特定技能「物流倉庫」とは|受け入れはいつから?対象業務・企業の要件と今できる準備
目次
「倉庫の人手が足りない」「倉庫内作業の求人を出しても応募が集まらない」「物流倉庫でも特定技能が使えるようになると聞いたが、いつから・何を準備すればいいのか」——倉庫業・物流業界のそんな疑問に答えます。結論から言うと、受け入れ企業が満たすべき要件は2026年6月26日公布の上乗せ基準告示(令和8年国土交通省告示第787号)で確定しました。[1]ただし在留資格の申請受付はまだ始まっていません(省令等の準備が整い次第開始・具体的な時期は未公表)。特定技能1号の受入見込数は3年間で11,400人です。
この記事の要点
- 企業側の要件は告示で確定した — 2026年6月26日に公布・適用された告示787号で、受け入れ企業の事業類型・倉庫管理システムの利活用・実務経験証明書の交付などが法令上の基準になりました。
- ただし申請受付はまだ始まっていない — 技能評価試験・運用要領別冊・分野別協議会はいずれも調整中で、開始日は未公表です(2026年7月29日時点)。よく見かける「2027年4月」は育成就労側の日付です。
- 受け入れできる企業は3類型に限定される — 倉庫業者・その委託先事業者・貨物自動車運送事業者のいずれかで、直接雇用のみ。対象業務は倉庫内の入庫・保管・出庫などの倉庫作業です。
本記事は上乗せ基準告示(告示787号・2026年6月26日公布時点)と2026年1月23日閣議決定の分野別運用方針(別紙12)に基づきます。告示は改正され得るほか、運用要領別冊は今後公表予定で、細目はそこで具体化されます。この記事の内容だけで採用計画を確定せず、必ず出入国在留管理庁・国土交通省の最新情報を確認してください。
物流倉庫分野が特定技能の対象に追加された
2026年1月23日の閣議決定で、特定技能の対象分野に物流倉庫・リネンサプライ・資源循環の3分野が追加され、制度上の対象は19分野になりました(分野全体の一覧と各分野の要件は特定技能の対象分野 一覧)。[2]物流倉庫分野の所管は国土交通省で、背景にはEC拡大などによる倉庫内作業の人手不足があります。
同じ閣議決定で、育成就労制度(技能実習に代わる新制度)でも物流倉庫分野の受け入れが規定され(受入見込数6,900人・2年間)、「育成就労で受け入れ、特定技能へつなぐ」道筋も想定されています(育成就労の対象分野)。
受け入れはいつから始まる?
まだ始まっていません。 出入国在留管理庁の分野一覧では、物流倉庫分野に「省令等の準備が整い次第受入れが可能となります」という注記が付いており、具体的な開始時期は公表されていません(2026年7月29日時点)。なお、同時に追加されたリネンサプライは2026年6月1日に受入れ可能な分野一覧へ掲載され、3分野の中で整備が先行しています(特定技能「リネンサプライ」の解説)。
一方で、2026年6月26日に上乗せ基準告示(告示787号)が公布され、附則により公布の日から適用されています(育成就労側の告示788号も同日公布)。閣議決定された分野別運用方針の「特定技能所属機関に対して特に課す条件」を、上陸基準省令および特定技能雇用契約・支援計画の基準を定める省令の委任に基づく基準として定めたものです。告示の公布は要件が確定したという意味であって、在留資格の申請受付が始まったことを意味するものではありません。
| 項目 | 公表されている状況(国土交通省・令和8〔2026〕年6月時点) |
|---|---|
| 上乗せ基準告示(告示787号) | 2026年6月26日に公布・適用 |
| 特定技能1号の技能評価試験 | 令和8年2月末までに試行試験を終え、「試験の適正性の了承を得る手続きを進めております」。「試験開始時期については現在調整中であり未定となります。」 |
| 試験実施要領・分野別運用要領の別冊 | いずれも「現在調整中となり、今後公表予定となります。」 |
| 特定技能制度の分野別協議会 | 「現在、設置に向けて調整中です。」(加入要件・加入受付開始時期も未公表) |
