特定技能雇用契約書・雇用条件書|基準と欄ごとの記載事項
目次
特定技能の雇用契約で企業が用意する書面は2枚(特定技能雇用契約書=参考様式第1-5号と雇用条件書=参考様式第1-6号)、満たすべき基準は特定技能基準省令第1条、書き込む欄は雇用条件書のⅠ〜Ⅸです。この3つの関係が見えていないと、「基準は満たしているのに欄の書き方で戻される」「欄は埋めたが契約の中身が基準に届いていない」という取り違えが起きます。基準と欄の対応、欄ごとの記載事項、契約を変えたときの届出までを、様式の実物に沿って整理します。
この記事の要点
- 書面は2枚だが、契約としては一体 — 参考様式第1-5号の本文は「別添の雇用条件書に記載された内容に従い、特定技能雇用契約を締結する」と書かれています。労働条件の実体は雇用条件書(第1-6号)側にあります。
- 基準は特定技能基準省令第1条=第1項に7号・第2項に3号 — 「4つ」と数えられることが多いのは、このうち雇用条件書の記載で毎回問題になるものです。報酬の口座振込は雇用契約ではなく受入れ機関自体の基準に置かれています。
- 契約を変えたら14日以内に届出 — ただし何を変えても要るわけではありません。出入国在留管理庁の運用要領は「どの欄のどの変更で届出が要るか」を欄ごとに例示しており、休暇を増やす・賞与の支給時期だけを変えるといった変更は不要側に置かれています。
本記事は一般的な情報提供です。雇用契約の基準や参考様式は改正されることがあるため、最新の内容と様式は出入国在留管理庁の特定技能の申請ページで必ず確認してください。雇用契約書・雇用条件書の作成は社会保険労務士など労働関係の専門家、在留資格の申請書類の作成・申請取次は行政書士(や弁護士)の領域にあたる部分があります。本記事は記載事項の情報提供であり、書面の作成代行や様式の配布を行うものではありません。
「特定技能雇用契約書」と「雇用条件書」の違い
特定技能雇用契約書(参考様式第1-5号)は契約の成立と特定技能ならではの取り決めを定める1枚で、労働条件の中身は雇用条件書(参考様式第1-6号)が持ちます。
| 書面 | 参考様式 | その書面が持つもの |
|---|---|---|
| 特定技能雇用契約書 | 参考様式第1-5号 | 契約の成立、雇用を開始する時期、契約の終了、在留資格の審査結果の共有、2部作成 |
| 雇用条件書 | 参考様式第1-6号 | 労働条件そのもの(Ⅰ雇用契約期間〜Ⅸその他の9欄) |
| 賃金の支払(雇用条件書の別紙) | 参考様式第1-6号 別紙1 | 基本賃金から控除を引いた手取り支給額までの内訳 |
この2枚は、別々の契約ではありません。参考様式第1-5号は「特定技能所属機関(以下「甲」という。)と特定技能外国人(候補者を含む。)(以下「乙」という。)は、別添の雇用条件書に記載された内容に従い、特定技能雇用契約を締結する。」という一文で始まります。[1]契約書側は労働条件を持たず、条件書を参照して成り立つ構造で、「契約書に書いてあれば条件書は簡略でよい」という関係にはなりません。在留資格の申請では、いずれも提出書類として両方を用います。[2]申請で用意する書類の全体像は特定技能の在留資格・申請に必要な書類一覧で整理しています。
特定技能雇用契約書(第1-5号)で定める事項
参考様式第1-5号の本体には、労働条件とは別に、在留資格と結びついた次の取り決めが置かれています。
- 雇用を開始する時期 — 本人が「特定技能1号」「特定技能2号」の上陸許可または在留資格変更許可等を受けた日から1か月以内の、双方の合意で定めた日から雇用を開始する、と定めます。契約を結んだ日がそのまま就労開始日になるわけではなく、在留資格の許可を挟みます。
- 契約期間は開始日に連動して動く — 「雇用条件書に記載の雇用契約期間(雇用契約の始期と終期)は、甲乙双方の調整により定めた雇用を開始する日に伴って変更されるものとする」と定められています。許可が想定より遅れても、この条項があるため契約期間の側が追随します。
- 在留資格の審査結果を互いに共有する — 「甲乙双方は、乙の在留資格に係る審査結果を互いに情報共有することとする」という条項が置かれています。企業側が結果を把握したまま本人に伝えない、という運用は様式の前提と合いません。
- 契約の終了 — 更新せずに契約期間を満了した場合、および本人が何らかの事由で在留資格を喪失した時点で契約は終了する、と定めます。様式が定めているのは契約が終了する時点であって、実際に雇用を終了するときの手続は労働基準法の定めによります(様式のⅧ欄にも解雇予告の定型文が印字されています)。
- 2部作成と保管 — 「本雇用契約書及び雇用条件書は2部作成し、甲乙それぞれが保有するものとする」と定められています。あわせて企業(特定技能所属機関)は、活動状況に係る文書を契約の終了日から1年以上、事業所に備え置くこととされています。[3]
契約期間・報酬・就業の場所の3つは、複数の書面に同じ趣旨の記載が現れます。契約期間は契約書と条件書Ⅰ欄、報酬は条件書Ⅶ欄・別紙「賃金の支払」・参考様式第1-4号(報酬に関する説明書)、就業の場所は条件書Ⅱ欄と(派遣なら)参考様式第1-13号です。片方だけ直して食い違いが残りやすいところで、ずれたまま提出した場合の扱いは公表資料に明示がないため帰結は断定できません。提出前に突き合わせておくほうが安全側です。
雇用契約の基準は、雇用条件書のどの欄で確認されるか
省令が定める雇用契約の基準は、雇用条件書のⅢ欄(従事すべき業務)・Ⅳ欄(労働時間)・Ⅵ欄(休暇)・Ⅶ欄(賃金)・Ⅸ欄(帰国旅費と健康診断)で確認されます。Ⅱ欄(就業の場所)は派遣で雇う場合だけ省令の基準(第1項第六号)に関わり、それ以外はⅠ欄・Ⅴ欄・Ⅷ欄とあわせて、主に労働基準法の明示義務に対応する欄です。
| 雇用条件書の欄 | その欄の記載で確かめられること | 根拠 | 不備が起きたときの直し方 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ 雇用契約期間 | 契約期間・更新の有無と判断基準・更新上限・無期転換の明示 | 労働基準法第15条/労働基準法施行規則第5条 | 記載を補う・書き直す |
