特定技能 介護の受け入れ|自社は受け入れられる?条件と進め方
目次
「自社で特定技能の外国人を受け入れられるか」は、大きく3点で決まります。①自社の事業所が受け入れの対象になる施設か ②本人が介護の試験等(介護技能評価試験・介護日本語評価試験・「日本語教育の参照枠」A2.2相当以上)を満たすか ③事業所単位の人数上限(日本人等の常勤介護職員の総数)を満たし、介護分野の特定技能協議会に加入できるか——この3点を自社に当てると、受け入れられるかの見当がつきます。訪問介護などの訪問系サービスに従事させる場合は、これに条件が上乗せされます。
介護は人手不足が深刻で、特定技能による外国人材の受け入れが進んでいる代表的な分野です。ただし、「人材が見つかっても、介護特有の試験や人数の条件を満たせず受け入れが進まない」というつまずきも起きやすい分野です。このページは介護の受け入れの全体像を示す入口です。試験・人数・費用など各テーマは、それぞれの専門記事で詳しく解説します。
この記事の要点
- 介護は特定技能1号のみ — 介護には在留資格「介護」があるため特定技能2号の対象外。5年を超えて働いてもらうには介護福祉士資格を取得し在留資格「介護」へ移行するのが基本の道筋です(5年目の国家試験でパート合格した場合の延長措置もあります)。
- 介護職種の技能実習2号を修了した人は試験が免除される — 本人の要件は介護技能評価試験・介護日本語評価試験・参照枠A2.2相当以上が基本ですが、介護職種の技能実習2号を良好に修了した人はこれらが免除されます。
- 受け入れ人数の上限は常勤介護職員数 — 受け入れられる1号特定技能外国人の数は、事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数を超えられません。
本記事は一般的な情報提供です。介護分野の要件・対象業務の範囲は変動するため、最新の内容は出入国在留管理庁および厚生労働省の分野別の運用方針で必ず確認してください。
なお、このページには受入れ見込数が「135,000人」と掲載されていますが(2026年8月9日閲覧時点)、これは令和6年3月に設定された旧方針の数字です。[1]現行の数字と、出回っている3つの数字の違いは介護の特定技能 人数枠と受け入れ上限で整理しています。
自社の事業所は受け入れの対象か
介護の特定技能で受け入れられるのは、厚生労働省が整理・公表している対象施設の一覧に載っている施設・事業です。この一覧は、介護福祉士国家試験の受験資格で「介護等の業務」の実務経験として認められる施設のうち、技能実習の対象になるもので現行制度に存在するものを整理したものと説明されています。老人福祉法・介護保険法の施設・事業だけでなく、児童福祉法関係、障害者総合支援法関係、生活保護法関係の施設・事業や、病院・診療所まで幅広く含まれます。
| 区分 | 対象になる施設・事業の例 |
|---|---|
| 児童福祉法関係の施設・事業 | 児童発達支援、放課後等デイサービス、障害児入所施設(指定発達支援医療機関を含む)、児童発達支援センター、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援 |
| 障害者総合支援法関係の施設・事業 | 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、療養介護、生活介護、短期入所、重度障害者等包括支援、障害者支援施設、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、共同生活援助(グループホーム)(外部サービス利用型を除く)、地域活動支援センター、福祉ホーム |
| 老人福祉法・介護保険法関係の施設・事業 | 特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設・指定地域密着型介護老人福祉施設)、介護老人保健施設、介護医療院、指定通所介護、指定地域密着型通所介護、指定認知症対応型通所介護、指定短期入所生活介護、指定認知症対応型共同生活介護、指定通所リハビリテーション、指定短期入所療養介護、指定特定施設入居者生活介護、指定訪問介護、指定夜間対応型訪問介護、指定定期巡回・随時対応型訪問介護看護、指定訪問入浴介護、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、第1号通所事業・第1号訪問事業(介護予防・日常生活支援総合事業) |
| 生活保護法関係の施設 | 救護施設、更生施設 |
| その他の社会福祉施設等 | 地域福祉センター、隣保館デイサービス事業、独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園、ハンセン病療養所、原子爆弾被爆者養護ホーム、労災特別介護施設 |
| 病院又は診療所 | 病院、診療所 |
表は分類ごとの代表例です。全施設・事業の名称は厚生労働省の一覧(下記の出典)で確認できます。判断に迷いやすい「条件つき」は次の3つです。
- 養護老人ホーム・軽費老人ホーム・有料老人ホーム — ①特定施設入居者生活介護 ②介護予防特定施設入居者生活介護 ③地域密着型特定施設入居者生活介護(いずれも外部サービス利用型を除く)のいずれかを行う施設が対象とされています。
- サービス付き高齢者向け住宅 — 有料老人ホームとして要件を満たす施設のみ、有料老人ホームに該当するものとして対象です。
- 指定小規模多機能型居宅介護・指定介護予防小規模多機能型居宅介護・指定看護小規模多機能型居宅介護 — 対象ですが、訪問系サービスに従事することは除かれます。
裏返すと、外れるのは次の4つです。①養護老人ホーム・軽費老人ホーム・有料老人ホームのうち、上の3類型をいずれも行っていない施設(特定施設入居者生活介護の指定を受けていない、いわゆる住宅型有料老人ホームなど)、②同じ3類型を外部サービス利用型でのみ行っている場合、③有料老人ホームの要件を満たさないサービス付き高齢者向け住宅、④小規模多機能型などでの訪問系サービスへの従事。また、共同生活援助(グループホーム)も外部サービス利用型は一覧から外れています。
