特定技能 介護の登録支援機関の選び方|協議会と訪問系で自社に残る手続き
目次
介護で特定技能外国人を受け入れるとき、生活支援まで自社だけで担うのは負担が大きく、多くの施設・事業所が登録支援機関へ支援を委託します。ただ介護には、介護分野特定技能協議会への入会や、訪問系サービスに従事させる場合の遵守事項といった、受入事業者を主語にした手続きが重なります。ここで起きやすいのが「委託したのに自社の担当者の作業が減らない」「協議会の入会証明書の期限に気づかず在留申請が止まった」というつまずきです。
結論を先に言うと、介護で委託先を選ぶときに最初に確かめるのは料金の安さではなく、協議会・訪問系・キャリア支援の3つについて、どこまでを委託先が担い、どこからが自社の名義と責任で残るのかです。協議会は登録支援機関を入会の対象としておらず、訪問系の遵守事項は通知が一貫して受入事業者に求めているもので、介護福祉士へのキャリア支援は義務的支援の外にあるためです。
この記事の要点
- 協議会の入会は自社名義でしか行えない — 介護分野の協議会は登録支援機関を入会対象としていません。代理申請の仕組みはあるので、入力を頼むことはできます。
- 入会証明書には期限と事業所単位の縛りがある — 初回1年・更新後4年で、登録のない事業所での受け入れ(事業所異動を含む)は事前の事業所登録が必要です。
- 訪問系の遵守事項は受入事業者に求められている — 委託の可否は制度でなく契約で決まるため、どこまで手伝うのかを先に明示してもらいます。
- 資格取得支援は義務的支援の外 — 介護福祉士の取得支援は任意的支援です。長期就労を狙うなら契約で個別に決めます。
本記事の月額の支援委託費(1人あたり月2〜3万円程度が目安)には、出入国在留管理庁の公的な集計値があり、本文で出典つきで示しています。協議会の手続き・費用は、介護分野における特定技能協議会事務局(公益社団法人国際厚生事業団)の公表資料に基づきます。委託費以外の採用費用(人材紹介手数料・渡航費など)は本記事では扱わず、介護の特定技能 採用費用・相場で解説しています。正確な金額は見積もりで確認してください。
介護分野の協議会は、登録支援機関を入会対象にしていない
介護分野特定技能協議会への入会は、登録支援機関に代わってもらうことができません。協議会事務局のQ&Aが、入会対象を受入機関に限ると明記しているためです。
なお、介護分野における特定技能協議会は、登録支援機関は入会の対象としていません。入会対象は受入機関のみです。
そのうえで、申請の実務については代理の仕組みが用意されています。同じQ&Aは、必ず登録支援機関へ申請を委託する必要はなく、原則として受入機関の担当者が申請を行い、代理申請を委託したい場合にのみ登録支援機関が代理申請できる仕組みが設けられている、としています。代理申請用のアカウントは受入機関の側で作成し、登録支援機関のアカウントで閲覧・編集できる情報は、受入機関が権限を設定した外国人の情報に限られます。[1]
つまり介護の協議会は、入力作業は頼めるが、構成員としての名義と責任は自社に残るという形です。委託先の提案を読むときは、「協議会対応」と書かれた項目が代理入力を指すのか、入会そのものを代わりに行うという意味で書かれているのかを確かめてください。後者はそもそも制度上できません。同じ理由で、在留資格の申請書類の作成や申請取次も行政書士などの専門家の領域です。登録支援機関に「申請まで任せられる」と考えず、必要に応じて行政書士などの専門家と連携して進めます。
なお、費用については協議会の公式案内が「入会費、年会費、月会費は一切かかりません」としています。建設分野のJAC受入負担金のような分野固有の継続負担金も介護にはないため、見積もりに「協議会費用」という費目が立っている場合は、何に対する費用なのかを確認する価値があります。
所要時間の見積もりも公表されています。事務局のQ&Aによれば、通常は入会申請後、事務局窓口と厚生労働省の確認を経て2〜3週間で入会証明書が発行されます(申請内容によっては差戻しがあり、その対応が済むまで確認完了にならないほか、祝祭日を挟む週は通常より長くかかる場合があるとされています)。入会証明書がないと在留諸申請が許可されないため、採用スケジュールにはこの2〜3週間+差戻しの余裕を最初から組み込んでおきます。
