外国人材の定着支援|特定技能で離職を防ぐ入社前〜1年の実務
目次
特定技能で採用した人に長く働いてもらえるかは、入社してからの工夫よりも、入社前から1年までの各時点で何をやったかで決まります。1号で在留できる期間は通算で原則5年です。[1]早く辞められるほど、紹介手数料や初期費用を回収できないまま、募集と手続きをやり直すことになります。土台になるのは、本人が十分に理解できる言語での相談対応と、3か月に1回以上の定期面談——どちらも特定技能1号の義務的支援です。[2]
この記事の要点
- 辞めた人の大半は帰国せず国内に残る — 出入国在留管理庁の公表資料では、自己都合で離職した人の進路は帰国31.4%に対し、それ以外が68.6%。囲い込みではなく、移る理由をつくらない設計が要ります。
- 効きやすいのは給与より先に生活まわり — 厚生労働省の委託事業の調査では、入社を決める際に重視された条件は給与65%と生活環境64%がほぼ並び、入国後の相談の39%は生活関係でした。
- 義務的支援は時期ごとに決まっている — 支援は採用後にまとめて行うものではなく、在留資格の申請前から始まります。内容が正しくても時期を外すと、支援計画を適正に実施したことになりません。
本記事は一般的な情報提供です。義務的支援の具体的な要件は、出入国在留管理庁の運用要領などで最新の内容を必ず確認してください。
なぜ定着支援が重要なのか
特定技能1号で在留できる期間は通算で原則5年しかなく、そのうえ本人は制度上ほかの会社へ移れるためです。[1]
出入国在留管理庁の運用要領は、特定技能外国人が転職により指定書に記載された受け入れ機関を変更する場合、または特定産業分野を変更する場合は、在留資格変更許可を受けなければならないとしています。手続きは必要ですが、移ること自体は制度が想定しているということです。定着支援は「囲い込み」ではなく、移る理由をつくらないための実務にあたります。
早期離職が起きると、企業側には次の3つの損失が生じます。
- 採用コストを回収できない — 人材紹介手数料や初期費用をかけて採用した人が早期に離職すると、その費用は回収できません。費用の内訳は特定技能の人材紹介手数料の相場で解説しています。
- 募集・手続きの手戻り — 離職のたびに、募集・選定・在留資格の手続きを最初からやり直すことになります。
- 受け入れの知見が現場に残らない — 定着が進めば受け入れのノウハウが現場にたまり、次の採用が楽になります。離職が続くと、これが積み上がりません。
退職を切り出されたときに効いてくる手続き
最初に決めるのは退職日です。転職には在留資格変更許可が必要で、許可の申請中は変更予定の就労先で働くことが認められていません。[1]退職日と次の入社日の間が空く前提で、引き継ぎを組むことになります。人員整理や倒産など会社都合で雇用契約を解除する場合は、次の受け入れ先の情報提供やハローワークの案内といった転職支援が義務的支援です(求職活動のための有給休暇の付与と、離職時の行政手続きの情報提供もあわせて必要になります)。[3]雇用契約が終了したときは、終了日から14日以内に地方出入国在留管理局へ届け出ます。[1]支援の中身は義務的支援10項目で解説しています。
定着を軽視した結果起きる失敗は、特定技能採用でよくある失敗と注意点でも整理しています。採用ルート(国内在住者からの転職採用か、海外からの新規入国か)によって生活基盤や日本語力の前提が変わる点は、特定技能は国内採用と海外採用どっち?をご覧ください。
本記事は特定技能1号を軸に整理しますが、受け入れ現場の準備や相談しやすい場づくりなど、在留資格を問わず使える工夫も多く含みます。技能実習(今後、育成就労制度へ移行)で受け入れている企業は、制度の違いを特定技能と技能実習の違い・育成就労制度とはで確認したうえで読み替えてください。
外国人材はどれくらい辞めているのか——公表データで見る現状
分野別まで公表されている数値は、自己都合による離職の届出が制度施行から2022年11月末までに延べ1万9,899人、同時点の在留者数に対する割合で16.1%(暫定値)です。出入国在留管理庁が有識者会議に提出した資料に載っています。[4]
⚠️ この16.1%の読み方には注意が要ります。制度施行からの累計の延べ人数を、ある一時点の在留者数で割った値で、同じ集団を一定期間追いかけた離職率ではありません。集計対象は自己都合を届出事由とするものに限られ、行方不明などは含みません。時点は2022年11月末で、これを更新した公表値は確認できていません。
