も含む)又はこれに準ずる経験があること。
- 「これに準ずる経験」=過去5年以内に6か月以上継続して労務管理に関する業務に従事した経験です。別冊は例として、子が農業経営を行う親の下で労務管理を行っていた場合や、労務管理の経験がある農業法人の従業員が新たに独立する場合を挙げています=自社で人を雇った実績がまだ無くても、この経路で満たせる場合があります。⚠️ ただし法人の場合、この労務管理の経験は「業務を執行する役員」のものに限られます(誓約書の様式にも「※法人の場合は業務を執行する役員に限る」と注記されています)[4]。役員でない現場責任者の経験では満たせません。しかも相談窓口のFAQは、この労務管理の経験は同一の労働者に対してでなくてもよいとしています(雇用経験のほうは「同一の労働者を6か月以上」なので、条件が違います)。[3]
- ⭐ 「6か月以上継続して雇用」はハードルが低い場合があります — 相談窓口のFAQは、フルタイム・パートタイムなど雇用形態の規定はなく、労働日数や労働時間を問わないため、アルバイトや技能実習生でも、同じ人を6か月以上継続して雇用した経験があればこの要件を満たすとしています。「常勤の従業員を雇ったことがないから無理」と諦める前に、過去5年の雇用実績を洗い出してください。[3]
- 派遣で受け入れる場合 — 派遣元になれる事業者は限定されています。特定技能基準省令は、次の①〜④のいずれかに該当し、かつ業務の属する分野を所管する関係行政機関の長と協議の上で適当と認められる者としています(この協議の相手は、運用要領本体が「出入国在留管理庁長官と関係行政機関の長」、別冊が「法務大臣が農林水産大臣と協議」と書いており、文書によって表記が違います):①農業又は農業に関連する業務を行っている者(農畜産物の集荷・加工・販売・営農/技術指導を行う生産者団体等。農業協同組合・同連合会・農業者が組織する事業協同組合などが想定されます)/②地方公共団体又は①が資本金の過半数を出資している者/③地方公共団体の職員又は①等が役員であるなど、地方公共団体又は①が業務執行に実質的に関与していると認められる者/④国家戦略特別区域法第16条の5第1項に規定する特定機関(指針による基準適合性の確認を受けており、かつ適正に外国人農業支援人材を派遣先農業経営体に派遣したことがあることが必要)。なお派遣元として適当と認められる期間は認定日から3年間で、⚠️ 経過すると特定技能外国人を派遣労働者として受け入れられなくなります(在留期限までに満了する場合は事前に地方出入国在留管理局へ申告・相談)。別冊は、期間経過後に改めて該当性を確認するとしています。派遣元を選ぶときは認定の残り期間も確認してください。[12][4]
- 派遣先(実際に働いてもらう農業者)にも要件があります=過去5年以内に同一の労働者(技能実習生を含む)を少なくとも6か月以上継続して雇用した経験があるか、又は派遣先責任者講習等(都道府県労働局が実施する派遣先向けの講習等)を受講した者を派遣先責任者として選任していること。二者択一なので、雇用経験が無くても講習受講者を派遣先責任者に選任する経路があります。
- あわせて派遣先は派遣先事業者誓約書(分野参考様式第11-2号)を提出します。誓約する内容は、労働・社会保険・租税に関する法令の遵守、同種の業務の労働者を非自発的に離職させていないこと、行方不明者を発生させていないこと、欠格事由に該当しないことなどです。「講習を受ければよい」だけでは終わりません。
直接雇用と派遣、どちらで受けるか
農業で迷いやすいのはここなので、判断材料を1か所にまとめます。
| 比べる観点 | 直接雇用 | 派遣 |
|---|---|---|
| 特定技能所属機関(受け入れの主体) | 自社 | 派遣元(労働者派遣事業者) |
| 自社に必要な経験 | 過去5年以内に同一の労働者を6か月以上継続雇用、または労務管理の経験(法人は業務執行役員のもの) | 上記の雇用経験、または派遣先責任者講習等の受講者を派遣先責任者に選任 |
| 協議会 | 自社が加入 | 派遣元が加入。自社(派遣先)は協力する側 |
| 支援計画の策定・実施 | 自社(登録支援機関へ委託可) | 派遣元。ただし3か月に1回以上の定期面談は派遣先の監督的立場にある者が応じる |
| 相手(人材/派遣元)の選び方 | 人材側に上乗せの制限なし | 派遣元は農業に関わる事業者に限られ、日帰りで苦情処理できる距離が必要 |