介護で必要な受け入れの前提(人数枠・協議会加入・業務範囲)は特定技能 介護の受け入れ、委託できる業務の範囲そのものは登録支援機関とは、義務として行う支援の中身は特定技能の義務的支援10項目で解説しています。
入会証明書は事業所ごと・期限つきで管理する
協議会の入会証明書は、在留諸申請の前に手元にある必要があり、有効期間と事業所単位の縛りがあります。ここを取り違えると、採用そのものは順調でも在留手続きの段階で止まります。
協議会事務局の資料によれば、令和6年6月15日以降の地方出入国在留管理局への在留諸申請から、受入事業所情報が登録された入会証明書の提出が求められ、入会証明書がない場合は在留諸申請を行っても許可されないとされています。[1]押さえる点は3つです。
| 入会証明書について押さえる点 | 内容 |
|---|---|
| 有効期間 | 初回発行時は1年間、更新後は4年間。有効期限の4か月前から協議会申請システム上で更新手続きが可能 |
| 事業所単位の登録 | 入会証明書に登録のない事業所(または施設種別)で受け入れる場合は、既に就労中の人の事業所異動を含めて、事前に受入事業所の登録申請と入会証明書の発行が必要 |
| 受け入れ後の情報登録 | 在留諸申請を行い特定技能外国人を受け入れたら、4か月以内に当該外国人の情報を協議会へ登録。提出書類は雇用条件書(参考様式第1-6号)、支援計画書(参考様式第1-17号)、在留カードの写し |
この表から出てくる実務上の含意は2つあります。
1つ目は、複数の事業所を運営している法人ほど、委託先と事業所異動の情報共有ルールを決めておく必要があるということです。人員配置の都合で就労中の人を別の事業所へ動かす場面は珍しくありませんが、その事業所が入会証明書に登録されていなければ、動かす前に事業所登録が要ります。
2つ目は、受け入れ後4か月以内の情報登録で提出する支援計画書(参考様式第1-17号)は、支援を委託していれば委託先が作成に関わる書類だという点です。協議会への登録は自社が行い、その材料は委託先から受け取る形になるため、いつ・どの様式で手元に届くのかを契約時に決めておくと、期限に追われずに済みます。
なお、協議会のほかにも、入管への定期届出(年1回・支援の実施状況を受入企業の届出に含めて提出する建て付け)が自社の名義に残ります。届出の仕組みと「委託先からの報告頻度を契約前に決める」観点は登録支援機関の選び方で解説しています。
訪問系サービスを行うなら、委託の範囲を先に決める
訪問系サービスに従事させる場合、事業者に求められる遵守事項は登録支援機関へ丸ごと預けられる性質のものではありません。厚生労働省の通知が、研修の実施・同行訪問によるOJT・キャリアアップ計画の共同策定・ハラスメント対策・緊急時の体制整備といった事項を、一貫して受入事業者に求められるものとして書いているためです。
ここで正確を期すと、通知に「登録支援機関に委託できる/できない」という区分の記載はありません。「委託が禁じられている」わけではなく、制度がその線引きを定めていない、というのが実際のところです。だからこそ実務では、どこまで手伝ってもらえるかが契約でしか決まらないことになります。同行訪問の記録づくり、キャリアアップ計画の様式準備、巡回訪問等実施機関へ提出する書類の下準備といった作業について、担当範囲を契約前に文章で確認しておくのが安全です。
訪問系サービスの本人要件(初任者研修課程等の修了と原則1年以上の実務経験、その例外)、5つの遵守事項の中身、巡回訪問等実施機関への届出と適合確認、利用者・家族への書面説明までの手順は訪問介護の特定技能解禁で詳しく解説しています。
介護福祉士へのキャリア支援は義務的支援の外にある
介護福祉士の資格取得支援や、在留資格「介護」への移行の後押しは、登録支援機関の義務的支援には含まれません。出入国在留管理庁が示す義務的支援10項目は、事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保・生活に必要な契約支援、生活オリエンテーション、公的手続等への同行、日本語学習の機会の提供、相談・苦情への対応、日本人との交流促進、転職支援(人員整理等の場合)、定期的な面談・行政機関への通報であり、資格取得やキャリアアップの支援はここに入っていないためです。[2]
