特定技能の日本語試験|JFT-BasicとJLPT N4の違い・上乗せがある区分
目次
特定技能で外国人を採用するとき、技能試験と並んで要件になるのが日本語です。結論を先に言うと、令和8年1月23日の閣議決定で、分野別運用方針が定める日本語能力水準はJLPTのN番号から「日本語教育の参照枠」へ移りました。1号はA2.2相当以上、2号はB1相当以上です。実際に受験する試験はJFT-Basic・JLPTで、所管省庁の資料ではA2.2相当=N4、B1相当=N3として運用されています。企業側がやるべきことは試験対策そのものではなく、「候補者がどの水準に当たるか」を正しく見分け、採用後に現場で通じるまでの設計をしておくことです。
この記事の要点
- 1号の水準は「参照枠A2.2相当以上」 — 令和8年1月23日の閣議決定で、分野別運用方針からJLPTのN番号による定義が消え、参照枠に一本化されました。
- 参照枠とJLPTの対応は所管省庁の資料に明記 — 国土交通省 関東運輸局の資料(令和8年3月6日)はA2.2相当=JLPT N4・JFT-Basic/B1相当=JLPT N3としています。全分野共通の法令上の換算表ではない点だけ注意してください。
- どちらの試験も「話す力」は測っていません — JLPT・JFT-Basicとも発話の区分がなく、合格証は話せることの証明になりません。選考で実際に日本語で話してもらってください。
- JFT-Basicは年6回・結果5営業日/JLPTは年2回・結果まで約2か月 — 要件をこれから満たす候補者では、この差が入社時期を左右します。
- 区分によっては上乗せがある — 自動車運送業のタクシー・バスと鉄道の運輸係員は参照枠のB1相当以上(タクシー・バスは企業が学習プラン作成と補助要員の同乗を用意すればA2.2相当でも可)。
- 介護だけ上乗せ — 参照枠A2.2相当以上に加えて「介護日本語評価試験」が必要です。
- 技能実習2号の良好修了なら免除 — 日本語試験が免除され、関連業務なら技能試験も免除されます。
本記事は採用する企業向けの一般的な情報提供です。日本語試験として認められる試験の種類・分野別の日本語要件は更新されるため、最新の内容は出入国在留管理庁および各試験の実施機関の案内で必ず確認してください。
1号の水準は「参照枠A2.2相当以上」に変わりました
まず押さえるべきは、要件の物差しが2026年1月に変わったことです。
令和8年1月23日の閣議決定で、全分野の分野別運用方針からJLPTのN番号による定義が消え、「日本語教育の参照枠」に一本化されました。現行の運用方針が定める水準は次のとおりです。[1]
| 在留資格 | 分野別運用方針が定める日本語能力水準 |
|---|---|
| 特定技能1号 | 「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上 |
| 特定技能2号 | 「日本語教育の参照枠」のB1相当以上 |
これに合わせて、特定技能外国人受入れに関する運用要領(令和8年4月1日版)も、日本語の節からJFT-Basic・JLPT N4の列挙を削除し、「試験その他の評価方法は、特定産業分野に係る分野別運用方針で定められています」という書き方に改められました。[2]
では、候補者は何を受験するのか
水準の物差しは変わりましたが、実際に受験する試験としては、出入国在留管理庁の試験関係ページに現在もJFT-BasicとJLPTが掲載されています。[3]
| 試験 | 実施 |
|---|---|
| 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic) | 国際交流基金(国内外・コンピューター形式) |
| 日本語能力試験(JLPT) | 日本国際教育支援協会・国際交流基金(年2回) |
参照枠とJLPTの対応は、所管省庁の資料に書かれています
「では手元のN4の合格証はどう扱えばよいのか」が実務の疑問です。ここは丁寧に見る必要があります。
出入国在留管理庁が全分野共通の換算表を告示しているわけではありません。 現行の運用方針も運用要領も、参照枠の水準を示すだけでJLPTのN番号を書いていません。
一方で、分野を所管する省庁の説明資料は、参照枠とJLPTを対応づけて運用しています。国土交通省 関東運輸局が令和8年3月6日(閣議決定の後)に公表した自動車運送業分野の資料には、注記でこう書かれています。[4]
| 参照枠の水準 | 対応するとされる試験 |
|---|---|
| B1相当 | 日本語能力試験(JLPT)N3 |