| Ⅱ 就業の場所 | 直接雇用か派遣かの別、就業場所、変更の範囲 | 特定技能基準省令第1条第1項第六号(派遣の場合)/労働基準法施行規則第5条第1項第1号の3 | 派遣が認められない分野で派遣を選んでいる場合は契約の内容そのものを変える |
| Ⅲ 従事すべき業務の内容 | 分野・業務区分が、その分野の技能を要する業務にあたるか | 同省令第1条第1項第一号 | 契約の内容そのものを変える(分野の変更は在留資格変更許可申請) |
| Ⅳ 労働時間等 | 所定労働時間・所定労働日数がフルタイムに達しているか | 同省令第1条第1項第二号 | 契約の内容そのものを変える |
| Ⅴ 休日 | 年間合計休日日数、法定休日の確保 | 労働基準法第35条 | 記載を補う(下限を割っている場合は労働条件の見直し) |
| Ⅵ 休暇 | 年次有給休暇と、一時帰国を希望した場合の休暇の取り決め | 同省令第1条第1項第五号 | 契約の内容そのものを変える |
| Ⅶ 賃金 | 報酬額が日本人と同等以上か | 同省令第1条第1項第三号 | 契約の内容そのものを変える |
| Ⅶ 賃金(支払方法) | 支払方法の欄に印を付けただけでは足りず、実際の支払と記録が問われる | 同省令第2条第1項第12号(受入れ機関自体の基準) | 給与支払の実務側を変える(本節末の「報酬の口座振込は、雇用契約ではなく企業自身の基準」を参照) |
| Ⅷ 退職に関する事項 | 自己都合退職の手続、解雇の事由と手続 | 労働基準法第15条・第20条 | 記載を補う・書き直す |
| Ⅸ その他 | 社会保険・労働保険の適用状況、健康診断、相談窓口、帰国旅費の負担 | 同省令第1条第2項第一号・第二号 | 契約の内容そのものを変える(帰国旅費の負担条項が無い場合など) |
右端の列が分けているのは、書き方を直せば済む欄と、契約の中身を変えないと基準に届かない欄です。後者は本人との合意と社内の賃金・労務の設計変更が要るため、着手が遅れるほど受け入れ全体が止まります。点検は右端が太字の欄から始めるのが実際的です。
基準そのものは特定技能基準省令第1条に置かれ、第1項に「雇用関係に関する事項」が7号、第2項に「外国人の適正な在留に資するために必要な事項」が3号あります。[3]このうち雇用条件書の記載で毎回問題になるのは4つです。報酬の同等以上(第1項第三号)、所定労働時間のフルタイム(同第二号)、一時帰国の有給休暇(同第五号)、帰国担保措置(第2項第一号)。
残りは、あてはまる企業だけが見ます。派遣(第六号)は農業・漁業の分野に限られ、分野特有の告示基準(第七号・第2項第三号)は分野によって内容が異なります。分野によっては賃金欄の書き方にも上乗せの条件が付くため、自社の分野の運用要領別冊(分野別)とあわせて確認します。分野ごとの上乗せの中身は業種別の記事が持っています(例=特定技能で建設業の外国人を採用する)。
残る第1項第一号(業務の技能水準)と第2項第二号(健康・生活の状況の把握)は、上の表のⅢ欄とⅨ欄で扱います。差別的取扱いの禁止(第1項第四号)だけは、対応する欄が1つに定まりません。条文が禁じているのは報酬の決定に限らず、教育訓練の実施や福利厚生施設の利用その他の待遇に及ぶためで、金額欄を見るだけでは確かめきれません。
報酬の口座振込は、雇用契約ではなく企業自身の基準
報酬を本人名義の口座に振り込むことは、雇用契約の基準(省令第1条)ではなく、受入れ機関自体の基準である特定技能基準省令第2条第1項第12号に置かれています。条文は「特定技能雇用契約に基づく外国人の報酬を、当該外国人の指定する銀行その他の金融機関に対する当該外国人の預金口座若しくは貯金口座への振込み又は当該外国人に現実に支払われた額を確認することができる方法によって支払われることとしており、かつ、当該預金口座又は貯金口座への振込み以外の方法によって報酬の支払をした場合には、…その支払の事実を裏付ける客観的な資料を提出し、出入国在留管理庁長官の確認を受けることとしていること。」と定めています。[3]
条文が求めているのは、口座振込か、現に支払われた額を確認できる方法か、のいずれかで支払うこととしていることです。振込は二択の一方であって、唯一の方法ではありません。そのうえで、口座振込以外の方法で支払った場合には、支払の事実を裏付ける客観的な資料を提出して確認を受けることとされています。雇用条件書Ⅶ欄6の「賃金支払方法」で「口座振込」に印を付けても、それは条項の宣言にすぎません。是正先は契約書面ではなく給与支払の実務側で、現金手渡しの慣行が残っている事業所では、書面ではなく支払フローと記録の残し方を変えることになります。
報酬の「同等以上」をどう説明するか(同程度の技能を持つ日本人が社内にいる場合・いない場合、賃金規程の有無による3つの分岐、技能実習2号修了者はおおむね3年・3号修了者はおおむね5年の経験者として扱う必要、参考様式第1-4号の書き方)と、企業自体に求められる基準の全体像は特定技能で企業に求められる受け入れ要件にまとめています。報酬を含む採用全体の費用感は特定技能の採用費用・相場をご覧ください。
雇用条件書はどの欄に何を書くか(参考様式第1-6号)
雇用条件書は、Ⅰ雇用契約期間・Ⅱ就業の場所・Ⅲ従事すべき業務の内容・Ⅳ労働時間等・Ⅴ休日・Ⅵ休暇・Ⅶ賃金・Ⅷ退職に関する事項・Ⅸその他の9つの欄で構成されています。各欄の意味とつまずきやすい点を順に見ます。
Ⅰ〜Ⅲ 契約期間・就業の場所・従事すべき業務
Ⅰ〜Ⅲは、2024年(令和6年)4月の労働条件明示ルール改正で追加された「変更の範囲」「更新上限」「無期転換」が、そのまま様式に反映されている3欄です。
Ⅰ 雇用契約期間には、雇用契約期間(始期と終期)と入国予定日のほか、「契約の更新の有無」を3つの選択肢(自動的に更新する/更新する場合があり得る/契約の更新はしない)から選びます。「更新する場合があり得る」なら、更新の判断基準(業務量、勤務成績・態度、会社の経営状況など)にも印を付けます。さらに更新上限の有無(更新◯回まで/通算契約期間◯年まで)の欄が続きます。[1]
契約期間の長さに特定技能固有の上限はなく、労働基準法第14条が有期労働契約を原則3年まで(高度専門的知識等を有する労働者と満60歳以上は5年)とする上限がそのまま及びます。[4]