一覧に当てはまらなくても、外国人材の雇用そのものが閉ざされるわけではありません。永住者・日本人の配偶者等・定住者など身分・地位に基づく在留資格の人は就労に在留資格上の制限がなく、介護福祉士の資格を持つ人は在留資格「介護」で雇えます(後述の4ルート比較)。
開設まもない事業所にも触れておきます。分野別運用方針が特定技能の受入れ企業に課している分野固有の条件は、介護等の業務を行うこと・人数枠・協議会への加入と協力・訪問介護等の遵守事項などで、事業所の開設年数の定めはありません。一方、育成就労の実施者には「事業所が開設後3年以上経過していること」(または同一法人の他の介護事業所が開設後3年以上、もしくは研修体制・相談体制などの要件を満たすこと)のいずれかが求められます。開設して間もない事業所にとっては、特定技能のほうが入口として現実的という違いがあります。
対象施設に当てはまったら、次は訪問系サービスに従事させるかどうかで条件が変わります(従事させる場合は後述の本人要件・遵守事項・届出が上乗せされます)。そのうえで確認するのは事業所ごとの受け入れ上限(人数枠)と配置基準です=介護の特定技能 人数枠と受け入れ条件で職員名簿の例から1行ずつ判定できます。[2]
介護で必要な試験
介護で特定技能外国人を受け入れるには、本人が次の試験等の要件を満たしている必要があります。
- 介護技能評価試験 — 介護の技能を確認する試験。
- 介護日本語評価試験 — 介護の現場で使う日本語を確認する試験。
- 「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上(国際交流基金日本語基礎テスト〔JFT-Basic〕・日本語能力試験〔JLPT〕で確認) — 基本的な日本語力。水準と各試験の対応(公式の換算表はありません)は特定技能の日本語試験で解説しています。
介護の特徴は、一般的な日本語力に加えて介護現場の日本語を確認する試験が独自に課されることです。ただし介護職種の技能実習2号を良好に修了した人は、これらの試験が免除されます(介護職種以外の技能実習修了者は、介護の試験への合格が必要です)。
なお、現行の分野別運用方針は、この2つの試験を「介護特定技能評価試験(技能)」「介護特定技能評価試験(日本語)」と表記しています。厚生労働省の案内では従来の「介護技能評価試験」「介護日本語評価試験」の呼び方も併用されているため、本記事は従来の名称で統一しています(後述の育成就労の説明で運用方針の表記をそのまま引用している箇所を除く)。
各試験の内容・免除ルート(介護福祉士養成施設の修了・EPA候補者など)・採用ルートによる試験負担の違いに加え、国籍別の受験者数と合格率(厚生労働省の月次公表データを年度集計)は介護の特定技能試験|介護技能評価試験・介護日本語評価試験と免除ルートで解説しています。
受け入れ人数はどう決まるか(事業所ごとの枠と、分野全体の枠)
介護で「何人まで」を決めるルールは2階建てです。自社の事業所で何人受け入れられるかは、日本人等の常勤介護職員の総数が上限になります。ここで先に押さえたいのが分母の数え方で、技能実習生・EPA介護福祉士候補者・留学生は「日本人等」に含まれません。この数え方で常勤介護職員が10人になる事業所なら、最大10人までが目安です。分母に数える職種の判定や、人員配置基準にいつから算入できるかは介護の特定技能 人数枠と配置基準が詳しく、職員名簿の例で1行ずつ判定できます。
数えるのは事業所単位である点にも注意が必要です。複数の事業所を運営する法人は、法人の合計ではなく事業所ごとに上限を数えます(後述の協議会の入会証明書も事業所ごとの登録です)。
もう一段上に、分野ごとの受入れ見込数があります。介護分野全体の受入れ見込数は160,700人(令和6年度から令和10年度までの5年間)で、このうち1号特定技能外国人の受入れ見込数は126,900人(同5年間。令和10年度末までの受入れの上限として運用)、育成就労外国人の受入れ見込数は33,800人(令和9年度から2年間。同じく令和10年度末までの受入れの上限として運用)と、それぞれ定められています。[3]1号特定技能の在留者数は74,745人(2026年3月末時点・速報値)で、126,900人に対する充足率は58.9%です。[4]枠がどこまで埋まっているか・上限に達したときに止まる手続き・停止が判断される仕組みは介護の特定技能 人数枠と受け入れ上限で整理しています。分野をまたいだ全体像(全分野の人数・国籍・都道府県の統計)は特定技能の統計データにまとめています。
すでに介護で働いている特定技能外国人の内訳
採用計画を立てるとき、「どんな人が実際に来ているか」も判断材料になります。介護分野で在留している特定技能1号の内訳は次のとおりです(2025年12月末時点の集計)。
データで見る:介護で働く特定技能外国人
2025年12月末時点
全国で就労中
67,871人
直近2.5年の伸び
+210%
2025年12月末時点で全国67,871人(2023年6月末の21,915人から+210%)。国籍はインドネシアが31.1%で最多、都道府県は大阪府が6,446人で最多です。
どの国から来ているか
- インドネシア21,139人(31.1%)
- ミャンマー19,803人(29.2%)
- ベトナム10,401人(15.3%)
- ネパール6,013人(8.9%)
- フィリピン5,704人(8.4%)
- その他4,811人(7.1%)
直近はミャンマーが急増(2年半で+588%)
どこで働いているか
- 大阪府6,446人
- 神奈川県5,361人
- 東京都5,312人
- 愛知県4,780人
- 埼玉県4,427人
年齢層
- 18-29歳74.1%
- 30-39歳22.8%
- 40+歳3.1%
男女比
- 男性19.1%
- 女性80.9%
出典:出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数」(令和7年12月末)をトモハタが集計。数値はすでに就労している人の分布で、地域の人材供給・採用競合をつかむ目安です。募集のしやすさを保証するものではありません。
介護は女性が8割超・20代が中心で、国籍はインドネシアとミャンマーで6割を占めるなど、ベトナム中心の分野が多い他分野とは構成が異なります。
介護分野特定技能協議会への加入