これは介護で無視できない差になります。介護分野には特定技能2号がなく、長く働いてもらう道筋は介護福祉士の資格を取得して在留資格「介護」へ移行するルートが中心だからです。「長期就労まで見据えて支援します」という提案を受けたら、それが任意的支援として契約に書かれているのかを確認する——ここが介護特有の確認ポイントになります。義務的支援の範囲内だと理解したまま契約すると、実際には何も約束されていないという食い違いが起こり得ます。
契約に書く内容は、受験資格から逆算すると具体になります。介護福祉士国家試験の実務経験ルートは、社会福祉振興・試験センターの案内で従業期間3年(1,095日)以上かつ従事日数540日以上の実務経験に加えて、実務者研修の修了が必要とされています。[3]従事日数は実際に介護等の業務に従事した日数(出勤日数)で、休暇・欠勤・研修などで従事しなかった日は含まれません(1日の勤務時間は問いません)。特定技能1号の在留は通算5年なので、3年の実務経験を積み、その間に実務者研修を修了し、4〜5年目に受験するという時間割が基本形になります。委託先と任意的支援を取り決めるなら、「実務者研修の受講先の案内・スケジュール調整」「受験手続きの情報提供」「学習時間に配慮したシフトの相談」のように、この時間割のどこを支えるのかまで具体化して書くと、絵に描いた餅になりません。
長期就労のルートそのもの(介護福祉士の取得と在留資格「介護」)は特定技能 介護の受け入れ、義務的支援と任意的支援の違いは特定技能の義務的支援10項目で整理しています。
介護で委託先に確認する5つのこと
業種を問わない比較の観点は全業種版に譲り、ここでは介護だけに効く5つに絞ります。比較の進め方そのものは登録支援機関の選び方、契約書と見積もりで見る項目は契約前チェックリストが一覧です。
- 協議会まわりの担当範囲 — 代理申請を頼むのか自社で申請するのか。入会証明書の更新時期(初回1年・更新後4年)と事業所追加のたびの申請を、どちらが管理するのか。
- 受け入れ後4か月以内の情報登録に必要な書類の受け渡し — 支援計画書(参考様式第1-17号)をいつ・どの形式で渡してもらえるのか。
- 訪問系サービスへの対応 — 訪問系を行う(または今後行う)なら、研修・同行訪問・キャリアアップ計画・提出書類の下準備のどこを手伝うのかを文章で確認します。
- 資格取得支援を契約に書けるか — 介護福祉士の受験支援・学習フォローを行う場合、任意的支援として契約書に明記できるか。
- 夜勤・利用者対応など介護現場の相談への慣れ — 夜勤帯の連絡体制、利用者・家族とのトラブル時の対応、母国語で相談できる時間帯(夜勤を任せるルール自体の整理は介護の人数枠と受け入れ条件)。
補足として、支援の運用要領に「介護分野向けの支援基準」という独立した規定はありません。介護分野の運用要領で上乗せされているのは業務区分・訪問系サービスの事業者要件・人数枠の算定基準・協議会の構成員要件といった受け入れ側の条件で、義務的支援10項目の中身に介護固有の上乗せはありません。つまり「介護に強い」は制度上の資格区分ではなく、実務経験の差でしかないということです。実績を尋ねるときは「介護の実績がありますか」ではなく、自社と同じ施設形態で直近1年に何名を支援したか、協議会や訪問系の実務で担当した範囲はどこまでか、と具体的に聞くほうが差が出ます。
費用の水準そのものは、出入国在留管理庁の集計(令和4年9月末時点・暫定値)で支援委託料(月額)の平均が28,386円、全体の約9割が月30,000円以下でした。[4]集計時点はやや古いものの、本記事の確認日(2026年7月27日)時点で、これより新しい公的な集計は確認できていません。委託料の内訳の見方(全分野共通)は登録支援機関の費用相場、介護で採用にかかる総額の内訳は介護の特定技能 採用費用・相場で詳しく整理しています。人材の紹介から支援委託まで一貫して頼めるかは、窓口を減らす観点で確認する価値があります(人材紹介手数料の相場)。
なお本記事では、コンシェルジュ型の方針として個別の機関名のリストは載せていません。介護に対応する候補を自分で洗い出したい場合は、出入国在留管理庁の登録簿から都道府県×対応言語で絞り込む手順を登録支援機関の選び方で解説しています。すでに委託していて見直したい場合の手順は登録支援機関の変更(乗り換え)をご覧ください。
自社支援という選択肢