| 分野 | 自己都合離職の届出(延べ人数・制度施行〜2022年11月) | 2022年11月末の在留者数に対する割合 |
|---|---|---|
| 宿泊 | 63人 | 32.8% |
| 農業 | 3,151人 | 20.1% |
| 外食業 | 911人 | 19.6% |
| 飲食料品製造業 | 7,846人 | 19.3% |
| 建設 | 1,458人 | 12.1% |
| 介護 | 1,600人 | 10.6% |
| 全分野 | 1万9,891人 | 16.1% |
分野別で最も高いのは宿泊の32.8%、最も低いのは航空の8.0%です(表は抜粋です。全分野の値は出典資料に掲載されています)。全分野の延べ人数が冒頭の1万9,899人と一致しないのは、集計の際に分野を特定できない人がいるためと注記されています。あわせて、行方不明を事由とする届出は別枠で、令和3年で76人(在留者数比0.14%)と公表されています。[4]
なお、外国人材の離職率として「全体19.2%」といった数値や、さらに高い割合が引用されることがありますが、有識者会議提出資料・特定技能制度運用状況の公表資料の範囲では確認できませんでした。出所や時点を確認できない数値は使わず、本記事は政府公表資料で確認できた値だけで整理しています。
辞めた人の68.6%は帰国していない
同じ資料には、自己都合で離職した人のその後も載っています。帰国が31.4%(6,061人)で最多ですが、特定技能での転職が30.3%(5,852人)、別の在留資格への変更が15.1%(2,915人)、いずれにも該当しない(求職活動中や在留資格変更許可の申請中などを含む)が23.2%(4,471人)と続き、帰国以外が68.6%を占めます(この集計の母数1万9,299人は、届出後に復職した人を除くなどの理由で先の延べ人数とは一致しません)。[4]辞める=帰国ではなく国内で次の勤め先を探す、という前提で定着支援を設計することになります。
参考までに、厚生労働省が2025年10月24日に公表した「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」では、就職後3年以内の離職率が高卒37.9%・大卒33.8%です。[5]ただしこれは同じ卒業年の集団を3年間追いかけた値で、特定技能の16.1%とは分母も期間も定義が違います。単純に並べて比べることはできません。
何が定着を左右するのか——モデル事業の調査から
厚生労働省の委託で行われた「地域外国人材受入れ・定着モデル事業」の報告書では、外国人材が入社を決めるにあたって重要視したこととして、給与65%とほぼ並んで生活環境が64%、次いで勤務条件49%、職場の場所48%、キャリア支援など成長支援の有無46%が挙がっています(外国人材アンケート・複数回答)。[6]
入国後に2か月に1回実施した定期面談で寄せられた相談の内訳も、同じ方向を向いています(相談533件)。生活関係が39%(住居・交通機関・気温・全体的な不便さ)で最も多く、就業関係31%(キャリアアップ・就労環境・シフトや休日・退職の相談)、人間関係12%(職場の上司や先輩・同居人)と続きます。[6]
読み取れるのは、住居と生活まわりが定着の主戦場だということです。給与を上げる前に、住居の質・通勤手段・買い物のしやすさを点検するほうが、同じ手間で効きやすいと考えられます。この内訳はそのまま定期面談の質問設計にも使えます——住居・通勤・買い物などの生活まわりから聞き始め、シフトや休日などの就業条件、職場の人間関係へ進む順にすると、相談の多い領域から順に拾えます。
時期の面では、同じ報告書で「職場で困っていることは特になし」という回答が入社1か月目の31%から5か月目には43%へ増えています。[6]困りごとは入社初期に集中するということです。後述の短い間隔の声かけを最初の1〜2か月に厚く置く根拠になります。
同じ報告書では、受け入れから6か月経過時点の企業(124社)のうち、教育担当者の配置は90%、定期面談の実施は74%が行っていた一方、調査項目「母国語での相談窓口の設置もしくは紹介」を行っていたのは12%にとどまりました(項目名は調査票のまま。制度上求められるのは母国語ではなく本人が理解できる言語です)。[6]教育担当者や面談に比べ、相談窓口の整備は後回しになりやすいことがうかがえます。
⚠️ この事業では6か月時点の定着率が99.2%と報告されていますが、5道県・入国390人・6か月時点という限られた条件下の結果で、業界一般の数値として扱えるものではありません。
