特定技能は自社支援できる?要件・体制と委託からの切り替え方
目次
特定技能1号で外国人材を受け入れる企業には、生活や仕事の支援を実施する義務があります。「自社だけで支援体制を作れるのか」と迷う採用担当者に向けて、結論を先に言うと——支援責任者・支援担当者を選任し、中立性や理解できる言語での対応など、出入国在留管理庁が定める支援体制の基準を満たせば、特定技能の支援は自社で行えます。このページで、自社支援に必要な要件と、体制を整えるのが難しい場合の委託という選択肢、そして委託から自社支援へ切り替える手順までを整理します。
この記事の要点
- 自社支援は要件を満たせば可能 — 支援責任者・支援担当者は「過去2年間の受入れ実績」または「同期間の生活相談業務の経験」のいずれかに該当する人から選任します。常勤性は必須ではなく、中立性・欠格事由の基準も満たす必要があります。
- 体制が難しい場合は、委託で基準を満たしたとみなされる — 支援計画の全部を登録支援機関に委託すれば、企業は支援体制の基準を満たすものとみなされます。
- 委託から自社支援への切り替えは、届出2本を14日以内に — 支援体制の基準を満たせることを確認したうえで、支援委託契約に係る届出と支援計画変更に係る届出を、それぞれ事由が生じた日から14日以内に提出します(受入れ企業自身の義務)。
支援体制の要件は入管法令で定められ、改正されることがあります。本記事は概要です。自社支援を検討する場合は、最新の運用要領で体制の基準を必ず確認してください。
自社支援とは(委託に頼らない選択)
特定技能1号の支援(義務的支援10項目)は、受け入れ企業が自社で実施することも、登録支援機関に委託することもできます。自社支援とは、このうち登録支援機関に委託せず、企業自身が支援計画に沿って支援を実施する形です。[1]
支援は全部を自社で行うことも、一部だけを自社で行い残りを委託する「一部委託」にすることもできます。結論としては、出入国在留管理庁が定める支援体制の基準(後述)を満たせば、自社支援は制度上可能です。基準を満たすのが難しい場合の現実的な選択肢が、登録支援機関への委託です。
自社支援に必要な体制(支援体制の基準)
自社で支援する場合、受け入れ企業は出入国在留管理庁が定める「支援体制に関する基準」を満たす必要があります。基準は大きく4つの観点に分かれます。
1. 実績・経験の要件(3つのルートのいずれかに該当)
支援責任者・支援担当者を選任するには、企業(または選任される人)が次のいずれかに該当する必要があります。
- 受け入れ実績ルート — 過去2年間に中長期在留者の受入れまたは管理を適正に行った実績がある企業で、その役員・職員から支援責任者・支援担当者を選任する。
- 相談業務経験ルート — 役員・職員のうち、過去2年間に中長期在留者の生活相談業務に従事した経験がある人を、支援責任者・支援担当者として選任する。
- 個別認定ルート — 上記2つと同程度に支援業務を適正に実施できると、出入国在留管理庁長官に個別に認められた人を選任する。
初めて外国人材を受け入れる企業(中長期在留者の受入れ実績がなく、相談業務の経験者もいない企業)は、このいずれのルートも満たしにくいのが実情です。これが「初めての受け入れは委託が現実的」と言われる主な理由になっています。
どのルートを選ぶかで、在留資格の申請時に入管へ出す立証書類も変わります(受け入れ実績ルート=参考様式第1-11-2号、相談業務経験ルート=第1-11-3号、個別認定ルート=説明書+立証資料。いずれも支援責任者・支援担当者の履歴書とセット)。書類の一覧は特定技能の申請に必要な書類一覧で整理しています。
2. 支援責任者・支援担当者の選任——常勤性・兼任・中立性
支援を統括する支援責任者と、実際に支援を行う支援担当者を、事業所ごとに1名以上選任します。
- 常勤性は必須ではありません — 支援責任者は常勤であることを問われません。支援担当者も常勤が法令上の要件ではありませんが、運用要領は常勤であることが望ましいとしています。非常勤の体制でも、実績・経験の要件と中立性・欠格事由の基準を満たせば選任できます。
- 支援責任者は支援担当者を兼任できます — ただし兼任する場合も、支援責任者・支援担当者の双方の基準(実績・経験の要件、中立性、欠格事由)に適合している必要があります。