支援は必ず委託しなければならないわけではなく、要件を満たせば自社で行うこともできます。介護は協議会の入会・入会証明書の管理・訪問系の遵守事項がもともと自社の名義と責任に残るため、「委託しているのに自社の作業が減らない」と感じている事業所は、自社支援に切り替えたときの負担増が想像より小さいこともあります。自社支援に必要な体制(支援責任者・支援担当者の選任や欠格事由)と切り替えの手順は自社支援か登録支援機関への委託かで比較しています。採用後の定着の工夫は特定技能外国人の定着支援も参考にしてください。
まとめ
介護で登録支援機関を選ぶ判断は、自社の名義と責任に残るものを先に確定させることから始まります。協議会への入会は登録支援機関が対象外で、入会証明書は初回1年・更新後4年の期限と事業所単位の縛りがあり、訪問系サービスの遵守事項は受入事業者に求められるものです。介護福祉士へのキャリア支援は義務的支援の外にあるため、必要なら契約に書きます。
そのうえで費用は、支援委託料の公的な集計(月額平均28,386円・約9割が月30,000円以下)を目安に、含まれる支援の範囲をそろえて比べます。協議会には入会費・年会費がかからないため、「協議会費用」という費目が出てきたら中身を確認してください。
介護の受け入れ全体像は特定技能 介護の受け入れ、制度の全体像は特定技能採用の完全ガイドをご覧ください。
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よくあるご質問
- 介護分野の特定技能協議会への入会は、登録支援機関に任せられますか?
- 入会そのものは任せられません。介護分野における特定技能協議会は、登録支援機関を入会の対象としておらず、入会対象は受入機関のみとされています。ただし申請手続きについては、受入機関が登録支援機関の代理申請用アカウントを作成することで代理申請ができる仕組みが設けられています(委託は任意で、原則は受入機関の担当者が申請します)。つまり入力作業は頼めても、構成員としての名義と責任は自社に残ります。
- 介護分野の特定技能協議会に入会費や年会費はかかりますか?
- かかりません。介護分野における特定技能協議会事務局(公益社団法人国際厚生事業団)のQ&Aは「入会費、年会費などの費用はかかりません」としています。建設分野のJAC受入負担金のような分野固有の継続負担金も介護にはありません。見積もりに「協議会費用」といった費目がある場合は、何を指しているのかを確認してください。
- 協議会の入会証明書には期限がありますか?事業所ごとに必要ですか?
- あります。入会証明書には有効期間が設けられ、初回発行時は1年間、更新後は4年間で、有効期限の4か月前から協議会申請システム上で更新手続きができます。また、入会証明書に登録のない事業所(または施設種別)で特定技能外国人を受け入れる場合は、既に就労中の人の事業所異動を含めて、事前に受入事業所の登録を申請し、事業所名が記載された入会証明書の発行を受ける必要があります。入会証明書がないと地方出入国在留管理局への在留諸申請が許可されないため、複数の事業所を運営している場合は特に注意が必要です。
- 介護で登録支援機関に委託する費用はいくらが目安ですか?
- 支援委託費は1人あたり月2〜3万円程度が一つの目安です。出入国在留管理庁の集計(令和4年9月末時点・暫定値)では支援委託料(月額)の平均は28,386円で、全体の約9割が月30,000円以下でした。国が定めた相場や上限はなく、含まれる支援の範囲によって金額が変わるため、正確な金額は見積もりで確認してください。
- 介護福祉士の資格取得支援は、登録支援機関の義務的支援に含まれますか?
- 含まれません。出入国在留管理庁が示す義務的支援10項目に資格取得支援やキャリアアップ支援の項目はなく、介護福祉士の取得支援や在留資格「介護」への移行の後押しは任意的支援の位置づけです。長期就労を前提に採用するのであれば、資格取得支援をどこまで行うかを委託契約で個別に決める必要があります。
出典・参考(一次情報)
- 協議会手続きに関するQ&A(2024年9月30日 Version 1.0)(介護分野における特定技能協議会事務局(公益社団法人国際厚生事業団))
- 1号特定技能外国人支援・登録支援機関について(出入国在留管理庁)
- 介護福祉士国家試験 受験資格(資格取得ルート図)(公益財団法人社会福祉振興・試験センター)
- 特定技能制度の現状について(登録支援機関への支援委託料の支払額・有識者会議 参考資料)(出入国在留管理庁)