育成就労の対象分野|17分野の一覧・特定技能との違い(2027年開始)
目次
「技能実習に代わる育成就労が2027年に始まると聞いたが、自社の業種は対象になるのか」——受け入れ検討の出発点がここです。結論から言うと、育成就労の対象は2026年1月23日の閣議決定で定められた17分野で、これは特定技能の対象分野(制度上19分野)から航空・自動車運送業を除いたものです。施行日は2027年(令和9年)4月1日で、政令により確定しています。ただし、対象かどうかを実際に決めるのは分野名ではなく分野ごとの業務区分(17分野で計46区分)で、この区分は転職できる範囲まで画します。さらに、受け入れの細目を定める分野別運用要領の公開は2026年8月8日時点で17分野中7分野にとどまり、準備の進み方には分野差があります。自社が対象かを確かめる作業は、分野名を眺めるところではなく、業務区分の一覧と自社の業務を突き合わせるところから始まります。
この記事の要点
- 対象は17分野・業務区分は計46区分 — 2026年1月23日の分野別運用方針の閣議決定で定められました。可否を分けるのは分野名ではなく業務区分で、区分数は工業製品製造業の17区分から介護・宿泊などの1区分まで開きがあります。
- 施行日は2027年4月1日で確定 — 2025年10月1日公布の令和7年政令第340号が施行期日を「令和九年四月一日」と定めています。「施行予定」ではなく政令上の確定日です。
- 技能実習の3職種は育成就労の対象外 — クリーニング職種(一般家庭用クリーニング作業)・空港グランドハンドリング職種・ボイラーメンテナンス職種(ボイラーメンテナンス作業)。加えて、技能実習から育成就労への移行そのものができません。
- 分野ごとに準備の進み方が違う — 分野別運用要領が公開済みなのは2026年8月8日時点で7分野です。上乗せ基準の告示は17分野分が公表されていますが、適用は施行日の2027年4月1日からです。
本記事は2026年8月8日時点で出入国在留管理庁などが公表している情報をもとにした概要です。育成就労は2027年4月1日施行の制度で、施行日そのものは政令で確定していますが、分野・業務区分の追加、分野別運用要領や上乗せ基準の整備状況は今後も動きます。受け入れを具体的に検討する段階では、出入国在留管理庁の最新情報で必ず確認してください。
育成就労の対象分野は17分野
育成就労の対象分野(育成就労産業分野)は、2026年(令和8年)1月23日の分野別運用方針の閣議決定で17分野と定められました。出入国在留管理庁と厚生労働省が公表している分野別運用方針の主要な記載事項は、「特定産業分野は19分野、育成就労産業分野は17分野である(自動車運送業分野、航空分野は特定産業分野のみ。)」と記しています。[1]
17分野の顔ぶれは次のとおりです(分野は業種名そのものではなく、分野ごとに対象となる業務区分が定められています。グループ分けは読みやすさのための編集部の整理で、公式の区分ではありません)。
| グループ(編集部の整理) | 育成就労産業分野(17分野・2026年1月23日閣議決定) |
|---|---|
| 介護・サービス | 介護/ビルクリーニング/リネンサプライ/宿泊/外食業 |
| 製造 | 工業製品製造業/造船・舶用工業/飲食料品製造業 |
| 建設・整備 | 建設/自動車整備 |
| 運輸 | 鉄道/物流倉庫 |
| 一次産業 | 農業/漁業/林業/木材産業 |
| 資源循環 | 資源循環 |
この17分野という顔ぶれには選定の基準があります。2025年(令和7年)3月11日に閣議決定された基本方針は、育成就労による受け入れを「外国人にその分野に属する技能を本邦における3年間の就労を通じて修得させることが相当である分野に限って行う」としたうえで、「業務に従事するに当たり、我が国の法令に基づく免許又は資格の取得が前提となっている等、我が国における就労を通じた人材育成になじまない分野については、育成就労産業分野として選定することは相当ではない」としています。[2]後述する航空・自動車運送業の扱いは、この選定基準とあわせて読むと理解しやすくなります。
17分野はいつ・どう決まった?(施行は2027年4月1日で確定)
育成就労の17分野は、二段階の閣議決定を経て定まりました。制度全体の基本方針が2025年3月11日に閣議決定され、続いて2026年1月23日の分野別運用方針の閣議決定で、17分野・その業務区分・分野ごとの受入れ見込数が具体的に決まっています。