| A2.2相当 | 日本語能力試験(JLPT)N4、日本語基礎テスト(JFT-Basic) |
同じ資料は要件そのものも「乗合バス・タクシーは日本語能力要件A2.2(N4)以上、貸切バスはB1(N3)以上」と、A2.2(N4)の併記で説明しています。特定技能1号の日本語能力水準も「試験(N4等)で確認(技能実習2号修了者は免除)」と記載されています。
つまり実務上は、A2.2相当=N4、B1相当=N3として扱われていると考えて差し支えありません。
⚠️ ただし性質は正しく押さえてください。これは所管省庁が自分の分野について示した説明資料であって、全分野に通用する法令上の換算表ではありません。 参照枠とJLPTは本来別の物差しで、機械的に等号で結べるものでもありません。自社の分野の要件は、分野別運用方針と所管省庁の案内で確認するのが確実です。判定結果が参照枠の区分でそのまま表示されるJFT-Basic(後述)なら、この読み替え自体が不要になります。
N4に合格した人は、実際どのくらい日本語ができるのか
要件を満たしているかの判断だけでなく、現場で何が起きるかの見当をつけるために、水準の中身を知っておく価値があります。日本語能力試験が公表しているN4の認定の目安は次のとおりです。[5]
| N4の認定の目安(公式) | |
|---|---|
| 読む | 基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる |
| 聞く | 日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる |
注目してほしいのは「ややゆっくりと話される」という条件です。実際の職場では、日本人同士が通常の速度で話し、専門用語や略語も飛び交います。N4は「基本的な日本語を理解できる」水準で、現場の会話にそのまま乗れることを保証するものではありません。
そのため、要件を満たした人材を採用したあとに次のような準備が要ります。
- 業務の専門用語・安全に関わる言葉を、入社時に整理して渡す(試験範囲には出てこない語彙です)
- 指示・報告・連絡の言い方を決めておく(曖昧な指示は伝わりにくく、事故や手戻りの原因になります)
- やさしい日本語で話すことを、現場の受け入れ側にも共有する
つまり「試験に合格しているか」は入口の確認にすぎず、そこから先は企業側の受け入れ設計の問題です。採用後の日本語学習の機会の提供は受け入れ企業の義務的支援にも含まれます(義務的支援10項目)。定着に向けた具体的な打ち手は特定技能外国人の定着支援で整理しています。
重要:JLPTもJFT-Basicも「話す力」を測っていません
見落とされやすいのですが、この2つの試験には発話(スピーキング)の区分がありません。
| 試験 | 試験の構成 | 発話の区分 |
|---|---|---|
| 日本語能力試験(JLPT) | 言語知識(文字・語彙)/言語知識(文法)・読解/聴解 の3科目 | なし |
| JFT-Basic | 文字と語彙/会話と表現/聴解/読解 の4セクション | なし |
JLPTの聴解には「発話表現」という名前の大問がありますが、これは音声を聞いて適切な受け答えを選ぶ設問で、受験者自身が話す試験ではありません。[6]JFT-Basicも国際交流基金が公式に「会話の問題(スピーキング)・作文の問題はどちらもない」と明言しています。[7]
つまり合格証は「話せること」の証明にはなりません。ここを合格証だけで判断すると、入社後に「指示が通らない」と気づくことになります。選考の場で実際に日本語で話してもらうのが唯一の確認手段です。通訳を介した面接だけで決めないでください。
面接で見ておくと判断がぶれにくい観点は次の3つです。
- 2つ以上の指示を続けて出したときに、順番どおり実行できるか(現場の指示はたいてい複数の手順が続きます)
- わからなかったときに「わかりません」「もう一度お願いします」と言えるか(曖昧なまま「はい」と答える人は、現場で事故につながります)
- 報告・連絡・相談を自分から切り出せるか(トラブルの第一報が来るかどうかが分かれます)
日本語試験として認められる試験は、追加・変更されることがあります(出入国在留管理庁のQ&Aは令和7年12月1日時点で、JFT-BasicとJLPT以外に参照枠の水準として認められた日本語試験はないとしています)。採用時点でどの試験が有効かは、出入国在留管理庁の試験関係の案内で確認してください。
2026年8月から、JFT-Basicの判定結果の表示が変わります