この欄で迷いやすいのが、特定技能1号の通算在留5年との関係です。様式には、通算契約期間が5年を超える有期雇用契約を結ぶ場合の無期転換に関する記載欄も置かれています。ただし特定技能1号は在留が通算で最長5年とされているため、1号のまま在留を続ける限り、この欄が実際に使われる場面は限られます。更新上限の欄に何を書くかも、在留期間の指定と整合させて決めることになります。通算5年の数え方(転職しても通算される・技能実習の期間は含まれない など)は特定技能の在留期間と更新で解説しています。
Ⅱ 就業の場所の冒頭は □ 直接雇用(以下に記入) □ 派遣雇用(別紙「就業条件明示書」に記入) というチェック欄です。派遣雇用を選んだ場合、就業場所の詳細はこの欄ではなく参考様式第1-13号「就業条件明示書」に書きます。ただし出入国在留管理庁の運用要領は、派遣形態で雇用できる分野を分野別運用方針が「農業分野」「漁業分野」としていることから、それ以外の分野では派遣形態が認められない旨に留意するよう記しています(令和8年4月1日時点)。[5]農業・漁業以外でこのチェックを付ける場面は、現行の運用では想定されていません。
直接雇用の場合は事業所名・所在地・連絡先を書き、あわせて変更の範囲の欄を埋めます。変更の可能性がなければ「変更の可能性なし」にチェックし、あるなら変更先の事業所名・所在地・連絡先を書きます。入管庁の記載例は、大阪工場を雇入れ直後の就業場所、東京工場を変更の範囲とする例を示し、「就業場所が複数ある場合には、主要な就業場所を明記した上で、(必要に応じて、任意の様式で)全て記載してください。」と注記しています。[6]
Ⅲ 従事すべき業務の内容には、分野と業務区分を書きます。ここにも(変更の範囲)欄があります。同じ分野の中で業務区分を変えるのと、分野そのものを変えるのとでは手続きが違い、後者は在留資格変更許可申請になります。
Ⅳ〜Ⅵ 労働時間・休日・休暇
Ⅳ〜Ⅵは、フルタイムの基準と一時帰国の有給休暇という、雇用契約の基準に直結する2つが乗る欄です。
Ⅳ 労働時間等は、1始業・終業の時刻等(1日の所定労働時間数・変形労働時間制・交代制)、2休憩時間、3所定労働時間数(週・月・年)、4所定労働日数(週・月・年)、5所定時間外労働の有無、で構成されています。運用要領のフルタイム(週5日以上かつ年間217日以上、かつ週30時間以上)に照らすのは、3の①週と4の①週・③年です。1年単位の変形労働時間制を採用している場合は、本人が十分に理解できる言語を併記した年間カレンダーの写しと、労働基準監督署へ届け出た協定書の写しが確認対象の書類に加わります。[5]
Ⅴ 休日には、定例日(毎週◯曜日、日本の国民の祝日、その他)と非定例日を書き、年間合計休日日数を記入します。この年間合計の数字は、契約を変更したときの届出の要否の判断でもそのまま使われます。
Ⅳ欄とⅤ欄は、書き終えたあとに次の2つを検算しておくと、数字の食い違いを自分で見つけられます。合わない場合は、どこかの欄が古い前提のまま残っています。
- Ⅳの年間所定労働日数 + Ⅴの年間合計休日日数 = 365日(うるう年は366日)
- (始業から終業までの時間)− 休憩時間 = 1日の所定労働時間
Ⅵ 休暇は、様式の構造を見ておく価値がある欄です。3つの項目からなり、実物はこう書かれています。
- 年次有給休暇 — 6か月継続勤務した場合→◯日/継続勤務6か月未満の年次有給休暇(□有 □無)→◯か月経過で◯日
- その他の休暇 — 有給( )/無給( )
- 一時帰国休暇 — 「乙が一時帰国を希望した場合は、上記1及び2の範囲内で必要な休暇を取得させることとする。」
1の年次有給休暇の日数を決めるとき、労働基準法上の付与要件は勤続期間だけではありません。厚生労働省は「雇入れの日から起算して6カ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」としています。[7]
そして一時帰国休暇には独立の日数欄がありません。様式の上では、年次有給休暇と「その他の休暇」の枠の中から出す、という定型文が置かれているだけです。[1]
ここで運用要領が一歩踏み込みます。出入国在留管理庁は「既に労働基準法上の年次有給休暇を全て取得した特定技能外国人から、一時帰国を希望する申出があった場合にも、追加的な有給休暇の取得や無給休暇を取得することができるよう配慮することが望まれます。」と記しています。あわせて、業務上やむを得ない事情で取得を認めない場合は代替日を提案するなどの配慮をすること、一時帰国のための休暇取得を理由に就労上の不利益な扱いをしていると判明した場合は基準に不適合となることもあり得ること、本人の家族が「短期滞在」で来日した場合は滞在中の有給休暇取得に配慮しなければならないことも示されています。[5]
Ⅵ欄だけを見て「年休の範囲内で処理すればよい」と読むと、この配慮が抜け落ちます。2の「その他の休暇」に有給の枠を用意しておくかどうかが、様式の上で企業が選べる数少ない設計の余地です。
Ⅶ 賃金 — 手当を基本賃金に含めるか、諸手当に分けるか
Ⅶ欄は11項目あり、1基本賃金(月給/日給/時間給)、2諸手当、3割増賃金率、4締切日、5支払日、6支払方法(口座振込/通貨払)、7労使協定に基づく控除(無/有)、8昇給、9賞与、10退職金、11休業手当、が並びます。8から11は「有・無」のチェックだけでなく、有なら時期・金額等まで書く欄です。金額の内訳は別紙「賃金の支払」に書きます。
この欄で判断が要るのは、支給する金額をどこに置くかです。基本賃金を厚くするのか、諸手当に振り分けるのか。ここに出入国在留管理庁の運用要領の次の記述が効きます。
[5]「報酬」とは「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」をいい、一般的に通勤手当、扶養手当、住宅手当等の実費弁償の性格を有するもの(課税対象となるものは除く。)は含まれません。