| 繁閑への対応 | 時期ごとに別農場なら都度の雇用契約と許可(下記) | 派遣先の追加は事前の届出で対応(下記) |
| 費用 | 紹介手数料+支援委託費 | 派遣料金(派遣元への支払い) |
支援計画の実施主体と定期面談の相手は運用要領本体が定めます。[12]通年で仕事があり、人を雇った経験があるなら直接雇用。複数の産地で回したい、支援体制を自前で持ちたくないなら派遣、が基本の分かれ目です。ただし派遣は「近くに条件を満たす派遣元がいるか」で現実性が決まります。
派遣元をどう探すか
派遣元は「農業に関わる事業者に限られ、しかも近い」必要があります。運用要領別冊は、派遣先の対象地域が、派遣元責任者が日帰りで苦情処理を行い得る地域であり、かつ苦情処理を含めた雇用管理を適切に行える範囲であることを求めているため、遠隔地の派遣会社は現実的な選択肢になりません。[4]
⭐ 派遣元になれるのは団体だけではありません。 別冊は①の「農業を行っている者」を農業経営を行う者と定義し、該当を示す書類に耕作証明書・営農証明書・出荷伝票等を挙げています=近隣の農業法人が派遣元になる道も制度上あります。
探す順番は、①所属するJA・県連に派遣事業の有無を尋ねる、②農林水産省が公開する農業特定技能協議会の加入者一覧表で地域内の事業者を確認する、③心当たりの農業法人・団体に派遣元化を打診する、④見つからなければ直接雇用へ切り替える、が現実的です。
一覧表は地域別に2ファイル(その1=北海道・東北・関東/その2=北陸〜九州沖縄)で、加入年月日・構成員番号・都道府県名・種別・名称の列があります(時点はその1が2025年12月23日現在、その2が同12月25日現在=農水省のページ表記は両方12月23日)。行のどこかに「派遣」の記載がある構成員が派遣元です=記載位置は種別欄のことも名称の右のこともあり、セルが途中で切れた行もあるので、行全体で見てください。
⚠️ 数えてみると、派遣元はかなり限られます。 加入者約13,600件のうち「派遣」の記載は70件(約0.5%)、所在は26都道府県のみ・21県はゼロ。最多は東京都14件・北海道8件で都市部と一部の産地に偏ります(編集部集計=2ファイルの「派遣」記載行を計上)。[11]
上の日帰り圏の要件があるため、自県にゼロなら隣接県の事業者が範囲に入るかが分かれ目です。入らないなら、直接雇用(または所属団体へ派遣元化を打診)へ早めに切り替えるほうが時間を失いません。
⚠️ 打診の前提=派遣元には労働者派遣事業の許可が要ります(在留諸申請で許可証の写しを提出)。持っていない相手は許可の取得から始まります。許可の有無は厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で自分で確認できます。[13]
時期ごとに別の農場で働いてもらうには
繁閑差への対応として「時期ごとに違う農場で働いてもらいたい」という相談は多く、相談窓口のFAQは形態別に手順を示しています。[3]
- 直接雇用 — 働く農場ごとにその都度雇用契約を締結し、地方出入国在留管理局から許可を受ける必要があります。⚠️ ただし特定技能の雇用契約はフルタイムが前提で、運用要領は原則を「労働日数が週5日以上かつ年間217日以上、かつ週労働時間が30時間以上」としています。[12]この下限が原則なので、繁忙期の数か月だけ雇う形は成立しません。 冬場に作業が途切れる産地で通年の仕事を作る手は3つ=関連業務としての除雪など(上記)・複合経営で作目をまたぐ・JAやコントラクター組織が雇用して各農場へ回す(上記)。それでも埋まらないなら派遣です。
- 派遣 — 派遣先と派遣期間は原則として在留諸申請の時点で定まっている必要があり、派遣計画書に記載のない派遣先へ派遣するときは「あらかじめ」雇用契約の変更を届け出ます(新しい派遣先が基準に適合しない場合は、派遣を停止するよう助言・指導が入ります)。[12]直接雇用から派遣へ切り替えるなら、派遣開始のおおむね3か月前に雇用契約を締結して届け出ます。
農業に派遣が認められている理由がこの季節性で、複数の産地・作目をまたぐなら派遣のほうが手続きは軽くなります。もう一方の派遣可能分野である漁業も同じ論点です(船員派遣という枠組みが絡む点が違います=漁業の特定技能採用)。
協議会の加入通知に2週間〜1か月、試験の再受験に45日、直接雇用から派遣への切り替えに3か月——日程は逆算して置くのが安全です。採用全体の流れは特定技能の採用の流れ、企業側の受け入れ要件は特定技能で企業に求められる受け入れ要件で解説しています。