2026年8月以降に受験した場合、JFT-Basicの判定結果はA2だけでなくA1・A2.1・A2.2の3区分で表示されます。[8] 合格証(判定結果通知書)を確認する立場として、押さえておくべき変更です。
| 総合得点 | 判定結果の表示 |
|---|---|
| 200点〜250点 | A2.2(A2) |
| 175点〜199点 | A2.1 |
| 145点〜174点 | A1 |
| 145点未満 | *(判定結果は表示されない) |
- A2.2(A2)が、2026年7月までのA2に相当します(判定基準点は200点で変わりません)。
- 2026年7月までに受験して総合得点が200点以上だった通知書は、引き続きA2.2(A2)の水準に達していることの証明として使えます。手元の古い通知書が無効になるわけではありません。
- A1・A2.1が新設されたのは、育成就労制度で使うためです。育成就労は就労開始までに基本的にA1相当以上が求められ、A2.1は本人意向による転籍の要件確認での活用が想定されています。育成就労そのものは育成就労とはで解説しています。
⚠️ 国際交流基金の告知は「A2.2(A2)は2026年7月までのA2に相当」と示すもので、特定技能1号の日本語要件そのものの変更を告知したものではありません。要件の取り扱いは出入国在留管理庁の案内で確認してください。[9]
どちらを勧めるか:JFT-Basic と JLPT N4 の実務比較
「どちらか一方でよい」なら、候補者にどちらを勧めるかは企業側の判断材料になります。[10][11][5][12]
| JFT-Basic | 日本語能力試験(JLPT)N4 | |
|---|---|---|
| 受験できる回数 | 年6回(海外〈アジア地域〉と日本/国ごとにテスト期間を設定) | 年2回(7月・12月/海外は年1回の都市あり) |
| 方式 | コンピューター形式 | 会場での筆記 |
| 出題数・時間 | 約50問・60分 | 3区分・合計115分 |
| 構成 | 文字と語彙/会話と表現/聴解/読解 | 言語知識(文字・語彙)/言語知識(文法)・読解/聴解 |
| 合格ライン | 250点満点で200点以上(80%) | 総合90点/180点。加えて区分ごとの基準点(言語知識〔文字・語彙・文法〕・読解=38点/120点、聴解=19点/60点)も満たす必要あり |
| 受験料(日本国内) | 10,000円 | 7,500円(税込) |
| 結果が出るまで | 受験後5営業日以内に発行 | オンラインで約2か月後・通知書の郵送は約2か月半後(2026年第1回=7月5日試験は、MyJLPTでの結果閲覧が8月下旬、通知書の郵送が9月下旬) |
合格率の実績は、JFT-Basicのほうが高い
企業側が見落としやすいのが、同じ基本水準を測る試験でも合格率が大きく違うことです。
| 試験 | 対象 | 受験者数 | 合格・認定率 |
|---|---|---|---|
| JLPT N4 | 日本国内・2025年第1回(単一回) | 73,108名 | 37.7% |
| JLPT N4 | 海外・2025年第1回(単一回) | 105,741名 | 36.2% |
| JFT-Basic | 日本国内・令和6年度(全実施回の合計) | 10,037名 | 52.2% |
| 介護日本語評価試験 | 日本国内・令和6年度(全実施回の合計) | 136,004名 | 56.6% |
「N4合格」でも、聞き取りが極端に弱い人がいます
比較表の合格ラインをもう一度見てください。JLPTは総合90点/180点に加えて区分ごとの基準点(言語知識・読解=38点/120点、聴解=19点/60点)を満たせば合格です。[13]
ここに実務上の含意があります。聴解が19点/60点(約32%)でも、他で点を稼いでいれば合格証は出ます。 読み書きで点を取り、聞き取りは基準点ぎりぎり、という合格者が制度上あり得るということです。
現場で最初に問題になるのはたいてい聞き取りです。合格証は「聴解が十分」の証明ではないと理解したうえで、前述のとおり選考で実際に話して確かめてください。
JLPT N4の認定率は4割弱に対し、JFT-Basicは5割強です。加えて受験機会もJFT-Basicのほうが3倍多い(年6回 vs 年2回)ため、「早く要件を満たしてほしい」場合はJFT-Basicのほうが現実的な選択肢になりやすい、という読み方ができます。
⚠️ 不合格でも、すぐには受け直せません。 国際交流基金は「前回の受験日から次の受験日まで、45日間あける必要があります」としています。落ちた場合は次の受験まで1か月半空くため、入社希望日から逆算するときはこの空白を見込んでおいてください。