定着の土台=義務的支援を確実に回す
義務的支援は「最低限やること」ではなく、離職の兆候を拾う仕組みそのものです。特定技能1号では、生活や仕事を支えるための支援が義務的支援として定められています。[2]出入国在留管理庁の運用要領は「義務的支援はその全てを行う必要があり、1号特定技能外国人支援計画には全ての義務的支援を記載しなければならない」「義務的支援の全てを行わなければ、支援計画を適正に実施していないことになる」と明記しています。[3]
とくに定着に直結するのは次の点です。
- 「母国語」ではなく「本人が十分に理解できる言語」 — 事前ガイダンス・生活オリエンテーション・相談や苦情への対応・定期面談は、外国人が十分に理解することができる言語で実施すると定められています。運用要領はこれを「特定技能外国人の母国語には限りませんが、当該外国人が内容を余すことなく理解できる言語をいいます」と説明しています。第二言語であっても、本人が内容を理解できるかどうかで判断します。
- 相談・苦情への対応は「頻度」ではなく「つながる体制」 — 運用要領の留意事項では、本人の勤務形態に合わせて1週間あたり勤務日に3日以上・休日に1日以上対応し、相談しやすい就業時間外(夜間)などにも対応できることが求められています。⚠️ この基準と定期面談の「3か月に1回以上」は別物です。3か月おきに面談さえすればよいと読むと、相談体制の要件を満たさないことになります。
- 定期面談は本人だけでなく上司にも行う — 3か月に1回以上、本人と、その監督をする立場にある者(直接の上司や雇用先の代表者等)のそれぞれと面談します。片方だけでは実施したことになりません。
- 日本人との交流促進も義務的支援 — 地域住民との交流の場に関する情報提供、自治会の案内、行事への参加手続きの補助は、あれば良い取り組みではなく義務的支援に位置づけられています。
- 待遇は日本人と同等以上 — 報酬の額は日本人が従事する場合と同等以上であることが基準省令で求められます。[1]住居についても、日本人労働者に社宅を提供しているのであれば同等に提供し、居室の広さも同等を確保する必要があります。[3]
義務的支援の全項目と実施のポイントは義務的支援10項目、支援体制が受け入れ要件に含まれることは特定技能で企業に求められる受け入れ要件で解説しています。
入社前から1年までに何をするか——時期別の実務
最初の支援は、入社後ではなく在留資格の申請前に来ます。時期を外すと、内容が正しくても支援計画の適正な実施とは認められません。
| 時期 | その時期に実施すること | 制度上の位置づけ(特定技能1号) |
|---|---|---|
| 選考〜内定 | 期待値のすり合わせ(手取り額と控除の内訳、宗教・食事への配慮、一時帰国の予定、職場見学や動画での作業内容の共有) | 企業の任意の取り組み。義務ではないが、入社後の「聞いていた話と違う」を減らす |
| 在留資格の申請前(雇用契約の締結時以前が望ましいとされる) | 事前ガイダンス(業務内容・報酬・入国手続き・費用負担の考え方などの説明) | 義務的支援。在留資格認定証明書の交付申請前(国内で在留資格を変更する場合は変更申請前)に、対面またはテレビ電話等で実施 |
| 入国直後/在留資格の変更許可の直後 | 生活オリエンテーション(生活一般・行政手続き・相談窓口・医療機関・防災防犯・法的保護の6分野) | 義務的支援。遅滞なく実施。理解には少なくとも8時間以上が必要とされ、技能実習からの移行などで生活環境に変化がない場合でも4時間に満たなければ適切に行ったとはいえないとされる |
| 入社直後〜1か月 | 住居の確保、銀行口座・携帯電話・電気ガス水道の契約補助、配属先の社員への受け入れ説明、初回面談の日程確保 | 住居確保と生活契約の補助は義務的支援。受け入れ側への説明は企業の任意の取り組み |
| 3か月ごと | 本人との面談、および本人を監督する立場にある人(直接の上司等)との面談 | 義務的支援。3か月に1回以上、双方に実施。実施できるのは支援責任者または支援担当者 |
| 随時(通年) | 相談・苦情への対応、地域行事の案内と参加の補助 | 義務的支援。相談対応は週の勤務日3日以上・休日1日以上、夜間にも対応できる体制が求められる |