受け入れ企業は、「介護分野における特定技能協議会」の構成員になる必要があります。加入の時期は運用が変わっている点に注意してください。令和6年(2024年)6月15日以降の在留諸申請からは、地方出入国在留管理局での在留諸申請を行う前に協議会の構成員となり、受入事業所情報が登録された入会証明書の発行を受けることが必要です。なお「受け入れた日から4か月以内」という期限は、現在は加入後に行う協議会申請システムへの外国人情報の登録の期限であり、加入そのものの期限ではありません。手続きの詳細は厚生労働省の案内に沿って進めます。[5]
実務で効いてくるのは、入会証明書の発行までに事務局窓口での確認完了後おおむね2週間かかること(入会費・年会費等の費用は徴収されません)と、証明書が事業所に紐づくことです。期間・有効期間・更新時期の実務仕様と、事業所を増やすときや就労中の人を異動させるときの再発行の扱いは特定技能 介護の登録支援機関の選び方で整理しています。
協議会は分野ごとに置かれ、介護以外の分野でも受け入れる場合は分野ごとに加入します。全17分野の協議会名・加入の期限・加入企業数は分野別協議会の一覧にまとめています。
介護で任せられる業務(業務範囲)
特定技能の介護で任せられるのは、身体介護等(入浴・食事・排せつの介助など)と、それに付随する支援業務(レクリエーションの実施や機能訓練の補助など)です。施設での介護が基本ですが、2025年4月21日から、一定の要件のもとで訪問介護などの訪問系サービスにも従事できるようになりました(詳細は下記)。
逆に、任せられる業務がこの範囲に限られるため、医行為などは含まれません。日本人職員が通常行う関連業務(お知らせ等の掲示物の管理、物品の補充など)に付随的に携わるのは差し支えありませんが、関連業務だけを任せることはできません。できる業務・できない業務の線引きは介護の特定技能 人数枠と受け入れ条件で整理しています。[1]
訪問介護(訪問系サービス)への従事
従来、特定技能外国人は訪問系サービスに従事できませんでしたが、2025年4月21日から、訪問介護・訪問入浴介護などの訪問系サービスへの従事が認められました。[6]ただし、すぐに誰でも従事できるわけではなく、次のような条件があります。[7]
- 本人の要件 — 介護職員初任者研修課程等を修了し、介護事業所等での実務経験が原則1年以上あること。
- 事業者側の遵守事項 — 業務の基本事項に関する研修の実施、一定期間の同行による訓練、キャリアアップ計画の作成、ハラスメント相談窓口の設置、情報通信技術(ICT)の活用を含む環境整備など。
- 届出と適合確認 — 受け入れ機関は、巡回訪問等実施機関(国際厚生事業団等)へ事前に届け出て、適合確認書の交付を受ける必要があります。
- 訪問入浴介護・介護予防訪問入浴介護は別扱い — 従事は認められますが、複数人でのサービス提供が必要なサービスであること、必ずしも介護職員初任者研修課程の修了などが求められていないことなどを踏まえ、上の本人要件・遵守事項・届出の対象外とされています。代わりに、受入事業者が適切な指導体制等を確保したうえで、職場内で実務に必要な入浴等の研修等を受講させて従事させることとされています。
対象となる訪問サービスの種類・本人の要件(実務経験の例外を含む)・事業者の遵守事項・手続きの詳しい解説は訪問介護の特定技能解禁|2025年4月の要件・対象サービス・採用方法で整理しています。
訪問系サービスへの従事は要件・手続きが細かく、取扱いも更新されます。実際に検討する際は厚生労働省の最新の案内で必ず確認してください。
雇用形態のルール(直接雇用・フルタイム・報酬)
介護で特定技能外国人を受け入れられる雇用形態は直接雇用に限られ、労働者派遣は認められません。介護分野の分野別運用方針が、雇用形態を「直接雇用に限る」と定めています。あわせてフルタイムでの就労、日本人と同等以上の報酬が前提です。フルタイムの定義(労働日数・労働時間の基準)や、派遣不可の運用上の根拠と違反した場合の扱いは介護の特定技能 人数枠と受け入れ条件で整理しています。
介護職員の給与相場と特定技能外国人の報酬
給与の目安は、介護職員(月給・常勤の者)の平均給与額=月額約33.8万円(令和6年9月時点)です。[8]外国人にも日本人と同等以上の報酬を支払うことが前提のため、この「介護職員の相場」を下限の目安に組み立てます。介護は採用競争も激しく、介護サービス職業従事者の有効求人倍率は3.61倍(令和8年5月・常用〔パート含む〕・全国計。同じ表の職業計は0.99倍で、その3倍を超える水準)で、人材を確保しづらいからこそ特定技能が受け皿として広がっています。[9]
- 平均給与額338,200円の中身 — 介護職員等処遇改善加算Ⅰ〜Ⅴを取得(届出)している事業所の集計で、平均給与額=基本給(月額)+手当+一時金(4〜9月支給金額の1/6)です。基本給(月額)と毎月決まって支払われる手当だけでみた平均基本給等は約25.4万円(253,810円)で、こちらには通勤手当・扶養手当・超過労働給与額等は含まれません。いずれも令和5年9月と令和6年9月の両方に在籍している職員の平均(平均勤続年数9.5年)なので、新規採用時の水準はこれとは別に見る必要があります。
- 採用時の水準は勤続年数別で見る — 同じ調査の勤続年数別では、勤続1年(1年〜1年11か月)が298,760円、勤続2年が309,630円、勤続5〜9年が335,640円、勤続10年以上が359,040円です(いずれも令和6年9月・月給・常勤の者)。入職まもない層の水準は、全体平均より低い位置から始まります。
- 保有資格別だとさらに近い目安になる — 同じ調査の保有資格別では、「保有資格なし」が290,620円(平均勤続5.8年)、「介護職員初任者研修」が324,830円(同8.8年)、「介護福祉士」が350,050円(同10.4年)です。特定技能1号で入る人は入職時点で介護福祉士を持たないことがほとんどのため、下2つの水準が採用時の給与設計の実務的な目安になります。
- 処遇改善加算は特定技能外国人も対象 — 厚生労働省のQ&Aは「介護分野の1号特定技能外国人についても同様に、処遇改善加算の対象となる」と示しています(EPA介護福祉士候補者・介護職種の技能実習生についても、日本人と同等額以上の報酬という要件に鑑みて対象とされています)。加算による賃金改善の原資は、外国人職員の待遇にも反映できます。[10]