入社日から逆算すると、差はさらに開きます
比較表の「結果が出るまで」の差が、実務では効いてきます。JLPTは結果が出るまで約2か月かかります。2026年第1回(7月5日試験)を例にとると、MyJLPTの画面で結果を見られるのが8月下旬、合否結果通知書・日本語能力認定書が郵送されるのは9月下旬です。しかも実施は年2回です。[14]
⚠️ 在留資格の手続きで合格の証明書類が要る場合は、オンラインの閲覧日ではなく通知書が届く日で逆算してください。 画面で合格が分かってから書類が手元に届くまで、さらに1か月ほどあります。
つまり7月の試験に落ちると、次のチャンスは12月試験・結果は翌年2月で、振り出しから半年以上かかります。JFT-Basicなら年6回・結果は5営業日以内で、落ちても45日後には再挑戦できます。
「候補者はまだ日本語の要件を満たしていないが、これから取ってもらう」という採用計画では、この差が入社時期をそのまま左右します。 候補者にどちらを勧めるかは、ここで決まると考えてください。
⚠️ 海外の候補者を検討する場合は、その国でJFT-Basicが実施されているかを先に確認してください。 JFT-Basicの実施国・都市は実施回ごとに変動します(たとえば2025年6〜7月期は海外12か国26都市・国内10都道府県)。恒久の一覧ページはなく、最新の実施予定は公式のテスト日程で確認する運用です。実施国でなければ、その国の候補者はJLPT(年2回)しか選べません=上の逆算がそのまま効いてきます。なお本人が居住国と別の国で受験予約すること自体は可能とされています(会場での案内は会場国の言語か英語)。[15]
数字を見るときの注意が2つあります。
- ⚠️ 合格ラインの設計が違います(JFT-Basicは250点中200点=80%、JLPT N4は180点中90点=50%+区分別の基準点)。難易度そのものの比較ではなく、受験者層の違いも含んだ実績値として見てください。
- ⚠️ 集計の範囲・時期で数字は動きます。 上表はJLPTが単一回、JFT-BasicとJFT介護日本語が令和6年度の全実施回の合計です。JLPT N4の2行目だけは海外分で、他の3行は国内分です。集計の範囲や期を取り替えると数値が変わります。比較するときは対象と時期を揃えて確認してください。
JFT-Basicの数値は、出入国在留管理庁が公表している実施状況報告書の実施回ごとの行を本記事で合算したものです(報告書に年度計の行がないため)。令和6年度の国内は6つのテスト期間・12の受験窓で実施されており、表の合格率はその合算です。[16]介護日本語評価試験も同じ方法で合算しています(合格率=76,996名÷136,004名)。[17]JLPTは公表されている集計値をそのまま引用しています。[18]
合格証(判定結果通知書)を確認するときの実務
- 紙の原本はありません。 JFT-Basicの判定結果通知書はプロメトリックの予約ウェブサイトで発行されるデジタル形式で、紙が必要なら本人が印刷します。
- 結果に有効期限はありません(ただし予約サイト上でのテスト結果データの保存期間は5年間です)。
- ⚠️ 偽造は実際に発生しています。 令和6年度には、真偽確認の照会のうち143件が偽造と確認され、受験歴が確認された58件は再受験禁止の措置が取られました。同年12月には国内で替え玉受験の疑いから全国内会場の試験が一時中止される事案も起きています。[16]
- 真偽の照会先は国際交流基金です。行政機関・教育機関・企業などから適正な理由で照会があった場合に対応しており、日本語または英語のメールのみ(電話では応じない運用)とされています。[7]
A2.2は「基本」で、上乗せがある区分に注意
注意したいのは、A2.2相当以上はあくまで基本で、分野・業務区分によっては上乗せがあることです。旅客と直接接する仕事かどうかで線が引かれています。
「日本語教育の参照枠」は、文化庁が示している日本語能力の段階です(A1・A2・B1…と上がっていきます)。おおまかには A2=基本的なやりとりができる/B1=仕事上の指示や説明を理解して受け答えできる 水準にあたり、A2.2 は A2 の上位側を指します。JLPTのN番号とは別の物差しなので、単純な換算はできません。 自動車運送業の分野別運用方針は次のとおりです。
| 業務区分 | 求められる日本語能力水準 |
|---|---|
| トラック運転者 | 「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上 |
| タクシー運転者 | B1相当以上/またはA2.2相当(下記の措置を講じる場合に限る) |