これを欄の記載判断に翻訳すると、「報酬が日本人と同等以上か」を見るときに数えられるのは、実費弁償の性格を持つ手当を除いた部分ということです。基本賃金を抑えて通勤手当・住宅手当を積み増しても、比較で見られる額はその分だけ増えません。同じ支給総額でも、どの欄に置くかで判断に載る額が変わります。実費弁償ではない技能手当・職務手当のような手当は、名前ではなく実質で判断されます。分野固有の原資から出す手当をどう建てるかも、この欄の判断です(介護の処遇改善加算のように、原資が制度側にあり支給額が年度で動く手当は特定技能で介護の外国人を採用するを参照)。
引用文の括弧書き(課税対象となるものは除く。)が効く場面があります。 この括弧は、実費弁償的な手当であっても課税対象になるものは「報酬」から除かれない、と読めます。通勤手当はここに関わります。
国税庁によると、電車・バス通勤者の通勤手当は「最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額」が非課税で、「1か月当たり15万円を超える場合には、15万円が非課税となる限度額となります」。限度額を「超える部分の金額が給与として課税されます」とされ、その部分は支給した月の給与の額に上乗せして源泉徴収を行うこととされています(令和8年4月1日現在法令等)。[8]
この2つを並べると、通勤手当のうち非課税限度に収まる部分と、限度を超えて給与課税される部分とでは、括弧書きに照らしたときの扱いが分かれる、と読めます。遠距離通勤で通勤手当を大きく設計している場合、Ⅶ欄2の金額のどこまでが「報酬」から外れるのかは一義に決まりません。
運用要領に「非課税限度を超える通勤手当は報酬に含まれる」と明記されているわけではありません。上は括弧書きの読み方であって、確定した取扱いではありません。同じく、賞与を「報酬」に含めて数えるのか除くのかについても、運用要領に明示の記述が見当たりません。本記事は明示のない点を推測で補っていません。いずれも書面を作る前に、管轄の地方出入国在留管理局や社会保険労務士へ確認してください。なおマイカー・自転車通勤者の非課税限度額は国税庁の別のページ(No.2585)が扱っており、本記事では触れていません。
7の「労使協定に基づく賃金支払時の控除」を「有」にするのは、食費・居住費などを賃金から差し引く場合です。税・社会保険料などの法定控除以外を賃金から差し引くには、労働基準法第24条の賃金控除に関する労使協定が必要です。
Ⅷ・Ⅸ 退職・その他
Ⅷ欄には退職と解雇の手続を、Ⅸ欄には社会保険・労働保険の適用状況、健康診断、相談窓口、帰国旅費の負担を書きます。Ⅸ欄には省令第1条第2項の2つの基準(帰国担保措置・健康状況の把握)が乗っています。
Ⅷ 退職に関する事項は、1自己都合退職の手続(退職する◯日前に届け出ること)と、2解雇の事由及び手続です。参考様式には「解雇は、やむを得ない事由がある場合に限り少なくとも30日前に予告をするか、又は30日分以上の平均賃金を支払って解雇する」という定型文が印字されています。
Ⅸ その他は5項目です。1社会保険の加入状況・労働保険の適用状況、2雇入れ時の健康診断(実施年月)、3初回の定期健康診断(実施年月と「その後◯ごとに実施」)、4雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口(部署名・担当者職氏名・連絡先)、5帰国旅費の負担に関する条項と受取人の署名欄。
1の社会保険・労働保険は、受け入れ企業が労働・社会保険・租税に関する法令を遵守していること(特定技能基準省令第2条第1項第1号)の裏返しです。加入義務のある企業が未加入の場合は特定技能外国人を受け入れられません。健康保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険は日本人と同じ基準で外国人にも適用され、保険料の控除は別紙「賃金の支払」の4に金額で表れます。未加入や控除の不備は受け入れ要件(機関自体が適切であること)にも関わります。
5は省令第1条第2項第一号の帰国担保措置に対応します。ここで運用要領が明確に禁じている運用が1つあります。
[5]帰国旅費を確保しておくために、特定技能外国人の報酬から控除するなどして積み立てて特定所属機関が管理することは、金銭その他の財産の管理に当たり得るものであることから、認められません。
「将来の帰国費用に備えて毎月一定額を積み立てる」という一見まっとうな仕組みが、認められない側に入ります。運用要領は代わりに「経営上の都合等により帰国費用を負担することが困難となった場合に備えて第三者(登録支援機関や関連企業等)と協定を結ぶなどしておくことが望まれます」としています。
3の「その後◯ごとに実施」に何を書くかは、労働安全衛生規則が決めています。定期健康診断は1年以内ごとに1回(同規則第44条)、深夜業などの特定業務に常時従事する労働者は6月以内ごとに1回(同第45条)です。[9]ここに1年を超える期間を書くと、後述の14日以内の届出の対象になります。
2・3の健康診断は、省令第1条第2項第二号の「健康の状況その他の生活の状況を把握するために必要な措置」に対応します。運用要領はこの措置を、労働安全衛生法に定める雇入れ時の健康診断や雇用期間中の定期健康診断を適切に実施すること、健康状況を定期的に本人から聞き取ることなどと説明しています。生活の状況の把握については緊急連絡網の整備や定期的な面談を挙げ、1号特定技能外国人支援計画に基づく支援とあわせて実施しても差し支えないとしています。あわせて実施できる支援の中身は特定技能1号の義務的支援10項目で整理しています。
つまずきやすい欄について、その欄で何を決めることになるかを、決めた結果の書き方まで一例として示します。自社の書面へ写すための見本ではありません(数値・内容はすべて説明のための例で、実際は自社の実態に合わせて決めます)。
| 雇用条件書の欄 | その欄で決めること/決めた結果の書き方の例(説明用) |
|---|---|
| Ⅰ 雇用契約期間 | 2026年4月1日〜2027年3月31日/更新の有無=更新する場合があり得る(判断基準=勤務成績・態度)/更新上限=有(通算5年まで・在留期間の指定と整合させる) |
| Ⅱ 就業の場所 | 直接雇用/大阪工場(大阪府◯◯市◯◯町◯-◯)/(変更の範囲)変更の可能性なし |
| Ⅲ 従事すべき業務の内容 | 分野=外食業/業務区分=外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)/(変更の範囲)変更の可能性なし |