| 1年ごと | 評価・昇給の見直しと次の目標の共有、オンライン面談を使っている場合の対面での面談、支援記録がそろっているかの自己点検 | 在留期間は3年を超えない範囲内で法務大臣が個々に指定するため、その更新前後は本人が今後を考える節目になる。オンライン面談の録画の保管は義務(雇用契約の終了日から1年以上)で、対面での実施自体は義務ではなく望ましい運用 |
表の内容は、出入国在留管理庁の運用要領の各支援項目と留意事項に基づいています。[3][1]
支援が機能しているかは「記録」で点検できる
自社の支援が形だけになっていないかは、残っている記録を見ると分かります。運用要領は支援ごとに作成・保存する書類を定めており、たとえば相談・苦情への対応は相談記録書(参考様式第5-4号)、定期面談は本人用・監督者用の定期面談報告書(参考様式第5-5号・第5-6号)、生活オリエンテーションは本人の署名を得た確認書(参考様式第5-8号)が該当します。[3]
これらの記録は、毎年5月31日までに前年度分をまとめて地方出入国在留管理局へ提出する年1回の定期届出の下敷きにもなります。[1]届出前にまとめて整えるのではなく、四半期など短めの周期で「相談記録が1件も無い期間はないか」「面談報告書が本人分と監督者分の両方そろっているか」を自主点検しておくと、支援が回っているかどうかを早めに判定できます。記録が薄い期間は、相談しにくい状態が続いていた可能性を疑う手がかりになります。支援ごとに残す書類の全項目と保存期間は義務的支援10項目の一覧を参照してください。
義務的支援に上乗せして企業ができること
義務的支援を満たしたうえで効いてくるのは、委託先では担えない領域です。
- 定期面談の間隔を待たずに話せる場をつくる — 入社直後の不安は3か月おきの面談では拾えません。入社3日目・10日目・1か月目のように短い間隔で声をかけ、以後は定期面談に合流させる運用にすると、初期のすれ違いを早めに把握できます。直属の上司とは別の先輩を相談役に付け、月1回など間隔を決めて振り返る形にすると、上司には言いにくい話が出やすくなります(この相談役は、次節のとおり制度上の支援担当者とは別に考えます)。
- 伝える手段を言葉以外にも用意する — 写真つきの手順書、機器や場所を指し示す指差しカード、頻出のやり取りをまとめた定型フレーズ集など、口頭に頼らない道具を先に作っておきます。運用要領は、円滑にコミュニケーションが取れることを前提に翻訳機の活用も可能としつつ、込み入った相談・苦情対応では「通訳人の介在が不可欠」と考えられるとしています。[3]日常の指示はやさしい日本語と道具でまかない、待遇や体調の相談には通訳を確保する、という線引きが実務的です。
- 昇給と役割の到達条件を書面で示す — 「頑張れば上がる」ではなく、どの技能をどこまで身につけたら何円上がるのかを書面にし、本人が理解できる言語で渡します。特定技能2号へ移行できる分野では、その道筋もあわせて示すと働き続ける動機につながります。2号になると配偶者・子を呼べるようになるため、家庭を持つ人にはとくに強い動機になります(呼べる時期と要件は家族帯同の可否といつから呼べるか)。ただし介護には特定技能2号がありません。介護では、介護福祉士の資格取得と在留資格「介護」への移行が長期就労の道筋になります。[7]資格取得の支援の組み立て方は特定技能 介護の受け入れで解説しています。
- 日本語学習は「機会の提供」までが義務、費用の負担は任意 — 義務的支援として求められるのは、地域の日本語教室や認定日本語教育機関の入学案内、教材やオンライン講座の情報提供と、必要に応じた手続きの補助までです。入学金・月謝・教材費を企業が負担すること、日本語能力に関する試験の受験を支援すること、資格取得者に優遇措置を設けることは任意的支援として挙げられています。[3]差がつくのはこの任意の部分です。
なお、通訳の配置や社内標識の多言語化など就労環境の整備には、厚生労働省の人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)を使える場合があります。対象の取り組みと金額は外国人雇用の助成金・補助金で在留資格別に整理しています。
社内で抱え込まない——社外の相談先
在留手続き・労働条件・人権・法的トラブルなど、社内では扱いきれない相談もあります。出入国在留管理庁が東京都新宿区四谷に設けている外国人在留支援センター(FRESC/フレスク)には、東京出入国在留管理局の在留相談、東京労働局の特別相談・支援室、東京外国人雇用サービスセンター、東京法務局人権擁護部の人権相談、日本司法支援センター(法テラス)などが同じ場所に入っており、代表のナビダイヤルから窓口を選んでつながります。電話の受付は平日の午前9時から午後5時まで(土日祝日・年末年始は休み)で、対応できる言語は窓口ごとに異なります(東京法務局の外国語人権相談ダイヤルは11言語)。[8]