制度の施行日は2027年(令和9年)4月1日です。これは見込みではなく、2025年(令和7年)10月1日に公布された令和7年政令第340号が、改正法の施行期日を「令和九年四月一日とする。」と定めたことによります。[3][4]
改正法の公布から施行までの経過は、次のとおりです。
| 年月日 | 決まったこと・始まったこと |
|---|---|
| 2024年6月21日 | 改正法(入管法・技能実習法の一部を改正する法律)公布 |
| 2025年3月11日 | 基本方針を閣議決定 |
| 2025年9月30日 | 主務省令を公布 |
| 2025年10月1日 | 施行期日を定める政令(令和7年政令第340号)を公布=施行日が2027年4月1日に確定 |
| 2026年1月23日 | 分野別運用方針を閣議決定=17分野・業務区分・受入れ見込数を設定 |
| 2026年4月15日 | 監理支援機関の許可の施行日前申請の受付開始 |
| 2026年9月1日 | 育成就労計画の認定の施行日前申請の受付開始 |
| 2027年4月1日 | 改正法施行=育成就労制度の運用開始 |
上表の日付のうち、改正法の公布日と施行日前申請の受付開始日、主務省令・政令の公布日は、出入国在留管理庁・厚生労働省の「育成就労制度の概要」(令和8年7月改訂)の施行までのスケジュールによります。[4]
一方で、17分野が施行時にそのままとは限りません。出入国在留管理庁・厚生労働省の「育成就労制度の概要」(令和8年7月改訂)は、施行までのスケジュール図の注記で「育成就労産業分野・特定産業分野の設定(業務区分の追加等を含む)は、必要に応じて行う。」としています。同じ図は、2026年1月23日の閣議決定と施行の間に「必要に応じて分野別運用方針決定(閣議決定)」という枠を置いています。[4]いま対象外の業種でも将来的に分野・区分が追加される可能性は残っており、逆に言えば、2026年時点の17分野・46区分は施行時点の最終形として確定したものではありません。追加が決まる場合は分野別運用方針の閣議決定として公表されるため、対象外だった業種は出入国在留管理庁の新着情報で動きを追うのが確実です。[5]
自社の業種が対象かは「業務区分」で確認する
対象かどうかを分けるのは、分野名ではなく業務区分です。分野別運用方針の主要な記載事項は、業務区分を「特定産業分野又は育成就労産業分野内で、従事させる業務において要する相当程度の知識又は経験を必要とする技能の範囲を画するとともに、転職の範囲を画するものとして当該分野に係る分野別運用方針において規定されるもの」と定義しています。[1]
確認の最短ルートは2ステップです。
- 前の章の17分野の表で、自社の事業に近い分野があるかを探す
- 下の業務区分の一覧で、その分野の業務区分に自社が従事させたい業務が含まれるかを確かめる
つまずきやすいのは2ステップ目です。食品を扱う事業が外食業なのか飲食料品製造業なのか、木を扱う事業が林業なのか木材産業なのか、清掃業務がビルクリーニングなのかリネンサプライなのか——近い分野が複数ある業種では、分野名を眺めるだけでは決まりません。この切り分けの多くは、下の業務区分の一覧と、技能実習の職種から対応を引ける別紙7の対応表(後述)で決着できます。
育成就労17分野の業務区分は、次の計46区分です(所管省庁・区分数・区分名は分野別運用方針の主要な記載事項による。2026年1月23日閣議決定。合計46は同資料に記載された17分野の区分数を編集部で合算した値です)。[1]
| 分野 | 所管省庁 | 業務区分数 | 業務区分 |
|---|---|---|---|
| 介護 | 厚生労働省 | 1 | 介護 |
| ビルクリーニング | 厚生労働省 | 1 | ビルクリーニング |
| リネンサプライ | 厚生労働省 | 1 | リネンサプライ |
| 工業製品製造業 | 経済産業省 | 17 | 機械金属加工/電気電子機器組立て/金属表面処理/紙器・段ボール箱製造/コンクリート製品製造/RPF製造/陶磁器製品製造/印刷・製本/紡織製品製造/縫製/電線・ケーブル製造/プレハブ住宅製品製造/家具製造/定形・不定形耐火物製造/生コンクリート製造/ゴム製品製造/かばん製造 |
| 建設 | 国土交通省 | 3 | 土木/建築/ライフライン・設備 |
| 造船・舶用工業 | 国土交通省 | 3 | 造船/舶用機械/舶用電気電子機器 |
| 自動車整備 | 国土交通省 | 2 | 自動車整備/車体整備 |