つまり特定技能は「安く雇う」ための制度ではなく、相場並みの待遇で不足する人手を確保する制度と捉えるのが実態に近い考え方です。企業が払う採用費用そのものは介護の特定技能 採用費用・相場で解説しています。
介護で外国人を受け入れられる在留資格ルート(4つの比較)
介護で外国人を受け入れられる在留資格ルートは、大きく特定技能1号「介護」・技能実習(育成就労へ移行)・EPA(経済連携協定)・在留資格「介護」の4つです。[11]どれも「介護で働ける」点は同じですが、在留期間・必要な試験・家族の帯同・介護福祉士(長期就労)への道筋が異なり、自社が「早く即戦力が欲しい」のか「育てて長く働いてほしい」のかで向くルートが変わります。
| ルート | 主な狙い | 在留期間の上限 | 入国時に必要な試験 | 家族の帯同 | 介護福祉士・長期就労への道 |
|---|---|---|---|---|---|
| 特定技能1号「介護」 | 即戦力を早く確保 | 通算5年 | 介護技能評価試験+介護日本語評価試験+参照枠A2.2相当以上(介護職種の技能実習2号修了者は免除) | 原則不可 | 介護福祉士を取得し在留資格「介護」へ移行 |
| 技能実習 →育成就労 | 育てながら受け入れ | 技能実習は最長5年/育成就労(2027年4月1日施行)は原則3年 | 技能試験は入国時に課されない。日本語は介護の育成就労では開始時にA2.2相当以上が必要 | 不可 | 特定技能1号を経て介護福祉士・在留資格「介護」へ |
| EPA(経済連携協定) | 資格取得を前提に受け入れ | 候補者は原則4年 | 入国時は各国の日本語要件(介護福祉士国家試験の合格を目指す) | 候補者の間は不可(介護福祉士取得後は特定活動で配偶者・子を帯同可) | 3年以上の実務経験で介護福祉士国家試験→在留資格「介護」へ |
| 在留資格「介護」 | 資格者を長期に雇用 | 更新の回数に上限なし(在留期間は5年・3年・1年又は3月) | 介護福祉士の国家資格が前提 | 配偶者・子の帯同が可能 | すでに介護福祉士 |
このほか、永住者・日本人の配偶者等・定住者など身分・地位に基づく在留資格で在留する人は、就労に在留資格上の制限がなく、上記のルートによらず介護で雇用できます。常勤の介護職員として働く場合は、特定技能の人数枠の分母(日本人等の常勤介護職員)にも算入されます(数え方の詳細は介護の特定技能 人数枠と受け入れ条件)。[12]
ルートごとに、受け入れの判断に効く違いは次のとおりです。
- 特定技能1号「介護」 — 最初の受け入れで選ばれやすいルートです。介護技能評価試験・介護日本語評価試験・参照枠A2.2相当以上が要件で、介護職種の技能実習2号を良好に修了した人は試験が免除されます。在留は通算5年、家族帯同は原則できません(5年を超える就労の道筋は後述の「長期就労」)。
- 技能実習 →育成就労 — 技能実習は「育成しながら受け入れる」ルートで、入国時の技能試験は課されません(ただし介護の育成就労では、就労開始時に日本語A2.2相当以上が必要です)。技能実習は2027年(令和9年)4月1日に施行される育成就労制度へ移行し、育成就労は原則3年で特定技能1号へつなぐことが想定されています。介護分野の運用方針では、育成就労を終了するまでに求められる水準として介護育成就労評価試験(専門級)と、「日本語教育の参照枠」A2.2相当以上と介護特定技能評価試験(日本語)の両方が示され、本人意向による転籍の制限期間は2年とされています。[13]施行前ではあるものの、受け入れ人数枠や本人意向による転籍の要件を定める育成就労法施行規則は令和7年9月30日に、介護分野の上乗せ基準を定める厚生労働省告示第156号は令和8年3月31日に、それぞれ公布済みです。[14][15]2026年8月時点で残っているのは、介護分野の運用要領別冊や介護育成就労評価試験の実施要領・実施時期といった実務の細目です。制度の違いは特定技能・技能実習・育成就労の違い、育成就労の概要は育成就労とはで解説しています。
- EPA(経済連携協定) — インドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国と結んだ協定に基づき、介護福祉士の国家資格取得を前提に受け入れるルートです。候補者としての在留は原則4年で、通算3年以上の介護実務を経て国家試験を受験します。窓口は国際厚生事業団(JICWELS)に一本化された独自の受け入れ調整の枠組みです。候補者の期間中は扶養を受ける家族としての在留が認められておらず、資格を取得しEPA介護福祉士として活動する段階になると、配偶者・子について所定の「特定活動」での帯同が認められ得ます。[16]
- 在留資格「介護」 — 介護福祉士の国家資格を持つ人が就く専門職の在留資格です。在留期間の更新に回数の上限がなく、要件を満たす限り就労を続けられ、配偶者・子の帯同が認められる点が他ルートと大きく違います。介護福祉士養成施設に通う留学生が卒業後にこの資格へ移る流れも、資格者を長期に確保する入口の一つです。[17]
どのルートも一長一短で、優劣ではなく自社が何を優先するかで選びます。目安は次のとおりです。
- 早く即戦力を確保したい — 特定技能1号(とくに国内在住者や介護職種の技能実習からの移行)が向きます。ただしもっとも費用が安いルートとは言えません(下の「費用の構造もルートで違う」のとおり、払う相手と続き方が違うためです)。
- 腰を据えて育て、長く戦力化したい — EPAや、育てて介護福祉士取得を支援し在留資格「介護」へ、という道筋が向きます。
- 家庭を持つ人材に長く定着してほしい — 家族帯同が認められる在留資格「介護」を見据えた採用・育成が選択肢になります。
すでに国内にいる人材を採るか、海外から新規に呼び寄せるかという「どこから採るか」の判断軸は特定技能は国内採用と海外採用どっち?で整理しています。介護の試験と免除ルートの詳細は介護の特定技能試験、採用手続きの流れは特定技能の採用の流れ、企業側の受け入れ要件は特定技能で企業に求められる受け入れ要件をご覧ください。
在留期間・試験・家族帯同・育成就労の施行時期などの制度は変動します。とくに育成就労制度は施行に向けて詳細が示される段階のため、実際の採用計画は出入国在留管理庁・厚生労働省の最新の案内で必ず確認してください。