地域の相談先としては、自治体の一元的相談窓口があります。出入国在留管理庁の外国人受入環境整備交付金を活用して、令和6年度末時点で281の地方公共団体が運営しています(前年度末は261団体)。[9]生活面の相談先として、生活オリエンテーションの段階で本人に案内しておくと、困ってから探すのではなく、困る前に行き先が決まった状態になります。
企業側のルールの確認先としては、厚生労働省が在留資格を問わず事業主に適用される「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」を公表しています。特定技能の義務的支援とは別に、外国人を雇用するすべての事業主が対象です。[10]
誰が担うか——社内の担い手と登録支援機関の役割分担
社内の担い手は「現場の指導役」と「制度上の支援担当者」の2つに分かれ、同じ人が兼ねられないことがあります。
出入国在留管理庁の運用要領で定められている役職は、支援責任者と支援担当者の2つです。この2つには中立性の要件があり、外国人を監督する立場にない者、つまり本人に対する指揮命令権を持たない者でなければなりません。代表取締役や、本人が所属する部署を監督する長(本人の所属が製造課なら製造部長)は、組織図を作成した場合に縦のラインにある者として適格性がないとされています。[1]
一方、定期面談の相手方となる「監督する立場にある者」は、本人と同一の部署の職員であるなど指揮命令権を持つ人を指します。[3]つまり、現場で日々指示を出す指導役は、面談を実施する側ではなく面談を受ける側に立ちます。現場の指導役を決めることと、支援担当者を選任することは別の作業です。支援担当者は、外国人に活動をさせる事業所ごとに1名以上を選任する必要があり、支援責任者が兼ねることもできます。[1]
委託先との分担は、次のように整理できます。
| 担い手 | 主に担う支援 |
|---|---|
| 登録支援機関 | 事前ガイダンス・生活オリエンテーション・本人が十分に理解できる言語での相談対応・定期面談・各種手続きの同行 |
| 企業(自社) | 現場の受け入れ体制づくり・仕事の指導・評価とキャリア・職場の人間関係 |
委託費は月額で設定されるのが一般的で、1人あたり月15,000〜30,000円程度が一つの目安です(公的統計に基づく確定値ではありません)。料金の内訳や変動要因は登録支援機関の費用相場で解説しています。
⚠️ 委託しても切り離せない部分があります。定期面談を実施できるのは支援責任者か支援担当者に限られ、支援計画の全部を登録支援機関に委託する場合を除いて、第三者への委託は認められていません(通訳人や専門家を履行補助として同席させることは可能です)。[3]一部だけを委託する場合は、面談を誰が行うのかを契約前に確認してください。
自社で支援するか委託するかの判断は自社支援か委託か、委託先の選び方は登録支援機関の選び方、契約前の確認は契約前チェックリストを参考にしてください。
受け入れる側の職員をどう準備するか
準備が要るのは本人ではなく、受け入れる側の職員です。業種を問わず、次の4点を入社前に決めておくと初月の負荷が下がります。
- 日々の指導役を1人決め、役割を業務として位置づける — 誰が指導するか決まっていないと、質問の宛先が定まらず、結果的に誰も見ていない状態になります。手当や勤務時間の扱いを含めて業務として設計します。
- 配属先の職員への説明会を開く — 在留資格でできる業務の範囲、日本語のレベル、生活面で企業が支援している内容を共有します。「日本語が話せないから仕事もできない」といった無意識の思い込みに気づく時間を短く取り、逆に本人から出身国の生活や食文化を紹介してもらう場を設けると、相互の距離が縮まります。
- 緊急時に使う言い回しをそろえる — 事故や体調の急変時に使う言葉を短い定型文にして掲示します。生活オリエンテーションでも、防災防犯と急病その他の緊急時の対応は情報提供が義務づけられている項目です。[3]
- 食事・礼拝など生活面の配慮を先に決めておく — 運用要領は、生活オリエンテーションで医療機関の利用方法を説明する際、アレルギーや宗教上の理由で治療に制限がある場合は医療機関にその旨を説明するよう伝えることを求めています。[3]受け入れ側で先に確認しておくと、入社後に個別対応で慌てずに済みます。