「うちは何人まで採れるのか」(人数枠の考え方)
農業には、受入れ機関ごとの人数枠はありません。運用方針が定めているのは分野単位の受入れ見込数で、そのうち1号と育成就労は上限として運用されます(下記)。介護・建設のように受入れ機関の人数枠が別に定められている分野もあります。[1]
令和8年1月23日閣議決定の現行方針で、農業分野の受入れ見込数は特定技能1号が令和6年度から5年間で73,300人(令和10年度末までの5年間の受け入れの上限として運用)、育成就労が令和9年度から2年間で26,300人(同じく上限として運用)と定められています。[5]あわせて分野全体(令和6〜10年度の5年間)の受入れ見込数は99,600人です(こちらは見込数として示されたもので、「上限として運用する」と規定されているのは1号と育成就労の2つです)。⚠️ 「上限として運用」には止める仕組みが伴います。同方針は、受入れ見込数を超えることが見込まれる場合などに、農林水産大臣が法務大臣へ在留資格認定証明書の交付の一時停止を求める(再び必要が生じたら再開を求める)と定めています。外食業で実際に起きたのがこの停止です(受け入れ停止と充足率)。農業の充足率は54.5%(2026年3月末・速報値)で当面の余裕はありますが、同じ表の年間増加数9,438人で残り枠(73,300−39,950=33,350人)を割ると約3.5年で埋まる計算です(編集部算出=同一資料内の単純計算)。[14]枠は先着で消える性質のものとして、受け入れ時期を後ろ倒しにしすぎない前提で計画を。人数枠は運用方針の改定で見直されるため、最新の公表値で確認を。育成就労の分野ごとの整備状況は育成就労の対象分野、制度の全体像は育成就労とはで解説しています。
労働時間・休憩・休日は労働基準法の適用除外
農業は、日本人が従事する場合と同様に、労働時間・休憩・休日に関する労働基準法の規定が適用除外になります。繁忙期の働き方を組みやすい一方で、「だから自由に働かせてよい」という意味ではない点が、運用要領別冊にはっきり書かれています。[4]
- 適用除外になるのは労働時間・休憩・休日の規定だけ — 別冊は「深夜勤務における深夜割増賃金やその他の規定については適用除外にならない」と明記しています。
- 適切な労働時間管理と、休憩・休日の設定は求められる — 別冊は、特定技能外国人が健康で文化的な生活を営み職場での能率を長期間維持できるよう、本人の意向も踏まえつつ労働基準法に基づく基準も参考にしながら、過重な長時間労働とならないよう適切に管理し、適切に休憩・休日を設定しなければならないとしています。
繁閑差の大きい農業では、この「適用除外だが管理義務はある」という組み合わせが受け入れ後のトラブルの分かれ目になります。労働時間の記録と休日の設定は残しておくと、届出や巡回の場面で説明しやすくなります。
⚠️ この適用除外は、育成就労にはそのまま引き継がれません。 同じ別紙13の育成就労側(第三)は、実施者に特に課す条件として、労働時間、休日、休憩及び時間外の割増賃金に係る待遇について、労働基準法に準拠していることを挙げています。[5]技能実習からの受け入れを続けている経営体は、育成就労へ移行する段階で労働時間の設計を見直す前提で計画してください(制度の全体像は育成就労とは)。あわせて育成就労では本人の意向による転籍が制度化され、農業の転籍制限期間は1年です(育成就労の転籍)=繁閑差の大きい農業では、定着の設計にも効いてきます。
賃金・法定福利と費用の決め方
農業の賃金は「いくらが相場か」より先に、満たすべき基準から決まります。
- 報酬は日本人と同等以上 — 分野を問わない特定技能の基準です。同じ業務に就く日本人がいなければ、近い立場の人の賃金や地域の水準から説明できる形にします。雇用条件書での書き方は特定技能の雇用契約で解説しています。
- 深夜割増は必ず設計する — 労働時間・休憩・休日は適用除外でも、労働基準法第37条第4項の深夜(22時〜翌5時)の割増賃金は適用されます。早朝の出荷や夜間の分娩対応がある経営体では、月給に含めたつもりで払い漏れる事故が起きます。