- 中立性が求められます — 対象の外国人材を監督する立場にない者(当該外国人に指揮命令権を持たない者)であることが必要です。単に部署が異なるだけでは足りず、代表取締役や、当該外国人が所属する部署を統括する役職(組織図で縦のラインにある者)は、形式上は別部署でも認められません。
3. 欠格事由に該当しないこと
支援責任者・支援担当者は、受け入れ企業自体に課される基準と同種の欠格事由(拘禁刑以上の刑に処せられた者、出入国・労働関係法令に関する不正行為をした者、暴力団関係者、技能実習の実習認定を取り消された者 等)に、個人としても該当しないことが求められます。受け入れ企業自体の欠格事由の全体像は特定技能の受け入れ要件で解説しています。
4. 外国人が理解できる言語での支援体制
事前ガイダンス・生活オリエンテーション・相談苦情対応などを、外国人が十分に理解できる言語で行える体制が必要です。ただし、通訳を自社の職員として常時雇用することまでは必須ではなく、必要なときに委託等で確保できる体制であれば足りるとされています。[2]
上記は出入国在留管理庁の運用要領(令和8年4月1日版)で確認した基準の概要です。実績・経験要件の細部や、分野ごとの上乗せ基準は改正されることがあります。自社支援を選ぶ前に、出入国在留管理庁の最新の運用要領で必ず確認してください。
なお、申請書類の作成や申請取次は行政書士などの専門家の領域です。登録支援機関の支援(義務的支援)には含まれないため、必要に応じて行政書士などの専門家と連携します。
自社支援で実施する義務的支援
自社支援を選ぶ場合、実施するのは次の義務的支援10項目です(各項目の実施基準・時間・頻度の詳細は義務的支援10項目で解説しています)。
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| ① 事前ガイダンス | 在留諸申請の前に、労働条件・活動内容・入国手続きなどを本人が理解できる言語で説明する(運用要領は雇用契約の締結時以前の実施が望ましいとする) |
| ② 出入国する際の送迎 | 入国時に空港から事業所・住居まで、帰国時に空港の保安検査場まで送迎する |
| ③ 住居の確保・生活に必要な契約の支援 | 住居探しの補助や連帯保証、口座・携帯電話・ライフラインの契約などを支援する |
| ④ 生活オリエンテーション | 日本での生活ルール、公共機関の利用方法、相談窓口などを理解できる言語で案内する |
| ⑤ 公的手続等への同行 | 住民登録や社会保障・税などの手続きに同行する(申請書類の作成・申請取次は含まれない) |
| ⑥ 日本語学習の機会の提供 | 日本語教室の情報提供や入学手続きの補助を行う |
| ⑦ 相談・苦情への対応 | 職場や生活上の相談・苦情に理解できる言語で対応する |
| ⑧ 日本人との交流促進 | 地域の行事の案内など、日本人と交流する機会づくりを支援する |
| ⑨ 転職支援(非自発的離職時) | 会社都合などでの離職時に、次の受け入れ先を探す支援や手続きを補助する |
| ⑩ 定期的な面談・行政機関への通報 | 本人・上司と定期的に面談し、労働基準法違反などを把握した場合は行政機関へ通報する |
自社支援と登録支援機関への委託の比較
自社支援と委託の大きな違いは、「支援を適切に行える体制を自社で用意するか」です。[3]
| 観点 | 自社支援 | 登録支援機関へ委託 |
|---|---|---|
| 体制の要件 | 支援責任者・支援担当者の選任、理解できる言語での対応など、基準を自社で満たす | 全部委託なら、企業は支援体制の基準を満たすものとみなされる |
| 必要な人員 | 実績要件を満たす人を、事業所ごとに支援責任者・支援担当者として自社で確保 | 自社の人員負担は小さい(機関側の担当者が対応) |
| 多言語対応 | 自社で用意する(通訳を常時雇用する必要はなく、必要時に確保できる体制でよい) | 機関の対応言語を使える |
| コスト構造 | 委託費は不要な一方、支援担当者の人件費・多言語対応・体制整備の工数がかかる | 月額の委託費が中心(1人あたり月2〜3万円程度が目安。出入国在留管理庁の集計〔令和4年9月末時点・暫定値〕では支援委託料の平均は28,386円で、全体の約9割が月30,000円以下) |
| リスク | 基準(実績要件・中立性・言語対応)を満たし続けられないと、支援体制の要件を欠く恐れがある | 委託先が実効性ある支援を行えないと認められると、全部委託によるみなしが成立しないことがある。委託先選びが重要(選び方) |