介護の現場では、これに固有の論点が加わります。任せられるのは身体介護等とそれに付随する支援業務で、関連業務だけを任せることはできません。利用者の居宅でサービスを提供する訪問系サービスに従事させる場合は、事業者側の遵守事項が別に定められており、1人で適切に行えると認められるまでサービス提供責任者等が同行するOJT、ハラスメントの相談窓口の設置と対応ルールの周知、緊急時の連絡先や対応フローをまとめたマニュアルの作成、キャリアアップ計画の作成などが含まれます(本人側にも介護等の実務経験原則1年以上などの要件があります)。[7]施設内のみで従事させる場合とは準備の中身が変わるため、業務範囲と訪問系の扱いは特定技能 介護の受け入れで確認してください。
介護でつまずきやすいところ
介護でつまずきやすいのは、定着の工夫より前にある要件の証明です。要件を満たさないまま進めると、在留資格の申請段階で止まるか、待遇への不満として後から出てきます。以下の4点のうち協議会は介護固有で、報酬・支援計画・住居は全分野に共通する要件です——技能実習からの移行者の報酬設定や住居の引き継ぎが絡みやすい介護を例に、証明の実務でつまずく点を整理します。
- 報酬が日本人と同等以上であることを説明できない — 報酬の額は日本人が従事する場合と同等以上であることが求められ、確認対象の書類として報酬に関する説明書(参考様式第1-4号)と雇用条件書の写し(参考様式第1-6号)が挙げられています。同程度の技能を持つ日本人がいない場合は、賃金規程に照らすか、職務内容と責任の程度が最も近い日本人と比べてどう異なるかを説明することになります。⚠️ 技能実習2号を修了した人は、おおむね3年程度の経験者として扱う必要があります(3号修了者はおおむね5年程度)。技能実習2号修了時の報酬額を上回るだけでなく、実際に3年程度の経験を積んだ日本人技能者への報酬額とも比較して設定します。[1]
- 支援計画に義務的支援を書き切れていない — 支援計画には全ての義務的支援を記載しなければならず、全てを行わなければ適正に実施していないことになります。計画は日本語のほか本人が理解できる言語でも作成し、写しを交付して内容を説明し、理解したことについて署名を得る必要があります。[3]
- 住居の手配が入国直前になる — 本人が住居を確保していない場合、①仲介や物件情報の提供と同行(連帯保証人として適当な人がいないときは、自社が連帯保証人になるか、家賃債務保証業者を確保したうえで自社が緊急連絡先になる)②自社が借り上げて提供 ③自社所有の社宅を提供、のいずれかで支援します。居室は1人あたり7.5㎡以上が求められ、ルームシェアの場合は居室全体の面積を人数で割った値で判定します。社宅等の提供で経済的利益を得ることはできません。[3]
- 協議会への加入が後回しになる — 介護分野では、在留諸申請の前に協議会へ加入している必要があります。令和6年6月15日以降は、初めて受け入れる場合であっても構成員であることの証明書の提出が必要です。[7]加入から証明書発行までの期間の実務は特定技能 介護の受け入れで解説しています。
在留資格の申請書類の作成や申請の取次ぎは行政書士などの専門家の領域です。参考様式の作成で判断に迷う場合は、専門家と連携して進めてください。受け入れ要件の全体像は特定技能で企業に求められる受け入れ要件、介護固有の要件は特定技能 介護の条件で整理しています。
まとめ
外国人材の定着支援は、義務的支援を時期どおりに実施することが土台になります。そのうえで、短い間隔の声かけ、昇給と役割の到達条件の明示、受け入れる側の職員の準備を企業が上乗せしていきます。
公表データが示しているのは、辞めた人の多くが帰国せず国内で次の勤め先を探すこと、そして入社の決め手でも入国後の相談でも生活まわりの比重が大きいことです。給与を動かす前に住居と生活の点検から入るほうが、同じ手間で効きやすいと考えられます。支援の実施状況は相談記録や面談報告書で点検し、面談を誰が行うのかを含めて登録支援機関と役割を分担しておくと、離職の兆候を早い段階でつかみやすくなります。
採用の全体像は特定技能採用の完全ガイド、登録支援機関の役割は登録支援機関とは、支援の中身は義務的支援10項目をご覧ください。
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よくあるご質問
- 外国人材の定着支援とは、具体的に何をすることですか?