- 最低賃金・年次有給休暇は通常どおり — 別冊が適用除外と書いているのは労働時間・休憩・休日の3つの規定だけで、年次有給休暇や最低賃金は含まれません。⚠️ 「農業でも36協定は必須」と書く解説もありますが、自社の作業や雇用形態がどこまでこの3規定の適用除外に当たるかは個別の判断です。運用を決める前に、社会保険労務士など労務の専門家に確認してください。
- ⚠️ 社会保険・労災には農業の例外があり、例外には「代わりの義務」が付きます — 法人なら健康保険・厚生年金は強制適用ですが、個人経営の農林漁業は、従業員が常時5人以上でも厚生年金保険の適用事業所になりません(日本年金機構)。⚠️ ただし従業員の半数以上が同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受ければ任意適用事業所になれます(同機構)。厚生年金に入れて募集したいなら、この経路も選べます。[15]労災も個人経営で常時5人未満の農業は暫定任意適用(危険・有害な作業を主とする事業と、事業主が特別加入している事業を除く。⚠️ 暫定任意適用でも労働者の過半数が加入を希望すれば強制適用)。[16]ただし運用要領は、適用事業所でない場合の受入れ基準を次のように定めています。[12]
- 社会保険=「特定技能所属機関(事業主本人)が、国民健康保険及び国民年金に加入し、所定の保険料を適切に納付していること」。確認書類は直近2年度分の国民健康保険料(税)納付証明書等=審査されるのは経営者個人の納付状況です(未納があっても、入管の助言・指導に基づいて納付すれば遵守と評価されます=先に解消しておけば足ります)。
- 労災=代替措置として「労災保険に類する民間保険に加入していること」。確認書類は民間保険の加入を証明する資料=「暫定任意適用だから労災は手当てしなくてよい」ではありません。
- 費用の考え方(総額感は費用記事へ) — 「初期費用(人材紹介手数料・相場/在留資格の申請費用/渡航費など)+月額の支援委託費」が基本で、派遣なら派遣元へ支払う派遣料金が中心になります。実額の分布と採用ルート別のモデルは特定技能の採用費用・相場、支援委託費は登録支援機関の費用にまとめています。
人材の探し方と登録支援機関の活用
人材の探し方には、公的な無料の経路もあります。試験実施機関の全国農業会議所は「農業技能測定試験合格者向け求人情報提供サイト」を運営し、国内で試験に合格した外国人材に向けて農業経営体が自分で求人を掲載できます(登録支援機関の代理登録も個別の農業者の求人として記入)。⚠️ 求職者から手数料は徴収できず(職業安定法第32条の3第2項)、サイトを使って職業紹介事業を行うことは禁止。会議所は仲介・あっせんを行わず、採用が決まったら報告します。[17]
生活支援の体制を自社で整えるのが難しければ、登録支援機関へ委託できます。地方での受け入れや繁忙期の対応など現場の事情があるため、農業分野での支援実績が判断材料になります。選び方は登録支援機関の選び方、契約前の確認は契約前チェックリストを参考にしてください。定着の工夫は特定技能外国人の定着支援へ。
長期就労:特定技能2号
農業は特定技能2号の対象分野です。2号では、耕種農業全般・畜産農業全般の業務に加え、これらに関する管理業務を担います。2号に移行すると在留期間を更新の上限なく延長でき、家族の帯同も可能になります。1号・2号の違いは特定技能1号と2号の違いをご覧ください。
2号は「試験に受かれば移行できる」ではありません。分野別運用方針(別紙13)は、2号を技能試験の合格・実務経験・日本語能力水準の3つで定めています。[5]
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 技能水準 | 2号の評価試験(耕種農業/畜産農業)の合格。⚠️ 試験の呼び名は移行期です=実施機関は「2号農業技能測定試験」、令和8年1月23日閣議決定の分野別運用方針は「農業特定技能2号評価試験」と表記しています(1号も同様に「1号農業技能測定試験」/「農業特定技能1号評価試験」の2通り) |
| 実務経験 | ①農業の現場で複数の従業員を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者(職長)としての2年以上、または②農業の現場における3年以上(耕種・畜産それぞれの区分で設定) |
| 実務経験の数え方(別冊の定義) | 「複数の作業員を指導しながら…工程を管理する」=自然条件(畜産は家畜や畜舎環境)の変化に応じて自らの判断で農作業を行い、2名以上を指導・監督して工程を管理すること。作業員の国籍・職責は問わず、繁閑期の事情で一部指導しない期間があっても差し支えない。「現場における」実務も自らの判断で従事した経験を指す |