| 向いている企業 | 支援の人手・実績・ノウハウ・多言語体制がある | 初めての受け入れ・体制が未整備 |
自社支援の「体制整備の工数」は金額に換算できるものではありませんが、公的に頻度・時間が定められている支援だけを見ても、事前ガイダンスは標準3時間程度、生活オリエンテーションは少なくとも8時間以上、相談対応は1週間当たり勤務日に3日以上・休日に1日以上の対応体制、定期的な面談は3か月に1回以上——これらを自社の支援責任者・支援担当者が継続して確保できるかが、体制コストの実質です。各項目の詳細は義務的支援10項目、委託費の内訳や変動要因は登録支援機関の費用相場、採用全体の費用は特定技能の採用費用・相場で解説しています。
委託から自社支援への切り替え
すでに登録支援機関へ委託していて、自社支援に切り替えたい企業向けの手順です(これから初めて委託先を選ぶ場合や、別の登録支援機関へ乗り換えたい場合は登録支援機関の変更(乗り換え)を参照してください。本節は委託から自社支援への切り替えに絞って解説します)。[4][5]
支援体制の基準を満たせるか確認する
前述の支援体制の基準(実績・経験ルートのいずれかへの該当、支援責任者・支援担当者の選任、中立性、理解できる言語での支援体制)を、自社が満たせるかを先に確認します。満たせない場合は、無理に切り替えず委託を継続するか、登録支援機関の変更(乗り換え)を検討します。「支援委託契約に係る届出」を提出する
委託契約を終了する届出です(届出書は参考様式第3-3-2号)。契約を終了した年月日・終了の事由を記載し、事由が生じた日から14日以内に提出します。「支援計画変更に係る届出」を提出する
支援を自社実施に変更することは1号特定技能外国人支援計画の変更にあたるため、こちらの届出も別途必要です(届出書は参考様式第3-2号)。変更後の支援計画の内容を記載し、同じく14日以内に提出します。外国人本人へ説明し、支援を引き継ぐ
相談窓口や面談担当が変わることを本人に説明し、定期面談や相談対応が途切れないよう引き継ぎます。
これらの届出は受入れ企業(特定技能所属機関)自身の義務で、登録支援機関に代行させることはできません。在留諸申請の書類作成や申請取次は、これらの届出には含まれない行政書士などの専門家の領域です。届出の様式・期限は改正されることがあるため、提出前に出入国在留管理庁の最新の届出案内で確認してください。
どちらを選ぶ?判断の目安
図の各基準の詳細は前述の「自社支援に必要な体制」をご覧ください。
次のいずれかに当てはまる場合は、登録支援機関への委託が現実的です。
- 初めて特定技能を受け入れる(中長期在留者の受入れ実績も、生活相談業務の経験者もない=前述の実績要件をどのルートでも満たせない)
- 採用する人材の母国語に、自社で対応できない
- 支援にあてる人手が足りない、または中立に支援できる担当者を置きにくい
一方、外国人材の受け入れ実績や相談業務の経験がある人員と、多言語の体制がすでにある企業は、自社支援で委託費を抑える選択もあります。また、支援の一部だけを委託する「一部委託」もできますが、その場合は委託しない部分について自社で体制の基準を満たす必要があります。まずは全部委託で始め、実績を積んでから自社支援への切り替えを検討する進め方もとられます(切り替えの具体的な手順は前述のとおりです)。
採用後の定着まで見据えるなら、支援の質は特定技能外国人の定着支援にも直結します。受け入れ企業全体の要件は特定技能の受け入れ要件で確認できます。
まとめ
特定技能1号の支援は、自社支援と登録支援機関への委託から選べます。自社支援は、支援責任者・支援担当者の選任(常勤性は必須でなく、中立性・欠格事由の基準を満たす必要がある)や、理解できる言語での支援体制など、満たすべき基準を整えられれば可能です。体制を整えるのが難しい場合は、支援計画の全部を委託すれば、企業は支援体制の基準を満たすものとみなされるため、初めての受け入れでは委託が現実的です。すでに委託していて自社支援へ切り替える場合は、支援体制の基準を満たせることを確認したうえで、届出2本を14日以内に提出します。
制度の全体像は特定技能採用の完全ガイド、登録支援機関の役割は登録支援機関とは、支援の中身は義務的支援10項目をご覧ください。
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よくあるご質問
- 特定技能の支援は自社で行えますか?