| 宿泊 | 国土交通省 | 1 | 宿泊 |
| 鉄道 | 国土交通省 | 6 | 軌道整備/電気設備整備/車両整備/車両製造/運輸係員/駅・車両清掃 |
| 物流倉庫 | 国土交通省 | 1 | 物流倉庫 |
| 農業 | 農林水産省 | 2 | 耕種農業/畜産農業 |
| 漁業 | 農林水産省 | 2 | 漁業/養殖業 |
| 飲食料品製造業 | 農林水産省 | 2 | 飲食料品製造業/水産加工業 |
| 外食業 | 農林水産省 | 1 | 外食業 |
| 林業 | 農林水産省 | 1 | 林業 |
| 木材産業 | 農林水産省 | 1 | 木材産業 |
| 資源循環 | 環境省 | 1 | 廃棄物処分業(中間処理) |
| 合計(17分野) | — | 46 | — |
区分の粒度は分野で大きく違います。工業製品製造業は17区分、鉄道は6区分に分かれる一方、介護・宿泊・外食業・物流倉庫・資源循環などは1区分です。区分が細かい分野ほど、自社の作業がどの区分に当たるかを先に確定させておく意味が大きくなります。
この一覧が採用計画に効く理由は、区分数の細かさだけではありません。上の定義のとおり、業務区分は技能の範囲と同時に転職の範囲を画します。区分が違えば、本人意向による転籍で人材が移れる先の範囲も、自社が他社から受け入れられる範囲も変わります。あわせて、本人意向の転籍を制限できる期間(転籍制限期間)は1年とすることを目指しつつ、当分の間は分野ごとに1年から2年の範囲で設定されており、2年と設定されたのは介護・建設・造船・舶用工業・自動車整備・工業製品製造業・飲食料品製造業・外食業・資源循環の8分野です(ビルクリーニング・リネンサプライ・宿泊・農業・漁業・林業・木材産業・鉄道・物流倉庫の9分野は1年)。[1]転籍の類型・要件・企業が備えることは育成就労の転籍制度で解説しています。
業務区分の当てはめとあわせて、出入国在留管理庁の育成就労制度Q&Aが示す次の3点も採用計画の前提になります。[6]
- 「主たる技能」は、その修得に必要な必須業務に全体の就労時間の3分の1以上従事することなどで修得させるとされています(残りの時間は、同じ業務区分の範囲内で関連する業務に充てられます)。
- 分野をまたいだ就労はできません。「夏は農業、冬は漁業」のような働き方は認められていません。
- 労働者派遣の形態が認められるのは農業・漁業の2分野のみです(派遣元と派遣先が共同で育成就労計画を作成します)。この2分野では、業務の閑散期に最大6か月の一時帰国(時期は毎年同じ)を挟む育成就労計画も認められます(帰国期間は育成就労の期間に含まれません)。
技能実習で受け入れ中の企業はここに注意(育成就労の対象にならない3職種)
技能実習2号移行対象職種であっても、育成就労の対象にならない職種があります。出入国在留管理庁の育成就労制度Q&A(Q30)は、次の3職種を育成就労産業分野の対象外として挙げています。[6]
- クリーニング職種(一般家庭用クリーニング作業)
- 空港グランドハンドリング職種
- ボイラーメンテナンス職種(ボイラーメンテナンス作業)
同Q&Aは、これらが2026年1月23日に閣議決定された分野別運用方針において対象外とされたものであり、育成就労産業分野へ追加する必要性については引き続き分野所管行政機関が検討する、とも記載しています。現時点でこの3職種の技能実習生を受け入れている企業にとっては、同じ業務を育成就労で継続できないという前提になります。行き先は職種で分かれます。空港グランドハンドリングは、特定技能の航空分野に同名の業務区分があるため、特定技能(試験合格による新規採用のルート)での受け入れは引き続き検討できます(航空分野は育成就労の対象外です)。一方、一般家庭用クリーニングとボイラーメンテナンスは、特定技能の19分野・51業務区分の一覧にも直接対応する区分が見当たらず、受け入れの枠組み自体から検討し直すことになります。[1]
職種・作業の単位で対応を引ける一次資料もあります。育成就労制度運用要領の別紙7「技能実習2号移行対象職種と育成就労における分野(業務区分)との関係性について」は、技能実習の職種・作業ごとに対応する育成就労の分野・業務区分を一覧にした対応表です。[7]主な職種の対応を例示します。クリーニング職種のように同じ職種でも作業単位で対応の有無が分かれる点、また建設・機械金属加工系などでは1つの職種が複数の分野・業務区分に対応する職種が多い点に注意してください(例示は全90職種の一部です。対応の全体は別紙7が正です)。