「物流倉庫は2027年4月から」という説明を見かけたら、それは育成就労制度の話です。 国土交通省は同じページで「育成就労制度は令和9年4月1日から運用開始」と明記しています=2027年4月は物流倉庫分野に限らない全分野共通の育成就労制度の運用開始日で、同省は育成就労技能評価試験についても「試験開始は令和9(2027)年4月の育成就労制度開始以降を予定しております」としています。告示の適用日にもこの違いが出ており、育成就労側の告示第788号は附則で「令和九年四月一日から適用する」と定めているのに対し、特定技能側の告示第787号は「公布の日から適用する」——787号はすでに効いていますが、特定技能1号の技能評価試験は「調整中・未定」のままで、受け入れが始まる日として公表された日付はありません。
開始時期・試験日程などの公式発表が出たら、本記事を更新します。
対象業務は「倉庫内作業」——任せられる仕事の範囲
任せられるのは倉庫作業=貨物の入庫、保管、出庫その他の倉庫内における作業です(上乗せ基準告示第2条が、これを特定技能雇用契約の基準として定めています)。「その他の倉庫内における作業」という包括的な書き方のため、仕分け・棚卸しといった実務名がどこまで含まれるかの線引きは、今後公表される運用要領別冊での具体化を確認する必要があります(個別の作業の可否は、この記事では断定できません)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業務区分 | 「物流倉庫」の1区分 |
| 従事する業務(告示第2条) | 倉庫作業=貨物の入庫、保管、出庫その他の倉庫内における作業 |
| 従事できる主な業務の例(国土交通省) | 入出庫貨物の受渡し・検品、貨物の移動、保管庫への格納、ピッキング、流通加工 等 |
| 付随的に従事できる関連業務の例(分野別運用方針・国土交通省) | 事務所への連絡や報告、作業場所の整理整頓や清掃、台風等の接近に備えた貨物の移動や雨水侵入防止措置、職場で開催される会議体(安全衛生・懇談会・教育訓練等)への参加 |
関連業務「だけ」を任せることはできない
連絡・報告や清掃といった関連業務は、倉庫作業に「付随的に」従事する範囲でのみ認められます。 分野別運用方針は、これらを「日本人が通常従事することとなる関連業務」に「付随的に従事することは差し支えない」と書いており、関連業務が主たる仕事になる働き方は想定されていません。募集職種を設計する段階で、倉庫作業が主・関連業務が従という関係になっているかを確認しておくと安全です。
「流通加工」はどこまで含まれるか——製造工程との境界
流通加工に含まれるのは、物資を流通させるために適した状態にするための加工までです。 国土交通省は代表例として小分け再包装、タグ取付け、ラベル貼り、セット組み等を挙げる一方、「商品そのものの機能を完成させたり性能を向上させたりすることは製造工程の一環となり、流通加工には含まれません」としています(令和8〔2026〕年6月時点)。倉庫内に製造ラインに近い工程がある事業所では、任せる作業がこの境界のどちら側かで扱いが変わるため、業務内容の切り分けを先に整理しておくと判断が早くなります。製造工程側の作業が中心になるなら、特定技能「工業製品製造業」など別の分野が受け皿になる可能性があります。
受け入れできるのは倉庫業者など——企業側の3類型
受け入れる企業は、特定技能外国人を倉庫作業に従事させる者であって、次のイ・ロ・ハのいずれかに該当する必要があります(上乗せ基準告示第3条第1号)。
| 類型(告示第3条第1号) | 該当する事業者 | 告示がその類型に求めていること |
|---|---|---|
| イ | 倉庫業者 | 倉庫業法(昭和31年法律第121号)第7条第1項に規定する倉庫業者であること(同項の「倉庫業者」=同法第3条の登録を受けた者)。国土交通省はこの類型を「倉庫業の登録を受けた倉庫業者で、倉庫作業を自ら実施する者」と説明しています |