- 行えます。支援責任者・支援担当者を選任し、外国人が十分に理解できる言語で支援できる体制を整えるなど、出入国在留管理庁が定める支援体制の基準を満たせば、自社支援は可能です。体制を整えるのが難しい場合は、登録支援機関に支援計画の全部を委託する選択肢もあります。
- 自社支援の「支援体制の基準」を満たすには、具体的に何が必要ですか?
- 支援責任者・支援担当者を選任するにあたり、①過去2年間に中長期在留者の受入れまたは管理を適正に行った実績がある、②役員・職員に過去2年間の生活相談業務の経験者がいる、③これらと同程度に支援を適正に実施できると個別に認められる、のいずれかに該当する必要があります。あわせて中立性の基準・欠格事由に該当しないこと・理解できる言語での支援体制も満たします。
- 支援責任者と支援担当者は常勤でなければなりませんか?
- 支援責任者は常勤であることを問われません。支援担当者も常勤であることが法令上の要件ではありませんが、出入国在留管理庁の運用要領は常勤であることが望ましいとしています。非常勤の体制でも、実績・経験の要件と中立性・欠格事由の基準を満たせば選任できます。
- 支援責任者と支援担当者は兼任できますか?
- 兼任できます。ただしその場合であっても、支援責任者・支援担当者の双方の基準(実績・経験の要件、中立性、欠格事由に該当しないこと)に適合している必要があります。
- 登録支援機関に全部委託すると、自社の支援体制の基準は満たさなくてよいのですか?
- 支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託した場合は、受け入れ企業は支援体制に関する基準を満たすものとみなされます。初めて特定技能を受け入れる企業が委託を選ぶ理由の一つです。一部だけ委託する場合は、委託しない部分について自社で体制を満たす必要があります。
- 登録支援機関への委託をやめて自社支援に切り替えるにはどうすればよいですか?
- まず自社が支援体制の基準(実績・経験ルート、支援責任者・支援担当者の選任、理解できる言語での支援体制)を満たせるかを確認します。そのうえで、委託契約の終了にともなう「支援委託契約に係る届出」と、支援計画の変更にともなう「支援計画変更に係る届出」を、それぞれ事由が生じた日から14日以内に出入国在留管理庁へ提出します。これらの届出は受入れ企業(特定技能所属機関)自身の義務で、登録支援機関に代行させることはできません。
- 自社支援と委託では、どちらが費用を抑えられますか?
- 登録支援機関への委託費は1人あたり月2〜3万円程度が一つの目安です(出入国在留管理庁の集計では平均28,386円)。自社支援は委託費がかからない一方、支援担当者の人件費・多言語対応・体制整備の工数がかかります。受け入れ人数や体制によって総額は変わるため、概算で比較するのが現実的です。
出典・参考(一次情報)
- 1号特定技能外国人支援・登録支援機関について(出入国在留管理庁)
- 特定技能外国人受入れに関する運用要領(令和8年4月1日版・適合1号特定技能外国人支援計画の適正な実施の確保に係るもの)(出入国在留管理庁)
- 特定技能制度の現状について(登録支援機関への支援委託料の支払額・有識者会議 参考資料)(出入国在留管理庁)
- 支援委託契約に係る届出(出入国在留管理庁)
- 支援計画変更に係る届出(出入国在留管理庁)