| 技能実習の職種(作業) | 対応する育成就労の分野(業務区分) |
|---|---|
| 耕種農業(施設園芸・畑作野菜・果樹) | 農業(耕種農業全般) |
| 畜産農業(養豚・養鶏・酪農) | 農業(畜産農業全般) |
| 介護 | 介護 |
| ビルクリーニング | ビルクリーニング |
| 自動車整備 | 自動車整備(自動車整備・車体整備) |
| 宿泊(接客・衛生管理) | 宿泊 |
| 医療・福祉施設給食製造 | 外食業 |
| 木材加工(機械製材) | 木材産業 |
| 林業(育林・素材生産) | 林業 |
| 鉄道施設保守整備(軌道保守整備) | 鉄道(軌道整備) |
| 鉄道車両整備 | 鉄道(車両整備) |
| RPF製造 | 工業製品製造業(RPF製造) |
| クリーニング(リネンサプライ仕上げ) | リネンサプライ |
| クリーニング(一般家庭用クリーニング) | 対応する分野・業務区分なし |
| 空港グランドハンドリング/ボイラーメンテナンス(社内検定型) | 対応する分野・業務区分なし |
いま技能実習で受け入れている職種・作業が育成就労のどこに着地するかは、この別紙で個別に確認できます。
なお、自動車整備分野の「車体整備」と飲食料品製造業分野の「水産加工業」は、2026年1月の閣議決定で従前の業務区分(自動車整備・飲食料品製造業)から切り分けられた新しい区分です。2027年(令和9年)3月31日まで従前の業務区分で受け入れる経過措置が設けられていますが、期間が育成就労の開始前までのため、この措置で実際に受け入れるのは特定技能など現行制度の場面です。[4]一方、別紙7の対応表はこの経過措置を踏まえて、食品製造関係の職種に「経過措置につき両区分への移行可」と注記し、自動車整備職種の対応先として両区分(自動車整備・車体整備)を挙げています。[7]該当する職種の育成就労での対応先は、別紙7の当該職種の行で確認してください。
もう一点、制度をまたぐ移行についても誤解が生まれやすいところです。「育成就労制度の概要」(令和8年7月改訂)は、施行後も技能実習を続ける場合について、技能実習制度のルールが適用され「技能実習から育成就労に移行することはできません」と明記しています。[4]在留中の技能実習生がそのまま育成就労へ横滑りする仕組みではない、ということです。また、施行後も技能実習として継続できる範囲には期限があります。出入国在留管理庁の育成就労制度Q&Aによると、施行後も技能実習を継続できるのは、2027年(令和9年)4月1日時点で既に来日している技能実習生か、令和9年3月31日までに技能実習計画の認定申請がされ、原則として令和9年6月30日までに技能実習を開始する技能実習生に限られます。これに該当しない場合、技能実習生として再度入国することはできませんが、技能実習の内容によっては、育成就労計画の認定を受けて育成就労外国人として入国できる可能性があります。[6]また、技能実習3号への移行は、施行日時点で技能実習を行っている2号技能実習生のうち、2号技能実習を1年以上行っている者に限られます。[4]個々の人材の扱いは経過措置の条件で変わるため、対応関係を一律に読み替えないでください。技能実習と特定技能・育成就労の制度としての違いは特定技能と技能実習の違いで整理しています。
分野ごとの試験・業務区分・特有の手続きは特定技能と共通する部分が多いため、自社の分野に近い特定技能の業種別ガイドが、業務区分の中身をつかむ手がかりになります。
- 特定技能 介護の受け入れ|条件と進め方
- 建設で特定技能の外国人を採用するには
- 工業製品製造業の採用ガイド
- 飲食料品製造業で特定技能の外国人を採用するには
- 農業で特定技能の外国人を採用するには
- 特定技能「外食」とは
- 宿泊/ビルクリーニング/リネンサプライ
- 造船・舶用工業/自動車整備/鉄道/物流倉庫
- 漁業/林業/木材産業/資源循環
分野別の受入れ見込数(2027年4月〜2029年3月末)
分野別運用方針では、17分野それぞれに受入れ見込数(受け入れの上限として運用する人数)が設定されました。育成就労全体の受入れ見込数は、制度開始の2027年(令和9年)4月から2029年(令和11年)3月末までで42万6,200人です。建設・工業製品製造業・飲食料品製造業の3分野で見込数が大きく、この3分野だけで全体の約7割を占めます。