| 日本語能力水準 | 「日本語教育の参照枠」のB1相当以上 |
実務経験の年数と数え方は運用要領別冊が定めます。[4]⚠️ B1要件は、令和8年1月23日閣議決定の分野別運用方針(別紙13)が定めているもので、より下位の運用要領別冊(令和7年6月6日一部改正)はまだ反映していません。この水準を試験で確認する扱いに係る省令の施行は2027年4月1日の予定です[1]。つまり農業では今のところ、2号移行にあたって日本語試験の合格を別途求められる扱いにはなっていません(1号と2号の要件の違いは特定技能1号と2号の違い)。
企業側で見落としやすいのは実務経験の証明です。運用要領別冊は、特定技能外国人から農業分野に係る実務経験を証明する書面の交付を求められた場合、受け入れ機関は交付または提供をしなければならず、行わない場合は基準に適合しない(=受け入れができなくなる)と定めています。[4]
証明書は受験手続きの入口でもあります。2号試験の申込みには、事業者が作成する「実務経験に係る証明書」(様式第1号・発行日から6か月以内)と受験者本人の誓約書(様式第2号)が必要で、書類の確認に7〜10日間程度、申込みは試験日の3営業日前(土日祝なら4営業日前)までです。[18]
⚠️ 2号試験は日本語のみ・開催国も日本(上表)。1号のうちから日本語学習を支えないと、年数を満たしても試験で止まります。[3][8]
⭐ 2026年4月から、2号試験は通年で受けられます。 全国農業会議所は2026年3月30日に「従来の定期開催方式から、通年で受験可能な方式へ変更します」と告知(2026年度の実施期間は2026年4月24日〜2027年3月10日)。[19]「次の試験日まで待つ」制約が外れたので、実務経験が満ちた人から順に受けさせられます。
ただし2号は難易度の設定が違います(上表=国内実務7年以上で3割程度が合格する水準)。合否の基準は、令和6年度報告書では「全国農業会議所が定める判定基準点を超えていること」です。令和6年度の実績は、耕種が2,250人受験・787人合格で 35.0%、畜産が536人受験・309人合格で 57.6% でした(編集部集計=同一報告書内の月次の合算)。水準の「3割程度」は実務7年以上の人を想定した設計値で実受験者の合格率とは母集団が違いますが、耕種と畜産で合格率が大きく違うことは前提にしてください。[6]1号の合格率(令和6年度・農業89.3%)と同じ感覚で計画すると外れます。
つまり2号を目指すなら、書類の準備に2週間、そこから試験・結果というリードタイムが要ります。1号のうちから、誰がどの作業をどれだけ担当したかを記録に残しておくと慌てずに済みます。
なお支援計画は法律上「1号特定技能外国人支援計画」=2号は対象外[12]になるため、登録支援機関へ支払っていた月額の支援委託費は不要になります(支援義務の有無は特定技能1号と2号の違いを参照)。長く働いてもらうほど、費用面でも効いてきます。
5年で帰すか、2号へ送るか(不合格時の特例まで含めて考える)
1号の在留は通算5年が上限です(特定技能の在留期間)。試験実施機関は、2号試験に不合格でも合格基準点の8割以上を得点し、5年超の在留に相当の理由があると認められる場合は最長1年間、通算在留期間を超えて在留できると案内しています。[20]
この「8割」に当たる実点数は過去2期間ぶん公表されています。
| 受験期間 | 耕種農業=在留特例の下限(%) | 畜産農業=在留特例の下限(%) |
|---|---|---|
| 2023年12月〜2024年2月 | 62.4点以上 | 44.8点以上 |
| 2024年5月〜2025年6月 | 52.8点以上 | 48点以上 |
2025年6月以前に受験した人は、申請にあたって成績証明書が別途必要で、内容の確認に7〜10日程度かかります。2号に送るつもりなら、実務経験の記録・日本語・受験時期を1号の3〜4年目には逆算しておいてください。
農業で働く特定技能外国人の実像
農業の特定技能1号在留者は39,950人(2026年3月末・速報値)で、受入れ見込数73,300人に対する充足率は54.5%です(全分野の比較は受け入れ停止と分野別の充足率で整理)。[14]