| 乗合バス運転者 | B1相当以上/またはA2.2相当(下記の措置を講じる場合に限る) |
| 貸切バス運転者 | B1相当以上(引き下げの対象外) |
A2.2でも採用できる「引き下げルート」があります
タクシー・バスは原則B1相当以上ですが、受け入れ企業が次の措置を講じる場合に限り、A2.2相当の人材でも運転業務に従事させられます。
- B1相当以上の日本語能力修得に向けた日本語学習プランを作成すること
- 乗客対応に関する必要な指導を受けた自社の従業員を、乗客や関係機関との意思疎通を補助する要員として同乗させること
- この引き下げは一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス)には適用されません
「補助する要員」の中身は、国土交通省の資料でもう少し具体的に示されています。 関東運輸局の資料はこれを日本語サポーターと呼び、各社に所属する運転士をリタイアした人、高速バスの交代運転士などを想定していると明記しています。つまり新たに人を雇うのではなく、社内のベテラン人材を充てる想定です。日本語学習プランについても「特定技能1号の取得から1年以内の試験合格を見据えた内容とする」「合格に至らなかった場合は、プランを改めて作成して提出」と、運用の粒度まで示されています。
離島・半島の乗合バスには、さらに別のルートがあります。 同乗ではなく、営業所との連絡体制が整備されていることを前提に、A2.2(N4)で単独乗務も可とされています(当該路線の営業所と路線・経路全体が離島振興法・半島振興法等の対象地域内にある場合に限る)。この場合は、事業者と自治体が連携した地域への溶け込みの取組(方言を理解するセミナー等)や、緊急時に車内状況を確認できる機器(ドライブレコーダー等)・翻訳機器の車内配備が求められます。
つまり「B1に届く人材が見つからない」場合でも、企業側が学習支援と同乗体制を用意すれば道が開けるという設計です(ただし貸切バスは対象外で、B1相当以上が必要です)。要件を満たす人材だけを待つのか、体制を整えて候補者の幅を広げるのかは、採用戦略の判断になります。区分ごとの要件・免許・費用は自動車運送業の採用ガイドで整理しています。[19]
⚠️ ただし「N3以上」「N4以上」と書かれた情報を、それだけで古いと決めつけないでください。 定義の場所が参照枠へ移った一方、所管省庁は A2.2相当=N4/B1相当=N3 として運用しており、N番号での説明が誤りとは限りません。注意すべきはむしろ水準そのものがずれている情報です。たとえば自動車運送業のタクシー・バスと鉄道の運輸係員はB1相当(N3)以上であって、ここを「N4でよい」と書いている情報は水準を1段取り違えています。自社の分野・区分の要件は、必ず現行の分野別運用方針と所管省庁の案内で確認してください。
介護は専用の日本語試験が上乗せされます
一般的な日本語試験に加えて、介護現場の日本語を確認する介護日本語評価試験が必要になるのが介護分野です。日本語の要件が上乗せされる唯一の分野で、技能試験も「介護技能評価試験」という専用の試験になります。
介護の試験の詳細と、介護福祉士養成施設の修了・EPA候補者などの免除ルートは介護の特定技能試験で解説しています。
技能実習2号の良好修了なら日本語試験は免除
技能実習2号を良好に修了した人は、原則として日本語試験が免除されます。「良好に修了」とは、おおむね2年10か月以上を計画どおりに修了していることを指します。
この免除は日本語試験だけの話ではなく、従事予定の業務が技能実習の職種・作業と関連していれば技能試験も免除され、無試験で特定技能1号へ移行できます。免除ルート全体と、自社の技能実習の職種がどの特定技能分野に対応するかは特定技能の試験(分野別一覧と免除ルート)・特定技能と技能実習の違いで解説しています。
⚠️ この免除ルートは、そのままの形では続かない見込みです。 技能実習は2027年4月1日に施行される育成就労へ発展的に解消されるため、「技能実習2号の良好修了」を起点とする免除の扱いは、施行に向けて変わり得ます。育成就労側は開始時にA1相当以上(介護など一部分野はA2.2相当以上)を求め、修了時にA2.2相当以上という別の設計になっています。数年先まで見た採用計画でこの免除を前提に置く場合は、移行時期の取り扱いを最新の公表で確認してください。 制度の切り替わりは特定技能・技能実習・育成就労の違い、育成就労そのものは育成就労とはで解説しています。
特定技能2号の日本語水準
令和8年1月23日の閣議決定により、各分野の運用方針は2号の日本語能力水準を「日本語教育の参照枠」のB1相当以上と定めています。