| 分野 | 受入れ見込数(2027年4月〜2029年3月末・人) |
|---|---|
| 建設 | 123,500 |
| 工業製品製造業 | 119,700 |
| 飲食料品製造業 | 61,400 |
| 介護 | 33,800 |
| 農業 | 26,300 |
| 造船・舶用工業 | 13,500 |
| 自動車整備 | 9,900 |
| ビルクリーニング | 7,300 |
| 物流倉庫 | 6,900 |
| 外食業 | 5,300 |
| 宿泊 | 5,200 |
| 資源循環 | 3,600 |
| リネンサプライ | 3,400 |
| 漁業 | 2,600 |
| 木材産業 | 2,200 |
| 鉄道 | 1,100 |
| 林業 | 500 |
| 合計(17分野) | 426,200 |
この数値は制度上設定された受入れの上限枠であって、需要そのものの予測ではありません。出入国在留管理庁・厚生労働省の資料も、受入れ見込数は「受入れ上限として運用するもの」であるとしたうえで、令和6年3月の設定時より更なる生産性向上・国内人材確保の取組を行うよう見直すなどして精査した、と説明しています。[1]見込数が設定されていることと、その分野ですぐ受け入れられることも別です。後述のとおり、実務の整備状況には分野差があります。
並べて読むときは、集計の起点にも注意してください。同じ資料に載る特定技能1号の受入れ見込数(80万5,700人・令和11年3月末まで)と育成就労の42万6,200人は終期こそ同じですが、育成就労側は制度開始の2027年4月からの受け入れ分です。[1]期間の異なる数字を単純に横並びで比べないでください。特定技能側の在留者数・受入れ見込数の実勢は特定技能の在留外国人数の統計で追えます。
上限に達したときの扱いも決まっています。出入国在留管理庁の育成就労制度Q&Aによると、在留者数が受入れ見込数(受入れ上限数)を超えることが見込まれる場合、育成就労では育成就労計画の認定が一時的に停止され、在留者数の増加要因となる在留許可も原則行われません。再開されるのは、分野所管省庁から人材不足を理由とする要請があり、主務大臣が再開の措置をとったときです。一方、既に在留している人の在留期間更新の許可申請は、在留者数の増加要因とならないため、原則として通常どおり審査されます。受入れ見込数は5年ごとに設定され、大きな経済情勢の変化が生じない限り上限として運用されます。[6]採用の時期を計画するときは、枠の残りという変数があることも前提に置いてください。
特定技能の対象分野との違い(航空・自動車運送業は対象外)
育成就労の17分野は、特定技能の対象分野(制度上19分野)から航空・自動車運送業を除いたものです。「育成就労制度の概要」(令和8年7月改訂)は、令和8年7月時点で特定技能の19分野のうち育成就労産業分野として設定がないのは自動車運送業分野・航空分野のみ、と注記しています。[4]
そのため、航空・自動車運送業で外国人材の受け入れを検討する場合は、育成就労ではなく特定技能のルートを軸に考えることになります(航空分野の採用ガイド・自動車運送業の採用ガイド)。特定技能の対象分野の全体像(制度上19分野と受入れ可能な分野の区別を含む)は特定技能の対象分野一覧で整理しています。
この2分野が育成就労の対象外である理由は、制度設計にあります。同じ資料は、育成就労の受入れ対象分野を特定技能と原則一致させるとしたうえで、特定技能の受入れ対象分野でありつつも国内での育成になじまない分野は育成就労の対象外である、と注記しています。前述した基本方針の選定基準——免許又は資格の取得が前提となっている等、就労を通じた人材育成になじまない分野は選定しない——と対応する説明です。
特定技能の「受入れ可能17分野」とは中身が違います(同じ"17"でも別物)
紛らわしいのですが、特定技能にも「受け入れ可能な分野が17分野」という数字があり(2026年時点)、これは育成就労の17分野とは顔ぶれが異なります。どちらも「17」ですが、含まれる分野が入れ替わっているだけで、同じ17分野ではありません。
| 分野 | 特定技能(受入れ可能17分野・2026年時点) | 育成就労(17分野・制度上) |
|---|---|---|
| 航空/自動車運送業 | 含む | 含まない |
| 物流倉庫/資源循環 | 含まない(準備中) | 含む |
| リネンサプライ | 含む | 含む |
| その他14の共通分野(下記) | 含む | 含む |