費用の構造もルートで違う(誰に・何を払い続けるか)
要件と並んで判断に効くのが、費用の払い方です。どのルートにも「採用時に一度かかる費用」と「受け入れている間続く費用」がありますが、払う相手も、続き方も違います。⚠️ 下の表に並べた金額は、調査主体・調査時期・「誰が払った額か」がそれぞれ異なる公表値の並置です。ルート間で足し引きして総額を比べられる数値ではありません。
| 在留資格ルート | 費用を払う相手 | 採用時にかかる費用 | 受け入れている間続く費用と、続く期間 |
|---|---|---|---|
| 特定技能1号「介護」 | 登録支援機関(支援を委託する場合)・人材紹介会社(使う場合) | 初期費用の目安=採用ルートにより約10〜100万円(人材紹介手数料、在留資格の申請にかかる費用〔書類作成・申請取次は行政書士などの専門家の領域〕、渡航費などの合計。トモハタが2026年8月時点の市場水準をもとに整理した目安で、公的な統計値ではありません) | 登録支援機関への支援委託費=1人あたり月2〜3万円程度(出入国在留管理庁が集計した介護に限らない全分野の月額平均28,386円・令和4年9月末時点に在留する人を対象とした暫定値)。特定技能1号の在留は通算5年までで、その間続きます。あわせて在留期間の更新のたびに申請手数料と、行政書士などへ依頼する場合の報酬が発生します |
| 技能実習(2027年〔令和9年〕4月1日に育成就労へ移行) | 監理団体(育成就労では監理支援機関) | 監理費の初期費用=技能実習生1人当たり平均341,402円・中央値333,800円(外国人技能実習機構が全職種の監理団体を対象に実施し631団体から回答を得た調査・令和4年1月公表・監理団体が実習実施者〔受け入れ企業〕から徴収した額)。育成就労の監理支援費は実費を超えない額に限られますが、施行前のため実額は公表されていません | 監理費の定期費用(1人当たり月額)=技能実習1号 平均30,551円・2号 平均29,096円(いずれも回答631団体)・3号 平均23,971円(同386団体)。外国人技能実習機構の調査・令和4年1月公表。技能実習は最長5年で、号が上がるにつれ平均額は下がります |
| EPA(経済連携協定) | 国際厚生事業団(JICWELS)・送り出し国・訪日後日本語研修機関 | インドネシア人・フィリピン人を、訪日前後の日本語研修を受講する候補者(訪日前研修の免除者を含む)として初めて受け入れる場合の1名当たり合計=約601,540円(インドネシア人)・約640,040円(フィリピン人・いずれも税込)=国際厚生事業団が受入れの手引き(2027年度受入れ版)に示す総額モデル。訪日前後の日本語研修がともに免除される候補者・ベトナム人は別区分です。最大の費目は訪日後日本語研修機関への一部負担金 約360,000円(税込・1人当たり) | 国際厚生事業団への滞在管理費=1名当たり年度毎20,000円(税別・国家資格取得前。初めて受け入れる場合の1名当たり合計にも1年分が含まれます)。候補者としての在留は原則4年 |
| 在留資格「介護」 | 人材紹介会社(使う場合) | 一般の中途採用と同様(人材紹介手数料など) | 制度に固有の継続費用は定められていません。ただし在留期間は5年・3年・1年又は3月(2026年8月時点)で、更新のたびに申請手数料と、行政書士などへ依頼する場合の報酬が発生します(更新の回数に上限はありません) |
表の技能実習の金額は、外国人技能実習機構の調査(令和4年1月公表・全職種の監理団体を対象・有効回答631団体)の値で、介護だけを抜き出した集計ではありません。[18]育成就労の監理支援費が実費を超えない額に限られる根拠は、育成就労法施行規則第56条です。[19]監理団体への入会費・年会費、修了までの監理費の総額、候補の監理団体の料金表の見比べ方は監理団体・監理支援機関・登録支援機関の違いで整理しています。
特定技能側の支援委託費の月額平均28,386円は、出入国在留管理庁が有識者会議の資料で公表した集計で、約9割が月30,000円以下でした。[20]初期費用の内訳(人材紹介手数料の相場を含む)・採用ルート別の初年度と3年の総額・介護分野だけを対象にした都道府県の補助制度は介護の特定技能 採用費用・相場、全分野共通の総額の考え方は特定技能の採用費用・相場で扱っています。
EPAの金額は、国際厚生事業団(JICWELS)が「EPAに基づく介護福祉士候補者受入れの手引き」(2027年度受入れ版)に示している総額モデルで、政府が定めた額ではなく同事業団が定める手数料表です。[21]上の表に載せた合計は、インドネシア人・フィリピン人を、訪日前後の日本語研修を受講する候補者(訪日前研修の免除者を含む)として初めて受け入れる場合の額です(訪日前後の日本語研修がともに免除される候補者の場合はインドネシア人 約461,540円・フィリピン人 約480,040円、ベトナム人は介護導入研修費が加わる別のケースになります)。内訳は①国際厚生事業団へ=求人申込手数料30,000円(税別)・あっせん手数料131,400円(税別・1人当たり)・滞在管理費20,000円(税別・1名当たり年度毎)②送り出し国へ=インドネシア399.5万ルピア(約42,000円)/フィリピン450米ドル(約70,400円)=いずれも手引きが「予定」として示す額(1人当たり)、これに加えてフィリピンは健康診断実施機関へ3,600ペソ(約10,100円・2025年度の実績額で2027年度は調整中)③訪日後日本語研修機関へ=日本語研修の一部負担金 約360,000円(税込・1人当たり)です。外貨建ての費目に添えた日本円の額は、手引きが2026年2月時点の為替で示した参考値です。合計は税別の費目に消費税を加えた税込の額なので、内訳(税別)を足しても一致しません。求人申込手数料は受入れ施設当たりの費用で、看護師コース・介護福祉士コースそれぞれについて支払います。同一の受入れ施設が1か国に求人登録する場合は新規の施設30,000円・すでに受け入れたことのある施設20,000円、2か国に登録する場合は割引後の額(新規42,000円・既受入れ30,000円)と区分され、3か国の区分もあります。2名以上を受け入れる場合、求人申込手数料は1施設分のみで、ほかの費目は受け入れ人数分かかります。