| Ⅳ 労働時間等 | 始業9:00・終業18:00(1日8時間)/休憩60分/所定労働時間 週40時間・年1,960時間/所定労働日数 週5日・年245日/所定時間外労働=有 |
| Ⅴ 休日 | 定例日=毎週土・日、日本の国民の祝日/年間合計休日日数 120日(245日+120日=365日) |
| Ⅵ 休暇 | 年次有給休暇=6か月継続勤務かつ全労働日の8割以上出勤で10日/6か月未満の年次有給休暇=無/その他の休暇=有給(夏季3日)・無給(慶弔)/一時帰国休暇=定型文のまま |
| Ⅶ 賃金 | 基本賃金 月給200,000円/諸手当=通勤手当5,000円・技能手当15,000円/割増賃金率 法定時間外25%(月60時間超は50%)・法定休日35%・深夜25%/締切 末日・支払 翌月25日・口座振込 |
| Ⅷ 退職に関する事項 | 自己都合退職は30日前までに所属長へ届け出る/解雇=定型文のまま |
| Ⅸ その他 | 厚生年金・健康保険・雇用保険・労災保険にチェック/雇入れ時の健康診断 2026年4月/初回の定期健康診断 2026年10月(その後1年ごとに実施)/相談窓口=総務部◯◯ |
公式の参考様式(第1-5号・第1-6号)と記載例は、出入国在留管理庁の様式ページから入手できます。様式は改正されることがあるため、作成のたびに同ページで最新版を確認してください。
別紙「賃金の支払」の見方
別紙「賃金の支払」(参考様式第1-6号 別紙1)は5項目からなり、基本賃金から控除を引いた手取り支給額までを1枚で示す様式です。
- 基本賃金 — 月給/日給/時間給。月給・日給なら1時間当たりの金額、日給・時間給なら1か月当たりの金額を併記する欄が付いています。
- 諸手当の額及び計算方法等(時間外労働の割増賃金は除く) — 手当名・金額・計算方法を最大4件、加えて固定残業代の欄。
- 1か月当たりの支払概算額(1+2)
- 賃金支払時に控除する項目 — 税金/社会保険料/雇用保険料/食費/居住費/その他(水道光熱費)と自由記入欄。
- 手取り支給額(3−4)
1の1時間当たりの金額は、月給の額面を時間あたりに直して見るための欄です。月給の額面だけで判断すると、所定労働時間が長い設計のときに時間単価が下振れします。
⚠️ この欄の数字と、最低賃金と比べるときの賃金は同じではありません。 最低賃金法第4条第3項と同法施行規則第1条は、最低賃金額と比べる賃金に算入しないものとして、臨時に支払われる賃金、1か月をこえる期間ごとに支払われる賃金、所定労働時間をこえる時間の労働に対する賃金、所定労働日以外の日の労働に対する賃金、深夜の割増部分、そして「当該最低賃金において算入しないことを定める賃金」を挙げています。裏返すと、毎月定額で支払う技能手当のような手当は、原則として比較に算入されます。どの手当が算入されないかは、適用される地域別最低賃金の定めで確認してください。[10]
固定残業代を置く場合は、別紙に専用の欄があります。入管庁の記載例は「固定残業代がある場合には、固定残業代を除いた賃金の額、固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法、固定残業代を超えた時間外労働については割増賃金を追加で支払う旨を明示する必要があります」と注記しています。この3点のどれかが欠けた書き方は、様式の想定とずれます。
4の控除は、母国語での認識のずれが最も起きやすい部分です。入管庁の記載例は控除を項目別に金額まで書く形を示し、税金・社会保険料・雇用保険料に加えて食費・居住費・水道光熱費・通信費を金額とともに並べています。どのような項目でどのくらいの額が控除されるのかを申請人に説明するための欄、という趣旨の注記も添えられています。[6]
数値のイメージをつかむための一例です(金額はすべて説明用で、実際は最低賃金・自社の実態・実費に合わせます)。前掲の記入イメージと同じ条件(年間所定労働時間1,960時間)で並べています。
| 賃金の内訳 | 金額の例 | 「同等以上」の比較に載るか |
|---|---|---|
| 基本賃金(月給) | 200,000円 | 載る |
| 技能手当 | +15,000円 | 載る(実費弁償ではない) |
| 通勤手当 | +5,000円 | 載らない(実費弁償・非課税限度内) |
| 1か月当たりの支払概算額(控除前) | 220,000円 | — |
| 控除:社会保険料・雇用保険料 | −26,000円 | — |
| 控除:税金 | −8,000円 | — |
| 控除:居住費(実費の範囲) | −13,000円 | — |
| 控除:食費・水道光熱費・通信費 | −14,000円 | — |
| 手取り支給額 | 159,000円 | — |
この例で別紙1の「1時間当たりの金額」を出すと、年間所定労働時間1,960時間 ÷ 12か月=月平均約163.3時間、基本賃金200,000円 ÷ 163.3時間=約1,224円です。⚠️ ただし上に書いたとおり、最低賃金と比べるときは技能手当のような毎月定額の手当も算入されるため、この例で通勤手当が算入されない定めの地域なら、比較額は基本賃金と技能手当の合計215,000円 ÷ 163.3時間=約1,316円になります。別紙1の欄に書く数字と、最低賃金の比較に使う数字を取り違えないようにします。
賃金・労働時間には、特定技能に限らず労働基準法の下限ルールが適用されます。
- 休憩 — 労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間。[11]
- 割増賃金 — 法定時間外は月60時間以下が25%以上、月60時間を超える部分が50%以上(中小企業も2023年4月1日から適用)。深夜は25%、法定休日労働は35%です。[12]
- 控除の限界 — 法定控除以外に食費・居住費などを賃金から差し引くには、労働基準法第24条の賃金控除に関する労使協定が必要です。居住費などを実費を超えて徴収することは問題になります。
賃金・労働時間の下限は労働基準法などで定められ、改正されることがあります。割増率や控除の取り扱いは、厚生労働省・労働基準監督署の最新の案内で確認してください。控除をめぐる認識のずれは入社後のトラブルに直結します。典型例と防ぎ方は特定技能採用でよくある失敗と注意点で整理しています。