共通の14分野=介護/ビルクリーニング/宿泊/外食業/工業製品製造業/造船・舶用工業/飲食料品製造業/建設/自動車整備/鉄道/農業/漁業/林業/木材産業。つまり両者は、航空・自動車運送業と、物流倉庫・資源循環とが入れ替わった関係です。数字が同じでも対象は一致しないため、「特定技能が17分野だから育成就労も同じ顔ぶれ」と考えないよう注意してください。なお「受入れ可能な17分野」という数え方は、出入国在留管理庁の運用要領などの整備状況をもとにした編集部の整理です。内訳と根拠は特定技能の対象分野一覧で詳しく整理しています。
分野ごとの整備の進み方(運用要領・告示の公開状況)
17分野すべてに2027年4月からの受入れ見込数が設定されている一方で、受け入れの細目を定める文書の公開状況は分野によって違います。出入国在留管理庁が公開している育成就労の分野別運用要領は、2026年8月8日時点で17分野中7分野です。[8]掲載日は同庁の新着情報で確認できます。[5]
| 分野 | 育成就労の分野別運用要領の公開状況(2026年8月8日時点) |
|---|---|
| 工業製品製造業 | 2026年6月4日 掲載 |
| 鉄道 | 2026年6月30日 掲載 |
| 外食業 | 2026年7月10日 掲載 |
| ビルクリーニング | 2026年7月14日 掲載 |
| リネンサプライ | 2026年7月14日 掲載 |
| 自動車整備 | 2026年7月21日 掲載 |
| 木材産業 | 2026年7月21日 掲載 |
| 介護 | 未掲載 |
| 建設 | 未掲載 |
| 造船・舶用工業 | 未掲載 |
| 宿泊 | 未掲載 |
| 物流倉庫 | 未掲載 |
| 農業 | 未掲載 |
| 漁業 | 未掲載 |
| 飲食料品製造業 | 未掲載 |
| 林業 | 未掲載 |
| 資源循環 | 未掲載 |
「未掲載」は、その分野が対象から外れたという意味ではありません。分野別運用要領は要件・手続の細目と参考様式を定める文書で、公開の時期が分野ごとにずれている、という状態です。出入国在留管理庁の運用要領ページも、要領本体の記載や参考様式で「追って示す」としているものは準備ができ次第知らせる、と注記しています。[8]自社の分野が未掲載であれば、分野固有の基準の運用・提出書類・参考様式など、公開後に確定させる部分が残ると見込んでおくと計画がぶれません。
もう一つの整備物である上乗せ基準は、分野の特有の事情に鑑み、全分野共通の省令の基準に上乗せして分野独自の基準を告示で定めるものです。出入国在留管理庁の「育成就労制度の制度概要・関係法令」のページには、2026年8月8日時点で17分野それぞれの上乗せ基準の告示が掲載されています。[9]中身は分野で異なりますが、分野別運用方針の主要な記載事項が一例として挙げる型は、受け入れ機関になれる事業者の範囲の限定(許認可など)・受入事業実施法人への加入・受け入れ機関ごとの受入人数の上限・監理支援機関の範囲の限定です。どの型の基準が課されるかは分野ごとに違うため、自分野の告示と運用要領で確認してください。[1]
ただし、告示が公布されていることと、その基準がいま効いていることは別です。たとえば環境省が2026年(令和8年)7月30日に公布した資源循環分野の告示(環境省告示第37号)は、附則で「この告示は、令和九年四月一日から適用する。」と定めています。[10]介護(厚生労働省)や建設(国土交通省)の告示の附則も同じ適用期日を定めており、上乗せ基準が実際に効き始めるのは改正法の施行日である2027年4月1日からです。「告示が出た=もう受け入れられる」と読まないようにしてください。
2026年1月に新しく加わった3分野(リネンサプライ・物流倉庫・資源循環)には、さらに前置きがあります。「育成就労制度の概要」(令和8年7月改訂)は、新規分野の受け入れについて、上乗せ基準告示の公布・施行後、準備が整い次第、開始予定と注記しています(特定技能・育成就労の双方に共通の注記です)。[4]該当する業種では、受け入れの開始時期を採用計画の前提に置く前に、出入国在留管理庁の公表を確認してください。なお特定技能側の整備は育成就労とは別に進んでおり、たとえばリネンサプライの特定技能としての受け入れ要件は特定技能「リネンサプライ」の解説で整理しています。
本記事は、出入国在留管理庁の分野別運用要領の追加公表を確認したつど、上の表を更新します。
対象分野だった場合の進め方