いま技能実習生を受け入れていて、特定技能へ移行する場合は、金額の増減より先に払う相手と費目が入れ替わることを押さえてください。監理団体へ払っていた監理費(初期費用+月額の定期費用)に代わって、支援を委託するなら登録支援機関への支援委託費が始まります(支援を自社で行う選択もあります)。介護職種の技能実習2号を良好に修了した人は前述の試験が免除されるため、受験料と対策の負担も乗りません。移行ルートで見た初年度・3年の総額の目安は介護の特定技能 採用費用・相場にあります。
つまり「特定技能と技能実習のどちらの費用が高いか」は一概には言えません。自社で比べるときは金額の大小より、受け入れが続く間ずっと払うことになる費目が何かを先に押さえてください。介護に限らない制度全体としての費用構造の違い(払う窓口・賃金水準の扱い)は特定技能と技能実習の違いで整理しています。
介護で特定技能を使うメリット・デメリット
4つのルートの中で特定技能を選ぶかどうかは、次の利点と注意点を並べると判断しやすくなります。
メリット
- 人員配置基準にすぐ算入できる — 介護保険の人員配置基準には、特定技能外国人は就労開始から算入できます。「いつから戦力として数えられるか」で有利です(在留資格別の算入時期は介護の特定技能 人数枠と受け入れ条件)。
- 受け入れ可能人数を自社の職員数から見積もれる — 上限は前述のとおり事業所単位の常勤介護職員数なので、募集を始める前に上限が確定します。
- 夜勤に固有の制限がない — 介護職種の技能実習では技能実習生だけの単独夜勤を行わないことが求められますが、特定技能1号にはこうした夜勤固有の制限は設けられていません(就労開始からの体制づくりを含めた整理は介護の特定技能 人数枠と受け入れ条件)。
デメリット・注意点
- 転職の可能性がある — 特定技能は同一の業務区分内での転職が制度上認められています。待遇や支援への不満は転職につながるため、採用後の定着支援が重要です(転職のしやすさの実際は国内採用と海外採用どっち?、定着の進め方は特定技能外国人の定着支援)。
- 訪問系サービスは条件つき — 上の「訪問介護(訪問系サービス)への従事」のとおり、本人要件・事業者の遵守事項・届出が必要です(詳細は訪問介護の特定技能解禁)。
- 在留は通算5年まで・特定技能2号はない — 5年を超える就労の道筋は下の「長期就労」で解説します。
受け入れた法人が実際にどう運用しているかは、国際厚生事業団(JICWELS)が厚生労働省の補助事業として公開している「介護分野における特定技能受入れ事例集」で、雇用契約・支援内容・受け入れた効果が法人ごとのインタビューとして読めます。[22]
受け入れに向けて準備する書類と期間(介護)
在留資格「特定技能」の申請で必要になる書類は、大きく3系統に分かれます。介護では、これに分野固有の書類が加わります。
| 系統 | 主な内容 | 介護での補足 |
|---|---|---|
| ① 申請人(採用する外国人)に関する書類 | 在留資格認定証明書交付申請書、写真、旅券・在留カードの写しなど | 介護技能評価試験・介護日本語評価試験の合格、または介護職種の技能実習2号修了を示す資料 |
| ② 受入れ機関(企業)に関する書類 | 会社の登記・財務に関する書類、雇用契約書・雇用条件書、支援計画に関する書類など | 受入れ機関自体が満たす基準と支援体制の基準は特定技能で企業に求められる受け入れ要件で確認 |
| ③ 分野固有の書類(介護) | 分野別に求められる書類 | 介護分野特定技能協議会の入会証明書(構成員であること)など |
書類は採用ルート(海外から呼び寄せるか、国内在住者を採るか)や、その年度に同じ企業で既に受け入れ実績があるかによって一部が省略されることもあります。実際の提出書類の一覧は出入国在留管理庁の確認表で示されています。[23]
申請書類の作成や、地方出入国在留管理局への申請取次は行政書士(申請取次行政書士)の領域です。登録支援機関の業務は支援計画の策定・実施であり、書類作成・申請取次を任せられるものではありません。必要に応じて行政書士などの専門家と連携して進めます。
受け入れが決まってから働き始めるまでの目安
手続きにかかる期間は、出入国在留管理庁と厚生労働省が公表している数値で見当をつけられます。
| 手続き | 公表されている所要 |
|---|---|
| ① 介護分野の特定技能協議会への入会 | 事務局窓口での確認完了後、通常2週間程度で入会証明書が発行される(厚生労働省) |
| ② 在留資格認定証明書の交付(海外から呼び寄せる場合) | 特定技能1号の平均処理日数68.6日(令和8年5月許可分・出入国在留管理庁) |
| ③ 在留資格変更の許可(国内在住者を採る場合) | 特定技能1号の平均処理日数64.7日=処分の告知まで。審査終了までは44.9日(令和8年5月許可分・出入国在留管理庁) |
表の②と③はどちらか一方です(海外から呼び寄せるなら②、国内在住者を採るなら③)。実際の見込みは「協議会の約2週間+②または③のどちらか+採用ルートごとの準備期間(試験の合格・人材紹介・渡航の手続きなど)」という積み方になります。それぞれ別の手続きなので単純に合計はできませんが、並べてみると数か月単位を見込んでおく必要があるとわかります。
処理期間は申請の内容や時期で変わり、追加資料の提出を求められた場合はその提出待ちの日数も含まれた数値です(就労資格は4月の就職時期に向けて審査期間が長期化する傾向があると、公表資料にも注記されています)。なお特定技能1号の数値は、外食業分野の受入れ上限の運用に基づく措置により、外食業分野に係る申請を除外して算出されたものです。海外から呼び寄せる場合と国内在住者を採る場合で手順そのものが違う点は特定技能の採用の流れで解説しています。[24]
登録支援機関の活用
登録支援機関に委託できるのは、支援計画の策定と義務的支援の実施です(義務的支援の中身は特定技能の義務的支援10項目。自社支援と委託の比較は自社支援か登録支援機関への委託か)。生活支援を自社だけで担うのが難しい場合の受け皿になりますが、協議会への入会や訪問系サービスの遵守事項は、委託しても自社の名義と責任に残ります。委託しても自社に残る手続きと、契約前に確認することは特定技能 介護の登録支援機関の選び方で詳しく解説しています。