⚠️ 人手不足の度合いは、同じ農業でも作目で大きく違います。 分野別運用方針(別紙13)は、令和6年度の農業分野の有効求人倍率を2.03倍とし、その内訳を農耕作業員1.72倍・畜養作業員3.83倍(全職業平均は1.25倍)と示しています。あわせて基幹的農業従事者は平成12年の240万人から令和6年に111万人へ半減し、年齢構成のピークは70歳以上です。[5]畜産は日本人の採用がとりわけ難しいという前提で、受け入れの優先順位や待遇を設計してください。
国籍別・都道府県別・年齢構成の内訳は、出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数」(2025年12月末・農業1号37,952人)をトモハタが集計した次のカードで確認できます(上の39,950人は四半期公表の2026年3月末、こちらは半期公表の2025年12月末)。[21]
データで見る:農業で働く特定技能外国人
2025年12月末時点
全国で就労中
37,952人
直近2.5年の伸び
+82%
2025年12月末時点で全国37,952人(2023年6月末の20,882人から+82%)。国籍はインドネシアが37.1%で最多、都道府県は茨城県が5,604人で最多です。
どの国から来ているか
- インドネシア14,089人(37.1%)
- ベトナム9,789人(25.8%)
- カンボジア3,696人(9.7%)
- フィリピン3,496人(9.2%)
- 中国2,744人(7.2%)
- その他4,138人(10.9%)
直近はインドネシアが急増(2年半で+164%)
どこで働いているか
- 茨城県5,604人
- 北海道3,880人
- 熊本県2,854人
- 千葉県2,236人
- 長野県2,094人
年齢層
- 18-29歳50.7%
- 30-39歳39.8%
- 40+歳9.6%
男女比
- 男性59.1%
- 女性40.9%
出典:出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数」(令和7年12月末)をトモハタが集計。数値はすでに就労している人の分布で、地域の人材供給・採用競合をつかむ目安です。募集のしやすさを保証するものではありません。
全分野の人数・国籍・都道府県の統計は特定技能の統計データにまとめています。
まとめ
特定技能「農業」で押さえる順番は、①対象業務区分と関連業務の線引き→②試験→③協議会加入→④雇用形態ごとの上乗せ要件です。とくに④は直接雇用でも雇用経験(又は労務管理の経験)が要り、派遣では派遣元が限定されるため、先に確認すると手戻りがありません。
制度の全体像は特定技能採用の完全ガイド、企業側の要件は特定技能で企業に求められる受け入れ要件、対象分野は特定技能の対象分野一覧、よくある失敗は特定技能採用でよくある失敗と注意点をご覧ください。
「自社の農業で特定技能外国人を直接雇用と派遣のどちらで受け入れるか」「農業特定技能協議会の加入をどう進めるか」を相談したい場合は、条件に合う登録支援機関・人材紹介会社を無料でご紹介します(提携先のサービスをご紹介しています)。
よくあるご質問
- 農業で特定技能の外国人を採用するには何が必要ですか?
- 採用する外国人が、1号農業技能測定試験に合格し、「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上の日本語力(国際交流基金日本語基礎テスト〔JFT-Basic〕・日本語能力試験〔JLPT〕N4以上で確認)を持つことが基本です。技能実習2号を良好に修了した人は、対応する職種・作業(耕種農業なら施設園芸・畑作/野菜・果樹、畜産農業なら養豚・養鶏・酪農)であれば技能試験が免除され、日本語試験は職種を問わず免除されます(免除には、技能実習2号修了時の農業技能評価試験〔専門級〕の実技試験の合格証明書か、実習実施者が作成した技能等の修得状況を評価した文書の提出が必要です)。企業側は、受け入れ要件を満たし、在留諸申請の前に農業特定技能協議会へ加入する必要があります(費用はかかりません)。
- 農業では派遣で特定技能外国人を受け入れられますか?
- 農業は、特定技能で労働者派遣形態が認められている分野です(多くの分野は直接雇用に限られます)。季節によって作業量が大きく変わる農業の事情に対応したもので、派遣の場合は派遣元(派遣事業者)にも要件が定められています。直接雇用での受け入れも可能です。
- 農業分野に特定技能2号はありますか?