ただし、だからといって今すぐ全分野で日本語試験が要るわけではありません。ここが混乱しやすいところです。
運用方針が定めているのは水準で、それを試験で確認する扱いに係る省令の施行は2027年4月1日の予定です。国土交通省 関東運輸局の資料(令和8年3月6日)も、2号の日本語能力水準を「試験での確認なし(漁業及び外食業分野(N3)を除く。)」と記載しています。
整理すると、2026年7月時点の実務は次のとおりです。
| 分野 | 2号で日本語試験の確認が要るか |
|---|---|
| 漁業・外食業 | 要る(N3=B1相当。運用方針のB1相当以上をJLPTで表したもの) |
| 上記以外の2号対象分野 | 現時点では試験での確認なし。2027年4月1日施行予定の省令で扱いが変わる見込み |
つまり漁業・外食業の「N3」は廃止されたのではなく、参照枠で言えばB1相当にあたり、現に確認が求められています。この2分野で2号を検討する場合の要件は漁業の採用ガイド・外食業の採用ガイドで整理しています。2号への移行を計画している場合は、移行時期の要件を最新の公表で確認してください。1号・2号の違いそのものは特定技能1号・2号の違いで解説しています。[20]
技能試験(分野ごとの試験)はこちら
日本語試験と対になるもう一方の要件が、分野ごとの技能試験です。分野ごとに別の試験があり(制度上19分野・受入れが可能なのは17分野)、実施団体・申込方法も分野で異なります。分野別の試験名の一覧と各実施団体の案内先は特定技能の試験(分野別一覧と免除ルート)にまとめています。
企業が押さえておく範囲
日本語試験について、採用する企業が押さえておけば十分な範囲は次のとおりです。
- 確認すること — 候補者の日本語試験の合格証(JFT-Basic・JLPT)と、それが自社の分野に必要な水準(参照枠A2.2相当以上が基本)を満たすか、自社の区分に上乗せ(B1相当以上など)が定められていないか、介護なら介護日本語評価試験に合格しているか。合格証の水準の読み方に迷ったら、出入国在留管理庁または分野の所管省庁に確認してください。
- 企業が担わないこと — 日本語学習・試験対策そのものは、本人・送出機関・登録支援機関などが担う領域です。企業は「要件を満たした人材か」を確認できれば、採用の判断に進めます。
なお、採用後の日本語学習の機会の提供は、受け入れ企業の義務的支援に含まれます(学習教材の情報提供や日本語教室の入学案内など)。詳しくは義務的支援10項目をご覧ください。
まとめ
特定技能1号の日本語能力水準は、令和8年1月23日の閣議決定で、参照枠のA2.2相当以上(2号はB1相当以上)に一本化されました。受験する試験はJFT-Basic・JLPTで、所管省庁の資料ではA2.2相当=N4、B1相当=N3として運用されています(全分野共通の法令上の換算表ではない点は留意)。ただしタクシー・バスと鉄道の運輸係員はB1相当以上が原則(タクシー・バスは企業が体制を整えればA2.2相当でも可)、介護は介護日本語評価試験が上乗せと、分野・区分で変わります。技能実習2号を良好に修了した人は日本語試験が免除されるため、採用ルートによって日本語の壁の高さが変わる点が実務上の要点です。
分野ごとの技能試験は特定技能の試験(分野別一覧と免除ルート)、制度の全体像は特定技能採用の完全ガイド、採用の流れは特定技能の採用の流れをご覧ください。
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よくあるご質問
- 特定技能の日本語試験はどのレベルが必要ですか?
- 分野別運用方針が定める1号の日本語能力水準は「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上です(令和8年1月23日の閣議決定で、JLPTのN番号による表記から移行しました)。実際に受験する試験としては、出入国在留管理庁が国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)と日本語能力試験(JLPT)を掲載しています。出入国在留管理庁が全分野共通の換算表を告示しているわけではありませんが、所管省庁の資料(国土交通省 関東運輸局・令和8年3月6日)は「A2.2相当=JLPT N4、JFT-Basic/B1相当=JLPT N3」と対応づけて運用しています。分野・業務区分によっては、これより上の水準が定められている場合があります。
- JFT-BasicとJLPT N4はどちらを持っていればよいですか?