外国人雇用に共通する労働条件明示のルール(労働基準法・2024年4月改正)
労働条件の明示義務は在留資格を問わず、外国人を雇うすべての企業にかかります(労働基準法第15条・労働基準法施行規則第5条)。雇用条件書のⅠ〜Ⅷ欄が今の形をしているのはこのためで、特定技能の基準は共通ルールの上に省令第1条を上乗せしたものです。最低賃金法などの労働関係法令も、国籍・在留資格を問わず適用されます。
厚生労働省によると、2024年(令和6年)4月1日から明示事項が追加されました。タイミングが事項ごとに異なる点が実務では効きます。[13]
| 追加された明示事項 | 対象 | 明示するタイミング |
|---|---|---|
| 就業場所・従事すべき業務の「変更の範囲」 | 働く方すべて(有期契約労働者を含む) | 労働契約の締結時、および有期労働契約の更新時 |
| 更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無とその内容 | 有期労働契約で働く方 | 有期労働契約の締結時および契約更新のタイミングごと |
| 無期転換を申し込むことができる旨と、無期転換後の労働条件 | 有期労働契約で働く方 | 「無期転換申込権」が発生する有期労働契約の契約更新のタイミングごと |
更新上限については、明示だけでなく事前の説明が求められる場合があります。厚生労働省のパンフレットは、あらかじめ(新設・短縮をする前のタイミングで)理由を説明することが必要になる場面として、ⅰ更新上限を新たに設けようとする場合、ⅱ更新上限を短縮しようとする場合、の2つを挙げています。ⅱの例として「通算契約期間の上限を5年から3年に短縮する、または更新回数の上限を3回から1回に短縮する」ことが示されています。[14]
明示の方法は書面の交付が原則です。ただし労働基準法施行規則第5条第4項により、労働者が希望した場合に限り、①ファクシミリを利用した送信の方法、②電子メール等の送信の方法(労働者がその記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る)でも明示できます(2019年4月から)。厚生労働省は、労働者が本当に電子メール等による明示を希望したか個別かつ明示的に確認すること、到達したか確認すること、出力して保存するよう伝えることを求めています。本人が希望していないのに電子メール等のみで明示することは違反にあたるとされています。[15]
本人が理解できる言語での交付(母国語・多言語対応)
雇用条件書は、本人が十分に理解できる言語を併記して交付します。出入国在留管理庁の運用要領は、所定労働時間・報酬・一時帰国休暇・帰国担保措置のいずれの基準の説明でも「雇用条件書(参考様式第1-6号)は、申請人が十分に理解できる言語により作成し、申請人が内容を十分に理解した上で署名していなければなりません」と繰り返し記しています。同庁は雇用条件書の10か国語の翻訳様式をウェブサイトに掲載しています。[5]
厚生労働省も、外国人労働者向けのモデル労働条件通知書を英語・ベトナム語・インドネシア語・ミャンマー語・ネパール語など13言語で公開しており、自社の書面を作るときの参考にできます(2026年8月5日時点)。[16]
残業・控除・住居費をめぐる認識のずれは、入社後のトラブルや早期離職の典型的な原因です。とくに別紙「賃金の支払」の4(控除する項目)と5(手取り支給額)は額面と手取りの差が本人の想定と離れやすく、母国語での明示がそのまま予防になります。
なお、雇用条件書・雇用契約書そのものの作成は社会保険労務士など労働関係の専門家、在留資格の申請書類の作成・申請取次は行政書士(や弁護士)などの専門家の領域です。いずれも登録支援機関の業務(1号特定技能外国人支援計画の策定・各種支援の実施)には含まれません。当サイトは書面の作成代行や様式の配布を行うものではなく、記載事項・実務の情報提供にとどまります。
契約を変更・更新するときの書面と届出
特定技能雇用契約を変更・終了・新たに締結したときは、受け入れ企業(特定技能所属機関)が出入国在留管理庁へ事由が生じた日から14日以内に届け出ます(入管法第19条の18第1項第1号、入管法施行規則第19条の17)。[17]
| 届出の事由 | 使う参考様式 | 記載する事項 |
|---|---|---|
| 特定技能雇用契約の変更をしたとき | 参考様式第3-1-1号(特定技能雇用契約の変更に係る届出書) | 変更した年月日、変更後の契約の内容 |
| 特定技能雇用契約が終了したとき | 参考様式第3-1-2号(特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書) | 終了した年月日、終了の事由 |
| 新たな特定技能雇用契約を締結したとき | 参考様式第3-1-2号 | 締結した年月日、契約の内容 |
3行目の「新たな契約の締結」について、運用要領は、本人が自己都合で退職して契約終了の届出をした後、転職先が見つからずに元の企業へ戻って再度契約を締結したような場合が該当するとしています。あわせて「異なる特定技能所属機関と新たに契約を締結する場合は、在留資格変更許可申請が必要となります」と付記しています。他社から迎え入れるときは届出ではなく申請です。
提出先は、出入国在留管理庁電子届出システム(事前に利用者情報登録が必要)か、当該機関の住所(雇用する特定技能外国人の指定書に記載の住所)を管轄する地方出入国在留管理局です。運用要領は持参・郵送も可能としたうえで、「その場合は、在留諸申請及び届出における提出書類の省略を認める機関ではなくなることに留意してください」としています。書面提出は、その後の申請のたびに書類をそろえ直す負担として跳ね返ります。[5]
雇用条件書のどの欄を変えると届出が要るか
運用要領は、変更届出の別表を雇用条件書(参考様式第1-6号)の項目に対応させて作っています。欄ごとに「届出が必要な変更」と「届出は不要と明記されている変更」を並べたのが次の表です。[5]
| 雇用条件書の欄 | 届出が必要と例示されている変更 | 届出は不要と明記されている変更 |