- 採用した人が安定して働き、生活できるように行う支援です。特定技能1号では、事前ガイダンス・生活オリエンテーション・相談や苦情への対応・3か月に1回以上の定期面談などが義務的支援として定められており、これを実際に機能させることが土台になります。そのうえで、現場の受け入れ準備、評価とキャリアの見通し、日常的に相談しやすい場づくりを企業が上乗せしていきます。
- 支援は本人の母国語で行う必要がありますか?
- 母国語である必要はありません。出入国在留管理庁の運用要領は、事前ガイダンス・生活オリエンテーション・相談や苦情への対応・定期面談を「外国人が十分に理解することができる言語」で行うと定めたうえで、これは母国語には限らず、本人が内容を余すことなく理解できる言語をいうと明記しています。第二言語でも本人が十分に理解できれば要件を満たしますが、込み入った相談では通訳人の介在が必要と考えられるとされています。
- 特定技能で採用した外国人は、辞めたあとどうなりますか?
- 多くは国内に残ります。出入国在留管理庁が有識者会議に提出した資料によると、自己都合で離職した人のその後は、帰国31.4%、特定技能での転職30.3%、別の在留資格への変更15.1%、いずれにも該当しない(求職活動中などを含む)23.2%で、帰国以外が68.6%を占めます(制度施行から2022年11月末までの届出をもとにした暫定値)。辞める=帰国ではなく国内で次の勤め先を探す、という前提で定着支援を設計することになります。
- 定着支援は登録支援機関に任せきりでよいですか?
- 義務的支援は登録支援機関に委託できますが、職場での人間関係や仕事の進め方、評価とキャリアは企業側でしか対応できません。また定期面談は支援責任者または支援担当者が実施する必要があり、支援計画の全部を登録支援機関に委託する場合を除いて第三者への委託は認められていません。一部だけを委託する場合は、面談を誰が行うのかを契約前に確認してください。
出典・参考(一次情報)
- 特定技能外国人受入れに関する運用要領(令和8年4月)(出入国在留管理庁)
- 1号特定技能外国人支援・登録支援機関について(出入国在留管理庁)
- 1号特定技能外国人支援に関する運用要領——1号特定技能外国人支援計画の基準について(令和7年4月1日一部改正)(出入国在留管理庁)
- 特定技能制度の現状について(技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議 第8回・参考資料4)(出入国在留管理庁)
- 新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します(令和7年10月24日)(厚生労働省)
- 地域外国人材受入れ・定着モデル事業実施報告書(令和5年3月)(厚生労働省(委託先=パーソルキャリア株式会社))
- 特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領——介護分野の基準について(令和7年4月21日一部改正)(法務省・厚生労働省)
- 外国人在留支援センター(FRESC/フレスク)の問合せ先(出入国在留管理庁)
- 令和6年度外国人受入環境整備交付金を活用した地方公共団体における一元的相談窓口の現況について(令和7年8月)(出入国在留管理庁)
- 外国人の雇用(雇用する上でのルール・外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針)(厚生労働省)