長期就労:介護福祉士と在留資格「介護」
特定技能1号は在留期間が通算で最長5年です。介護には特定技能2号がないため、5年を超えて長く働いてもらうには別の道筋が必要になります。介護では、介護福祉士の国家資格を取得すると、在留資格「介護」へ移行でき、在留期間の更新に上限なく就労を続けられます。長く活躍してもらう前提で、資格取得の支援を計画に入れると定着につながります。受け入れ後の定着支援の進め方や、採用後に企業が行う支援の全体像は特定技能外国人の定着支援で解説しています。
ただし国家試験は簡単ではありません。第38回(令和8年1月実施)の合格率は全体で70.1%(受験者78,469人・合格者54,987人)でしたが、EPAに基づく外国人介護福祉士候補者の合格者は380名(31.8%)でした(特定技能1号の受験者に絞った合格率は、この公表資料では示されていません)。[25]学習支援は5年目の直前ではなく早い段階から計画に入れるのが現実的です。
5年目の試験でパート合格した場合、最長1年の在留期間延長があります
「あと一歩で不合格」の人がその年で帰国になるとは限りません。第38回(令和8年実施)の介護福祉士国家試験から、5年目(通算在留期間に達する前の最終年度)の国家試験を全パート受験し、①1パート以上合格し、②総得点に対する合格基準点の8割以上を得点しているなどの要件を満たす1号特定技能外国人について、最長1年間の在留期間延長が認められます(令和8年1月21日 社援発0121第10号・令和8年3月30日一部改正)。厚生労働省の資料でも、この要件を満たした場合は通算で最長6年間と示されています。
要件は本人側だけではありません。翌年度の国家試験を受験する誓約に加えて、特定技能所属機関が学習計画(翌年度の合格を目指す支援計画と、国家試験対策の講座・研修の受講予定を含む)を本人とともに作成し、厚生労働省へ提出することが求められます。書類は郵送のみの受付で、申請期限も年度ごとに区切られています(令和8年〔第38回〕は合格基準点64点の8割=52点以上が基準で、期限は令和8年4月30日消印有効でした)。受験する年に慌てて用意できる書類ではないため、5年目に入る前に学習支援の体制を決めておくのが実務上の要点です。[26]
まとめ
介護で特定技能の外国人を受け入れられるかは、①自社の事業所が対象になる施設か②本人が試験等の要件を満たすか③事業所単位の人数上限と協議会への加入で決まります。自社で進めるときの確認事項は次のとおりです。
- 自社の事業所が、厚生労働省の対象施設の一覧に載っているか(条件つきの区分に当たらないか)→ 上の「自社の事業所は受け入れの対象か」
- 常勤介護職員の数から、受け入れ上限を事業所ごとに数えたか(技能実習生・EPA候補者・留学生は分母に入りません)→ 介護の特定技能 人数枠と受け入れ条件
- 候補者の試験と免除ルートを確認したか(介護職種の技能実習2号修了者は免除)→ 介護の特定技能試験
- 協議会の入会と在留申請にかかる期間を採用スケジュールに織り込んだか → 上の「受け入れが決まってから働き始めるまでの目安」
- 支援体制を自社で持つか、登録支援機関へ委託するかを決めたか → 特定技能 介護の登録支援機関の選び方
介護に特定技能2号はないため、長期就労は介護福祉士資格による在留資格「介護」への移行が基本の道筋になります。
制度の全体像は特定技能採用の完全ガイド、対象分野の一覧は特定技能の対象分野一覧、よくある失敗は特定技能採用でよくある失敗と注意点をご覧ください。
「自社の事業所で介護の特定技能外国人を何人受け入れられるか」「どのルートが合うか」を相談したい場合は、条件に合う登録支援機関・人材紹介会社を無料でご紹介します(提携先のサービスをご紹介しています)。
よくあるご質問
- 介護で特定技能の外国人を受け入れるには何が必要ですか?
- 受け入れる外国人が、介護技能評価試験と介護日本語評価試験に合格し、「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上の日本語力(国際交流基金日本語基礎テスト〔JFT-Basic〕・日本語能力試験〔JLPT〕で確認)を持つことが基本です。介護職種の技能実習2号を良好に修了した人は試験が免除されます。企業側は、受け入れ要件を満たし、介護分野の特定技能協議会の構成員になる必要があります。
- 介護で受け入れられる特定技能外国人の人数に制限はありますか?
- あります。事業所単位で、受け入れられる1号特定技能外国人の数は、日本人等の常勤介護職員の総数を上限とすると定められています。
- 介護分野に特定技能2号はありますか?
- ありません。介護分野には専門的・技術的分野の在留資格『介護』があるため、特定技能2号の対象分野とはされていません。長期就労を目指す場合は、介護福祉士の資格を取得して在留資格『介護』へ移行する道があります。
- 介護の特定技能外国人は訪問介護に従事できますか?
- 2025年4月21日から、一定の要件のもとで訪問系サービス(訪問介護など)への従事が認められました。本人が介護職員初任者研修課程等を修了し実務経験が原則1年以上あること、事業者が研修・同行訓練・キャリアアップ計画などの遵守事項を満たすこと、巡回訪問等実施機関へ届け出て適合確認書の交付を受けることが条件です。なお訪問入浴介護・介護予防訪問入浴介護は、従事自体は認められますが、複数人でのサービス提供が必要なサービスであることや、必ずしも初任者研修課程の修了などが求められていないことから、この本人要件・遵守事項・届出の対象外とされ、代わりに受入事業者が適切な指導体制等を確保したうえで職場内で入浴等の研修を受講させることとされています。
- 外国人を介護で受け入れられる在留資格ルートにはどんな種類がありますか?
- 主に、特定技能1号「介護」、技能実習(2027年4月1日施行の育成就労へ移行)、EPA(経済連携協定・インドネシア/フィリピン/ベトナムの3か国)、介護福祉士の資格者が就く在留資格「介護」の4つです。早く即戦力を確保したいなら特定技能、資格取得を前提に長く働いてもらいたいならEPAや在留資格「介護」が選ばれやすい傾向があります。在留期間・試験・家族帯同・介護福祉士への道筋が異なるため、自社の狙いに合わせて選びます。
- 技能実習と特定技能では、受け入れ費用はどちらがかかりますか?