- あります。農業は特定技能2号の対象分野で、2号では耕種農業全般・畜産農業全般の業務に加え、これらに関する管理業務を担います。2号農業技能測定試験の合格に加えて、実務経験(職長としての2年以上、または現場での3年以上)が要件です。日本語は、分野別運用方針が「日本語教育の参照枠」B1相当以上の水準と定めていますが、この水準を試験で確認する扱いに係る省令の施行は2027年4月1日の予定です。2号は在留期間を更新の上限なく延長でき、家族の帯同も可能になります。
- 農業の特定技能外国人に労働基準法の労働時間の規定は適用されますか?
- 農業は、日本人が従事する場合と同様に、労働時間・休憩・休日に関する労働基準法の規定が適用除外になります。ただし適用除外はその3つの規定だけで、深夜勤務の深夜割増賃金などは適用されます。運用要領別冊は、過重な長時間労働にならないよう適切に労働時間を管理し、適切に休憩・休日を設定しなければならないとしています。
出典・参考(一次情報)
- 外国人労働者に関する制度概要(令和8年7月1日更新/労働者派遣は農業分野及び漁業分野のみ/特定技能2号の日本語能力水準に係る省令は令和9年4月1日から施行予定)(出入国在留管理庁)
- 特定技能(農業分野)(出入国在留管理庁)
- 農業分野のよくある質問(分野該当性=ゴルフ場の芝・造園業・きのこ・養蜂・馬・鶏の捕獲のみ・GPセンターの卵/雇用経験6か月は労働日数・労働時間を問わずアルバイト・技能実習生でも可/農作業の請負は業務委託契約で可/協議会は特段の審査なし・変更と退会は報告/耕種と畜産の両方は両方の試験合格が必要/時期ごとに別農場で働かせる方法)=特定技能外国人材受入支援事業(農林水産省委託)/確認日2026年8月9日(農林水産省(特定技能外国人材受入支援事業))
- 運用要領別冊「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-農業分野の基準について」(令和7年6月6日一部改正)=派遣元の①〜④・3年間の再確認・直接雇用の雇用経験と「これに準ずる経験」・派遣先の要件/確認日2026年7月30日(農林水産省・法務省)
- 農業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針(別紙13・令和8年1月23日閣議決定)第二2(2)・2(3)=雇用形態と上乗せ要件/確認日2026年7月30日(出入国在留管理庁)
- 令和6年度農業技能測定試験実施状況報告書【農業分野】(令和7年10月20日)=合否の基準「総合得点に対し、全国農業会議所が定める判定基準点を超えていること」・2号の実施結果〔耕種=2024年5月〜2025年3月の6回で2,250人受験・787人合格、畜産=536人受験・309人合格〕・1号の実施結果〔耕種24,855人中21,915人合格・畜産6,427人中6,021人合格〕/確認日2026年8月9日(出入国在留管理庁(掲載)・農林水産省)
- 農業技能測定試験1号(耕種農業/畜産農業)=試験時間60分・70問程度・受験資格〔満17歳以上・インドネシア国籍は満18歳以上・日本国籍は受験不可〕・予約は試験日の59日前〜3営業日前・キャンセル不可・結果は翌日〜5営業日以内・再受験は試験日の翌日から45日間不可/2026年度実施要項・確認日2026年8月9日(プロメトリック(主催=一般社団法人全国農業会議所))
- 農業技能測定試験2号=日本語のみ・開催国は日本のみ・50問程度・60分・出題は「耕種(畜産)農業全般の技能及び安全衛生管理等に関する学科及び実技問題」・受験資格〔満17歳以上/インドネシア・ミャンマー国籍は満18歳以上・国内は在留資格を有する者・日本国籍は受験不可・管理者2年以上または現場3年以上の実務経験〕・再受験45日・2026年度の試験実施期間2026年4月24日〜2027年3月10日/確認日2026年8月9日(プロメトリック(主催=一般社団法人全国農業会議所))
- 「1号農業技能測定試験」試験実施要領(2019年9月・2023年12月一部改訂)=(5)受験資格者「試験日において、満17歳以上であること。ただし、国内試験を受験する者にあっては、在留資格を有する者を対象とし、退去強制令書の円滑な執行に協力するとして法務大臣が告示で定める外国政府又は地域の権限ある機関の発行した旅券を所持していない者を除く。」/3 試験水準「日本国内での実務経験が3年以上の者であれば、7割程度が合格する水準」/確認日2026年8月9日(農林水産省経営局就農・女性課)