|---|---|---|
| Ⅰ 雇用契約期間 | 当初の契約より期間を短くする場合/「契約の更新の有無」を「契約の更新はしない」「更新する場合があり得る」から「自動的に更新する」に変更する場合以外の変更/「更新する場合があり得る」で更新の判断基準を変更する場合 | 雇用開始日が変更になっても雇用契約期間に変更が生じていない場合 |
| Ⅱ 就業の場所 | 就業場所(事業所)を変更する場合/労働者派遣で、申請時に提出した派遣計画書に記載していない派遣先・就労(作業)場所で就労する場合、新たな派遣先・就労場所を追加する場合/雇用形態を「派遣雇用」から「直接雇用」に変更した場合/「直接雇用」から「派遣雇用」に変更した場合(派遣開始の概ね3か月前にあらかじめ雇用契約を締結し届出) | 連絡先のみの変更 |
| Ⅲ 従事すべき業務の内容 | 同一分野内で従事する業務区分を変更する場合(分野そのものを変える場合は在留資格変更許可申請)/分野別運用方針に定める「特定技能外国人が従事する業務」に従事しないこととなった場合 | — |
| Ⅳ 労働時間等 | 1年単位の変形労働時間制を採用または廃止した場合/「所定労働時間数」または「所定労働日数」を変更する場合/所定労働がフルタイム(週5日以上かつ年間217日以上かつ週30時間以上)でなくなった場合 | 年間所定労働日数を当初の契約より少なくする場合/始業・終業時間が変更になっても所定労働時間等に変更が生じていない場合 |
| Ⅴ 休日 | 年間合計休日日数を当初の契約より少なくする場合 | 平年かうるう年かによる変更/暦上の日と曜日の対応関係が毎年変わることによる年末年始休暇日数の変更/法令による祝日の変更に伴う年間合計休日日数の減少 |
| Ⅵ 休暇 | 当初の契約より休暇日数を減らす場合/「継続勤務6か月未満の年次有給休暇」、または有給・無給にかかわらず「その他の休暇」のいずれかの休暇を廃止する場合 | 休暇日数を増やす場合 |
| Ⅶ 賃金 | 「基本賃金」を減額する場合/「基本賃金」の支給方法を変更する場合(月給制→日給制、時間給制→月給制等)/「諸手当」に記載の手当を廃止する場合/別紙の諸手当の額を減額する場合/所定時間外・休日・深夜労働の割増賃金率を減らす場合/固定残業代制度の導入または廃止/「賃金支払方法」を「口座振込」から「通貨払」に変更する場合/「労使協定に基づく賃金支払時の控除」を「無」→「有」または「有」→「無」に変更する場合/別紙の控除する項目を増やす場合/「昇給」「賞与」「退職金」を「有」から「無」に変更する場合/「昇給」を「有」から「無」にする場合/「賞与」「退職金」を減額する場合/「休業手当」を「有」から「無」に減らす場合および支給率を減らす場合 | 単に控除項目や控除額が減少した場合(ただし控除を廃止した結果、本人の実費負担が増加または新たに発生した場合は届出が必要)/賞与等の支給時期のみを変更する場合(ただし業績不振等で賞与の支給がなくなった場合に、当初の契約で支給額が定められていたときは届出が必要) |
| Ⅷ 退職に関する事項 | いずれの場合も届出が必要 | — |
| Ⅸ その他 | 健康保険・厚生年金保険の適用事業所となった場合/同適用事業所とならなくなった場合/労働保険の適用事業所となった場合/「初回の定期健康診断」の「その後◯ごとに実施」について1年を超える期間を指定した場合 | — |
Ⅳ欄について、運用要領の別表は「『所定労働時間数』又は『所定労働日数』を変更する場合は届出が必要」としたうえで、その直後の括弧書きで「年間所定労働日数を当初の契約より少なくする場合は届出不要」としています。原文の書き分けをそのまま示しました。自社の変更がどちらにあたるか判断が付かない場合は、届出前に管轄の地方出入国在留管理局へ確認してください。本記事では、この2つを統合した解釈を示すことはしていません。
運用要領の別表は限定列挙ではありません。原文は「別表の項番及び変更事項欄は、派遣先の変更・追加に関する項目を除き、雇用条件書(参考様式第1-6号)の項目に対応しています。また、別表に掲げる変更事項及び特記事項は、あくまでも具体例であり、届出の対象となる変更事項は別表に記載されているものに限られません。」と書いています。別表に無い変更だから届出は不要、とは読めません。なお運用要領には、「軽微な変更」にあたるものを一般的に定義する記述は見当たりませんでした。
届出に添える雇用条件書について、運用要領は「変更部分のみ記載してください」としています。あわせて、本人が十分に理解できる言語で記載され、内容を理解した上で署名がなされていることが必要で、この条件が満たされていれば雇用条件書に代わる任意の書式でも差し支えない、とされています。
この届出は受け入れ企業自身の義務です。入国後に必要になる届出の全体像(入管への定期・随時届出とハローワークへの届出)は特定技能の採用の流れで整理しています。
まとめ
書面は、契約の成立を定める特定技能雇用契約書(参考様式第1-5号)と、労働条件を持つ雇用条件書(参考様式第1-6号・別紙「賃金の支払」)の2枚で、契約書側が条件書を参照する一体の構造です。満たすべき基準は特定技能基準省令第1条にあり、雇用条件書の記載で毎回問われるのは、報酬の同等以上、所定労働時間のフルタイム、一時帰国の有給休暇、帰国担保措置の4つです。一時帰国休暇に独立の日数欄がないこと、実費弁償の性格を持つ手当が「報酬」から外れること、帰国旅費を報酬から控除して積み立てられないこと——様式と運用要領を突き合わせて初めて見える設計です。
受け入れ要件の全体像は特定技能で企業に求められる受け入れ要件、採用手続きの流れは特定技能の採用の流れ、制度の全体像は特定技能採用の完全ガイドをご覧ください。
「自社の賃金水準で受け入れ要件を満たせるか」「支援体制をどう組むか」「どの分野・どのルートで採用するか」といった段階でも、条件に合う登録支援機関・人材紹介会社を無料でご紹介します(提携先のサービスをご紹介しています)。書面の作成や、賃金水準が法令に適合しているかの最終的な判断は、社会保険労務士・行政書士などの専門家にご確認ください。
よくあるご質問
- 特定技能の雇用契約で企業が満たすべき基準は何ですか?