結論から言うと、施行日前に受付が始まる申請は2つです。監理支援機関の許可(受付中)と、育成就労計画の認定(2026年9月1日受付開始)——自社の分野が対象だと分かったら、この2つの時間軸と制度の全体像を押さえます。
育成就労は、原則3年で特定技能1号の水準まで育て、特定技能へ移行することを想定した制度です。働き手に求められる技能・日本語の水準は、就労開始時から特定技能1号までの段階ごとに一般的な水準が定められていますが、分野によってはより高い水準が求められます(例=介護は1年経過時にA2.2相当以上と日本語学習プランが求められ、多くの分野のA1相当以上より高い段です)。[1][4]制度の目的・技能実習や特定技能との違い・受け入れの流れ・要件の段階・施行までに企業ができる準備は育成就労とは(技能実習に代わる新制度)で解説しています。
時間軸で先に動くのは、企業自身の申請ではなく受け入れ体制側の手続です。「育成就労制度の概要」(令和8年7月改訂)が示す施行までのスケジュールでは、施行日前に受け付けが始まる申請が2つあります。[4]
- 監理支援機関の許可の申請 — 2026年4月15日に受付が始まっています。監理支援機関は、育成就労外国人と受入れ機関の間の雇用関係のあっせんや、育成就労が適正に実施されているかの監査などを担う許可制の機関です。技能実習の監理団体も、この許可を受けなければ監理支援事業を行えません。どの機関に委ねるかは受け入れ計画の前提になります(監理団体・監理支援機関・登録支援機関の違い)。
- 育成就労計画の認定の申請 — 2026年9月1日に受付開始とされています。育成就労計画は育成就労外国人ごとに作成して認定を受けるもので、育成就労の期間(3年以内)・技能と日本語能力の目標・内容などを記載します。
2026年秋以降は、施行日を待たずに個別の計画認定の申請ができる段階に入ります。2027年4月からの受け入れを想定するなら、分野の確認と業務区分の特定は、この時期までに済ませておきたい作業です。
特定技能への移行を見据えるなら、育成就労から特定技能への移行もあわせて確認するとよいでしょう。その先の特定技能2号まで進めるかは分野・業務区分で異なり、たとえば工業製品製造業で2号へ移行できるのは機械金属加工・電気電子機器組立て・金属表面処理の3区分のみです。[4]分野ごとの2号の有無は、前述の「特定技能の対象分野一覧」で確認できます。転籍の仕組みは受け入れ計画の前提になるため、育成就労の転籍制度も押さえておきたいところです。特定技能制度そのものの全体像は特定技能採用の完全ガイドにまとめています。なお、在留資格に関する申請書類の作成や申請取次は行政書士などの専門家の領域です。制度の確認と並行して、連携する専門家を決めておくと手続が進めやすくなります。
まとめ
育成就労の対象分野は、2026年1月23日の閣議決定で定められた17分野・計46業務区分で、これは特定技能の対象分野から航空・自動車運送業を除いたものです。施行日は令和7年政令第340号により2027年4月1日と確定しています。
一方で、対象かどうかは業種名ではなく業務区分で決まり、その区分は転職・転籍の範囲まで画します。分野別運用要領の公開は2026年8月8日時点で7分野にとどまり、上乗せ基準の告示は17分野分が出ているものの適用は2027年4月1日からです。分野・業務区分の設定も「必要に応じて行う」とされています。まずは上の一覧で自社の分野と業務区分を確認し、対象であれば育成就労とはで制度の全体像を押さえるのが近道です。最新の対象分野・整備状況は、出入国在留管理庁の情報で確認してください。
よくあるご質問
- 育成就労の対象分野はいくつありますか?
- 2026年1月23日の分野別運用方針の閣議決定で17分野が育成就労産業分野として定められました。これは特定技能の対象分野(制度上19分野)から航空・自動車運送業を除いたものです。分野の下にはさらに業務区分があり、17分野の業務区分は合計46区分です(区分数は分野ごとに違い、工業製品製造業の17区分から介護・宿泊などの1区分まで幅があります)。制度の施行日は令和7年政令第340号により2027年(令和9年)4月1日と定められています。ただし出入国在留管理庁・厚生労働省の資料は「育成就労産業分野・特定産業分野の設定(業務区分の追加等を含む)は、必要に応じて行う」としており、分野・業務区分は今後も追加され得ます。最新の対象分野は出入国在留管理庁の情報で確認してください。
- 特定技能では対象でも育成就労では対象外の分野はありますか?