- 国別受験料金(日本=農業技能測定試験1号 JPY 8,000/同2号 JPY 15,000)/確認日2026年8月9日(プロメトリック)
- 農業特定技能協議会(加入申請フォーム・加入通知は申請日から概ね2週間程度・「入会費や年会費等、費用はかかりません」・登録支援機関は対象外)/加入者一覧表 その1(北海道・東北・関東)=2025年12月23日現在/その2(北陸・東海・近畿・中国四国・九州沖縄)=PDF本体は2025年12月25日現在(ページ表記は両方12月23日)・列は加入年月日/協議会構成員番号/都道府県名/種別/名称/確認日2026年8月9日(農林水産省)
- 特定技能外国人受入れに関する運用要領=健康保険・厚生年金保険の適用事業所ではない場合「特定技能所属機関(事業主本人)が、国民健康保険及び国民年金に加入し、所定の保険料を適切に納付していること」(確認書類=直近2年度分の個人事業主の国民健康保険料〔税〕納付証明書 ほか)/労災保険の暫定任意適用事業所の場合「労災保険の代替措置として、労災保険に類する民間保険に加入していること」(確認書類=民間保険の加入を証明する資料)/確認日2026年8月9日(出入国在留管理庁)
- 人材サービス総合サイト=厚生労働省が職業紹介事業者・労働者派遣事業者の情報を提供するサイト(事業者の検索が可能)/確認日2026年8月9日(厚生労働省職業安定局)
- 特定技能1号の受入れ見込数及び在留者数について(令和8年3月末時点・速報値)=農業39,950人・充足率54.5%(出入国在留管理庁)
- 適用事業所と被保険者(厚生年金保険)=「従業員が常時5人以上いる個人の事業所についても、農林漁業、サービス業などの場合を除いて厚生年金保険の適用事業所となります」/確認日2026年8月9日(日本年金機構)
- 資料5「暫定任意適用事業について」(2021年4月1日)=農業は「個人経営で常時5人未満の労働者を使用する事業(一定の危険・有害な作業を主として行う事業及び事業主が農業について特別加入している事業を除く)」が労災保険の暫定任意適用/確認日2026年8月9日(厚生労働省)
- 農業技能測定試験合格者向け求人情報提供サイト(日本国内で試験に合格した外国人材が対象・掲載は農業経営体と関係する登録支援機関/求職者から手数料を徴収することはできない〔原文の表記は「職業紹介法32条の3第2項」=職業安定法第32条の3第2項〕/本サイトを利用して職業紹介事業を行うことは禁止)/確認日2026年8月9日(一般社団法人全国農業会議所)
- 2号農業技能測定試験(受験資格=管理者としての2年以上または現場3年以上の実務経験/申込みに「実務経験に係る証明書」〔様式第1号・発行日から6か月以内〕と誓約書〔様式第2号〕/書類確認に7〜10日間程度/申込みは試験日の3営業日前〔土日祝は4営業日前〕まで)/確認日2026年8月9日(一般社団法人全国農業会議所)
- 【農業技能測定試験2号】2026年度以降の試験運用変更について(2026年3月30日)=「従来の定期開催方式から、通年で受験可能な方式へ変更します」・試験実施期間2026年4月24日〜2027年3月10日・予約受付2026年4月7日午前10時〜2027年3月5日(試験日の3営業日前まで)/確認日2026年8月9日(一般社団法人全国農業会議所)
- 2号農業技能測定試験の不合格者に係る在留期間の特例(合格基準点の8割以上の得点かつ相当の理由があると認められる場合は最長1年間、通算在留期間を超えて在留可能/実点数=2023年12月〜2024年2月は耕種62.4点以上・畜産44.8点以上、2024年5月〜2025年6月は耕種52.8点以上・畜産48点以上/2025年6月以前の受験は成績証明書が必要・内容の確認に7〜10日程度)/確認日2026年8月9日(一般社団法人全国農業会議所)
- 特定技能在留外国人数の公表等(公表は半年ごとに1回・国籍別/分野別/都道府県別の統計表の掲載元。本記事の農業分野の内訳〔2025年12月末〕はここの統計表をトモハタが集計)/確認日2026年8月9日(出入国在留管理庁)