- 出入国在留管理庁の試験関係ページは現在も両方を日本語試験として掲載しています。JFT-Basicは国際交流基金が実施し、年に複数回・コンピューター形式で受験でき、2026年8月以降は判定結果が参照枠の区分(A1・A2.1・A2.2)で表示されます。JLPTは年2回の実施です。所管省庁の資料ではA2.2相当がJLPT N4とJFT-Basicに対応づけられています。JFT-Basicは判定結果が参照枠の区分でそのまま表示されるため、水準の読み替えが不要という利点があります。
- 日本語要件の上乗せがあるのはどの区分ですか?
- 乗客とのやり取りが発生する区分です。自動車運送業のタクシー・バス運転者は「日本語教育の参照枠」のB1相当以上が原則ですが、受け入れ企業が日本語学習プランの作成と意思疎通を補助する要員の同乗という措置を講じる場合は、A2.2相当でも従事させられます(一般貸切旅客自動車運送事業は対象外)。鉄道分野の運輸係員も参照枠のB1相当以上が必要です。自社の分野・区分の要件は分野別の運用方針で確認してください。
- 日本語試験が免除されることはありますか?
- 技能実習2号を良好に修了した人は、原則として日本語試験が免除されます。「良好に修了」とは、おおむね2年10か月以上を計画どおりに修了していることを指します。この場合、従事予定の業務が技能実習の職種・作業と関連していれば技能試験も免除され、無試験で特定技能1号へ移行できます。
- 介護分野は日本語の要件が違いますか?
- 介護分野だけは、一般的な日本語の水準(「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上)に加えて、介護現場の日本語を確認する「介護日本語評価試験」の合格が必要です。日本語の要件が一段上乗せされる唯一の分野です。なお現行の分野別運用方針はこの試験を「介護特定技能評価試験(日本語)」と表記していますが、試験実施要領や厚生労働省の案内では「介護日本語評価試験」の名称も引き続き使われています。
- 特定技能2号でも日本語試験は必要ですか?
- 令和8年1月23日の閣議決定により、各分野の運用方針は2号の日本語能力水準を「日本語教育の参照枠」のB1相当以上と定めています。ただし試験で確認する扱いに係る省令の施行は2027年4月1日の予定で、現時点で2号の日本語試験の確認が求められるのは漁業・外食業(N3=B1相当)のみです。それ以外の分野は現時点では試験での確認がありません。
出典・参考(一次情報)
- 分野別運用方針(令和8年1月23日閣議決定)(出入国在留管理庁)
- 特定技能外国人受入れに関する運用要領(令和8年4月1日版)(出入国在留管理庁)
- 試験関係(日本語試験の掲載)(出入国在留管理庁)
- 特定技能制度について 自動車運転業分野(バス・タクシー)(令和8年3月6日・参照枠とJLPTの対応)(国土交通省 関東運輸局)
- N1〜N5の認定の目安・N4の得点区分(日本語能力試験)
- 試験科目と試験時間(日本語能力試験)
- JFT-Basic よくある質問(スピーキング・作文の有無/結果の有効期限・保存期間・真偽確認の窓口)(国際交流基金)
- JFT-Basic 判定結果の表示に関するお知らせ(2026年8月以降)(国際交流基金)
- 特定技能制度に関するQ&A(出入国在留管理庁)
- JFT-Basic テストについて(出題数・時間・判定基準点)(国際交流基金)
- 特定技能試験 国別受験料金(JFT-Basic 日本国内 JPY 10,000)(プロメトリック)
- 日本語能力試験 実施案内(国内の受験料 7,500円)(日本国際教育支援協会(JEES))
- 合否判定(合格点と区分別基準点)(日本語能力試験)
- 結果の通知(結果発送時期)(日本語能力試験)
- JFT-Basic テスト日程(実施国・実施予定)(国際交流基金)
- 国際交流基金日本語基礎テスト 実施状況報告書(令和6年度・結果通知書の偽造143件/再受験禁止58件)(出入国在留管理庁)
- 介護技能評価試験・介護日本語評価試験 実施状況報告書(令和6年度)(出入国在留管理庁)
- 試験結果の集計(2025年第1回)(日本語能力試験)
- 自動車運送業分野の分野別運用方針(日本語能力水準・追加措置)(出入国在留管理庁)
- 外国人労働者に関する制度概要(令和8年7月1日更新)(出入国在留管理庁)