- 一概には言えません。払う相手と費用の続き方が違うためです。技能実習では監理団体に監理費(受け入れ時の初期費用と、実習期間中の月額の定期費用)を払い、特定技能では支援を委託する場合に登録支援機関へ月額の支援委託費を払います。公表値の出どころ(技能実習は外国人技能実習機構の調査、特定技能は出入国在留管理庁の集計)も違うため、足し引きして総額を比べることはできません。各ルートの実額と条件は本文の比較表で並べています。
- 介護の特定技能協議会にはいつまでに加入すればよいですか?
- 令和6年(2024年)6月15日以降の在留諸申請からは、地方出入国在留管理局での在留諸申請を行う前に「介護分野における特定技能協議会」の構成員となり、受入事業所情報が登録された入会証明書の発行を受けることが必要です。なお「受け入れた日から4か月以内」という期限は、現在は加入後に行う協議会申請システムへの外国人情報の登録の期限です。
- 介護の特定技能外国人にはどのくらいの給与を払う必要がありますか?
- 日本人と同等以上の報酬が前提です。介護職員(月給・常勤の者)の平均給与額は月額約33.8万円(令和6年9月・介護職員等処遇改善加算Ⅰ〜Ⅴを取得している事業所ベース。基本給〔月額〕+手当+一時金〔4〜9月支給金額の1/6〕)で、これが待遇を考えるうえでの目安になります。介護職員等処遇改善加算は介護分野の1号特定技能外国人も対象で、加算による賃金改善を外国人職員の待遇にも反映できます。特定技能は安く雇うための制度ではなく、相場並みの待遇で不足する人手を確保する制度です。
- 介護で特定技能の外国人を受け入れるとき、どんな書類が必要ですか?
- 在留資格「特定技能」の申請書類は、大きく①申請人(外国人本人)に関する書類②受入れ機関(企業)に関する書類③分野固有の書類(介護では特定技能協議会の入会証明書など)の3系統に分かれます。ただし、申請書類の作成や地方出入国在留管理局への申請取次は行政書士(申請取次行政書士)の領域で、登録支援機関に任せられるものではありません。必要に応じて行政書士などの専門家と連携して進めます。
出典・参考(一次情報)
- 特定技能(介護分野)/特定技能(介護分野)の業務範囲(出入国在留管理庁)
- 介護分野の特定技能外国人を受け入れる対象施設(※1〜※3の条件つき区分を含む)(厚生労働省)
- 介護分野の分野別運用方針(令和8年1月23日閣議決定・別紙1)=分野全体160,700人/1号特定技能126,900人/育成就労33,800人(出入国在留管理庁)
- 特定技能1号の受入れ見込数及び在留者数について(令和8年3月末時点・速報値)=介護74,745人・充足率58.9%(出入国在留管理庁)
- 介護分野における特定技能外国人の受入れについて(協議会の入会手続き・施行時期)(厚生労働省)
- 外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について(厚生労働省)
- 外国人介護人材の訪問系サービス従事における留意点について(令和7年3月31日 社援発0331第40号・老発0331第12号)=対象サービスと訪問入浴介護等の取扱い(厚生労働省)
- 令和6年度介護従事者処遇状況等調査 結果の概要(介護職員〔月給・常勤の者〕の平均給与額・平均基本給等)(厚生労働省)
- 一般職業紹介状況(令和8年5月分)参考統計表6=職業別の有効求人倍率(全国計・常用〔パート含む〕)(厚生労働省)
- 介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第2版・令和7年3月17日)問2-3=特定技能外国人等の対象範囲(厚生労働省)
- 外国人介護人材の受入れについて(EPA・在留資格「介護」・技能実習・特定技能・育成就労)(厚生労働省)
- 外国人介護人材受入れの仕組み=EPAの3か国・在留資格「介護」の家族(配偶者・子)帯同と更新の回数制限なし(厚生労働省)
- 介護分野における育成就労に係る制度の運用に関する方針(厚生労働省)
- 育成就労制度の関係省令等について(育成就労法施行規則=令和7年9月30日公布・法務省・厚生労働省令第4号/受入れ人数枠・本人意向転籍の要件)(出入国在留管理庁・厚生労働省)
- 介護分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準等(育成就労・令和8年3月31日厚生労働省告示第156号)(厚生労働省)
- 在留資格「特定活動」(EPA看護師・EPA介護福祉士の家族)(出入国在留管理庁)
- 在留資格「介護」(出入国在留管理庁)
- 監理団体が実習実施者から徴収する監理費等に関するアンケート調査の結果について(令和4年1月24日)(外国人技能実習機構)
- 育成就労制度運用要領 第5章 監理支援機関の許可等/育成就労制度運用要領 第5章 第5節 監理支援費(法第28条・規則第56条)(出入国在留管理庁)
- 特定技能制度の現状について(登録支援機関への支援委託料・マッチング媒体への支払額・支援費用の本人負担禁止・有識者会議 参考資料)(出入国在留管理庁)
- 2027年度受入れ版 EPAに基づく介護福祉士候補者受入れの手引き(国際厚生事業団へのお支払い)(国際厚生事業団(JICWELS))
- 介護分野における特定技能受入れ事例集(厚生労働省補助事業「外国人介護人材相談支援事業」)(国際厚生事業団(JICWELS))
- 在留資格「特定技能」申請に必要な書類(出入国在留管理庁)
- 在留審査処理期間(日数)=令和8年5月許可分・特定技能1号の在留資格認定証明書交付68.6日/在留資格変更64.7日(出入国在留管理庁)
- 第38回介護福祉士国家試験合格発表について(全体の合格率70.1%・EPA介護福祉士候補者の合格者380名〔31.8%〕)(厚生労働省)
- 介護福祉士国家試験のパート合格(合格パートの受験免除)による介護分野で「特定技能1号」の在留資格をもって本邦に在留する外国人の通算在留期間の延長に関する措置について(厚生労働省)