- 特定技能基準省令第1条が、第1項(雇用関係に関する事項)に7号、第2項(適正な在留に資するために必要な事項)に3号を定めています。第1項は①分野で定める技能を要する業務に従事させること②所定労働時間が通常の労働者と同等であること③報酬が日本人と同等以上であること④差別的取扱いをしていないこと⑤一時帰国を希望した場合に必要な有給休暇を取得させること⑥派遣の対象とする場合は派遣先と派遣期間が定められていること⑦分野特有の告示基準。第2項は①帰国旅費の担保②健康の状況その他の生活の状況の把握③分野特有の告示基準です。なお報酬の口座振込は雇用契約の基準ではなく、受入れ機関自体の基準(同省令第2条第1項第12号)に置かれています。
- 雇用契約書と雇用条件書は何が違いますか?
- 特定技能雇用契約書(参考様式第1-5号)は契約の成立と特定技能ならではの取り決めを定める書面、雇用条件書(参考様式第1-6号)は労働条件そのものを定める書面です。第1-5号の本文が「別添の雇用条件書に記載された内容に従い、特定技能雇用契約を締結する」と書いているとおり、2枚は一体で1つの契約を構成します。在留資格の申請では両方を用います。
- 雇用条件書には何を記載しますか?
- 参考様式第1-6号はⅠ雇用契約期間・Ⅱ就業の場所・Ⅲ従事すべき業務の内容・Ⅳ労働時間等・Ⅴ休日・Ⅵ休暇・Ⅶ賃金・Ⅷ退職に関する事項・Ⅸその他の9つの欄で構成されています。賃金の内訳(基本賃金・諸手当・控除・手取り額)は別紙「賃金の支払」に書きます。
- 特定技能の「フルタイム」の基準は具体的に何時間・何日ですか?
- 出入国在留管理庁の運用要領は、本制度の「フルタイム」を、原則として労働日数が週5日以上かつ年間217日以上であって、かつ週労働時間が30時間以上であることとしています。アルバイトやパートタイム労働者は「通常の労働者」に含まれません。雇用条件書Ⅳ欄の「所定労働時間数」「所定労働日数」で確認します。
- 外国人の雇用契約書・雇用条件書は英語など多言語で用意する必要がありますか?
- 出入国在留管理庁の運用要領は、雇用条件書を申請人が十分に理解できる言語により作成し、申請人が内容を十分に理解した上で署名していなければならないとしています。同庁は雇用条件書の10か国語の翻訳様式を公開しています。厚生労働省も外国人労働者向けのモデル労働条件通知書を、英語・ベトナム語・インドネシア語・ミャンマー語・ネパール語など13言語で公開しています(2026年8月5日時点)。なお書面の作成そのものは社会保険労務士など専門家の領域で、当サイトは作成代行や様式の配布は行いません。
- 2024年4月の労働条件明示ルール改正で何が変わりましたか?
- 厚生労働省によると、2024年(令和6年)4月1日から①就業場所・業務の「変更の範囲」②有期労働契約の更新上限の有無と内容③無期転換を申し込める旨と無期転換後の労働条件、の明示が追加されました。明示するタイミングは事項ごとに異なります。雇用条件書のⅠ欄・Ⅱ欄・Ⅲ欄がこれに対応しています。
- 特定技能外国人も社会保険に加入しますか?
- はい。受け入れ企業は労働・社会保険・租税に関する法令を遵守していることが求められ(特定技能基準省令第2条第1項第1号)、加入義務のある企業が未加入の場合は特定技能外国人を受け入れられません。加入状況は雇用条件書Ⅸ欄に記載します。運用要領の別表Ⅸ(その他)は、保険関係の変更として、健康保険・厚生年金保険の適用事業所となった場合、同適用事業所とならなくなった場合、労働保険の適用事業所となった場合を、14日以内の届出が必要な変更に挙げています。
出典・参考(一次情報)
- 特定技能 参考様式集(特定技能雇用契約書 第1-5号/雇用条件書 第1-6号・別紙「賃金の支払」/報酬に関する説明書 第1-4号/派遣計画書 第1-12号・就業条件明示書 第1-13号 ほか)(出入国在留管理庁)
- 特定技能 在留諸申請に係る提出書類・参考様式(雇用契約書・雇用条件書/雇用条件書 記載例)(出入国在留管理庁)
- 特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令(平成31年法務省令第5号・最終改正 令和7年6月1日法務省令第35号)(出入国在留管理庁)
- 労働基準法 第14条(有期労働契約の期間の上限は原則3年/高度専門的知識等を有する労働者・満60歳以上は5年)(e-Gov法令検索(デジタル庁))
- 特定技能外国人受入れに関する運用要領(令和8年4月版)(出入国在留管理庁)
- 雇用条件書の記載例(参考様式第1-6号・別紙「賃金の支払」)(出入国在留管理庁)
- 年次有給休暇(雇入れの日から6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に10労働日)(厚生労働省)
- No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当(非課税限度額は1か月当たり15万円・超える部分は給与として課税/令和8年4月1日現在法令等)(国税庁)
- 労働安全衛生規則 第43条・第44条・第45条(雇入時の健康診断/定期健康診断は1年以内ごとに1回/特定業務従事者は6月以内ごとに1回)(e-Gov法令検索(デジタル庁))
- 最低賃金法 第4条第3項/最低賃金法施行規則 第1条(最低賃金額と比べる賃金に算入しない賃金)(e-Gov法令検索(デジタル庁))
- 労働時間・休憩・休日関係(休憩時間は6時間超で45分以上・8時間超で1時間以上)(厚生労働省)
- 中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が50%になります(時間外60時間以下25%・60時間超50%・深夜25%・法定休日35%/2023年4月1日から)(厚生労働省)
- 2024年4月からの労働条件明示ルールの改正(厚生労働省)
- パンフレット「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?」(明示のタイミング・更新上限を新設/短縮する場合の事前説明)(厚生労働省)
- 「労働基準法施行規則」改正のお知らせ(労働条件の明示がFAX・メール・SNS等でもできるようになります/労働基準法施行規則第5条第4項)(厚生労働省)
- 外国人労働者向けモデル労働条件通知書(言語別ページ・リンク先は英語版)(厚生労働省) ※トモハタが2026年8月5日に実査=スペイン語・タガログ語・ポルトガル語・英語・中国語・韓国語・インドネシア語・ベトナム語・カンボジア語(クメール語)・モンゴル語・ミャンマー語・ネパール語・タイ語の13言語のページを確認
- 特定技能雇用契約に係る届出(出入国在留管理庁)