- はい。航空と自動車運送業は特定技能の対象分野ですが、育成就労には対象分野の設定がありません。出入国在留管理庁・厚生労働省の「育成就労制度の概要」(令和8年7月改訂)も、令和8年7月時点で特定技能の19分野のうち育成就労産業分野として設定がないのは自動車運送業分野と航空分野のみ、と注記しています。育成就労は3年間の就労を通じて技能を修得させることが相当な分野に限る設計で、基本方針は「我が国の法令に基づく免許又は資格の取得が前提となっている等、我が国における就労を通じた人材育成になじまない分野」は育成就労産業分野として選定することが相当ではない、としています。
- 自社の業種が育成就労の対象か、どう確認すればよいですか?
- 分野は業種名そのものではなく、分野ごとに対象となる業務区分が定められています。まず17分野の中に自社の分野があるかを探し、次にその分野の業務区分に自社の事業が含まれるかを、出入国在留管理庁の分野別運用方針で確かめるのが確実です。業務区分は、分野別運用方針において「技能の範囲を画するとともに、転職の範囲を画するもの」と定義されており、採用時の可否だけでなく本人意向による転籍で移れる範囲にも関わります。食品を扱う事業が外食業なのか飲食料品製造業なのかなど、近い分野が複数ある業種では判断が分かれやすいため、迷う場合は専門家や相談窓口に確認してください。
- 技能実習で受け入れ中の職種は、育成就労でも対象になりますか?
- すべてが対象になるわけではありません。出入国在留管理庁の育成就労制度Q&A(Q30)は、技能実習2号移行対象職種のうち「クリーニング職種(一般家庭用クリーニング作業)」「空港グランドハンドリング職種」「ボイラーメンテナンス職種(ボイラーメンテナンス作業)」の3職種が育成就労産業分野の対象外であるとしています(追加する必要性については引き続き分野所管行政機関が検討する、とも記載されています)。また「育成就労制度の概要」(令和8年7月改訂)は、施行日時点で技能実習を行っている場合について「技能実習から育成就労に移行することはできません」と明記しており、在留中の技能実習生がそのまま育成就労へ切り替わる仕組みではありません。この3職種で受け入れている企業は、特定技能を含む別のルートが使えるかを業務の内容ごとに確認しておく必要があります。
- 育成就労の分野別の受入れ見込数(人数枠)はどれくらいですか?
- 2026年1月23日の閣議決定で、17分野それぞれに受入れ見込数(受け入れの上限として運用する人数)が設定されました。制度開始の2027年4月から2029年3月末までの合計は42万6,200人で、建設(12万3,500人)・工業製品製造業(11万9,700人)・飲食料品製造業(6万1,400人)が大きな割合を占めます。出入国在留管理庁・厚生労働省の資料は、この数値を「受入れ上限として運用するもの」と説明しており、需要の予測ではありません。同資料は、令和6年3月の設定時より更なる生産性向上・国内人材確保の取組を行うよう見直すなどして精査したとしています。最新の数値は出入国在留管理庁の分野別運用方針で確認してください。
出典・参考(一次情報)
- 分野別運用方針の主要な記載事項(令和8年1月23日閣議決定/特定産業分野・育成就労産業分野及び業務区分一覧・受入れ見込数は令和11年3月末まで)(出入国在留管理庁・厚生労働省)
- 特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針及び育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する基本方針(令和7年3月11日閣議決定・育成就労産業分野の選定に関する基本的な事項)(出入国在留管理庁)
- 出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(令和7年政令第340号)(出入国在留管理庁)
- 育成就労制度の概要(令和8年7月改訂・施行までのスケジュール・技能実習に関する経過措置)(出入国在留管理庁・厚生労働省)
- 育成就労制度(新着情報・分野別運用要領の掲載日)(出入国在留管理庁)
- 育成就労制度Q&A(Q30・技能実習2号移行対象職種のうち育成就労産業分野の対象とならない職種)(出入国在留管理庁)
- 技能実習2号移行対象職種と育成就労における分野(業務区分)との関係性について(育成就労制度運用要領 別紙7)(出入国在留管理庁・厚生労働省)
- 育成就労制度運用要領・分野別運用要領(掲載されている分野の一覧)(出入国在留管理庁)
- 育成就労制度の制度概要・関係法令(分野別の上乗せ基準の告示一覧)(出入国在留管理庁)
- 資源循環分野に特有の事情に鑑みて定める基準(環境省告示第37号・令和8年7月30日・附則で令和9年4月1日から適用)(環境省)