| ロ | 倉庫業者が現に営業に使用している倉庫で、その倉庫業者の委託を受けて倉庫作業を実施する者 | 特定技能外国人の雇用の継続に係る責任を負う旨の協定書を、当該倉庫業者と共同して作成していること(告示はこの協定書の作成を、類型ロに該当するための条件として定めています) |
| ハ | 一般貨物自動車運送事業者・特定貨物自動車運送事業者 | 貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)第7条第1項に規定する一般貨物自動車運送事業者、または同法第21条に規定する特定貨物自動車運送事業者であること |
国土交通省は類型ハを「一般貨物自動車運送業又は特定貨物自動車運送業の許可を受けた者であって、その占有する倉庫において倉庫作業を自ら実施する者若しくはその事業に関連して他人の需要に応じ、有償で倉庫作業を実施する者」と説明し、「(例:トラック事業者が自社の倉庫や荷主の配送センターで倉庫作業を行う)」と付記しています(令和8〔2026〕年6月時点)。
1分で当てはめるなら、次の順で見ます。 倉庫業の登録がある→イ/登録はないが一般・特定の貨物自動車運送事業の許可がある→ハ/どちらもないが、倉庫業者の営業倉庫でその委託を受けて倉庫作業をしている→ロ(委託元との協定書が前提)。3つは排他ではないため、いずれかに当たれば足ります。自社の該当性は、行政書士などの専門家や国土交通省にご確認ください。[3]
あわせて、雇用形態は直接雇用のみです。告示第1条は上陸のための条件として、申請人を労働者派遣の対象とすることを内容とする特定技能雇用契約を締結していないことを求めており、派遣は認められません。
倉庫業の登録がない会社(荷主の自社倉庫)は対象になる?
倉庫業法は「倉庫業」を、寄託を受けた物品の倉庫における保管を行う営業と定義し(第2条第2項)、これを営もうとする者に国土交通大臣の登録を義務づけ(第3条)、その登録を受けた者を「倉庫業者」と呼びます(第7条第1項)。[4]告示第3条第1号のイ・ロは倉庫業者を、ハは貨物自動車運送事業の許可を軸にしているため、倉庫業の登録も貨物自動車運送事業の許可もない荷主企業が、自社の倉庫内作業で受け入れられるかどうかの線引きは、今後公表される運用要領別冊で具体化される部分です。自社が対象に含まれるかは、国土交通省・出入国在留管理庁の公式情報で確認してください。
受け入れ企業に課される条件——告示787号が定めた9項目
告示第3条は、特定技能雇用契約の相手方となる企業(特定技能所属機関)が満たすべき条件を9つ定めています。 事業類型(第1号)以外の8項目は次のとおりです。
| 告示の条項 | 企業が満たす条件 | 受付開始前でも進められること |
|---|---|---|
| 第3条第2号 | 国土交通省が設置する物流倉庫分野の協議会の構成員であること | 協議会は設置に向けて調整中(加入要件・受付開始時期とも未公表) |
| 第3条第3号・第4号 | 協議会に必要な協力を行うこと(第3号)、協議会で協議が調った事項に関する措置を講ずること(第4号) | — |
| 第3条第5号 | 国土交通大臣またはその委託を受けた者が行う調査、指導その他の活動に必要な協力を行うこと | — |
| 第3条第6号 | 支援計画の全部を登録支援機関に委託する場合、その登録支援機関も第2号〜第5号のいずれにも該当すること | 委託先候補に、協議会加入の方針を確認しておく |
| 第3条第7号 | 入庫管理・在庫管理・出庫管理の機能を有する情報システムを利活用していること | 自社で使っているシステムが3機能を満たすか確認する |
| 第3条第8号 | 生産性および労働安全衛生の向上に資する機器または情報システム(第7号のシステムと連携することで機能が拡充されるもの)を継続して利活用し、協議会に加入した日から起算して1年以内に、協議会において定める方法により利活用の状況を協議会へ報告すること | 連携する機器・システムの導入(報告の方法は協議会が定めるため、設置後の公表待ち) |
| 第3条第9号 | 特定技能外国人からの求めに応じ、雇用契約に係る実務経験を証明する書面(電磁的記録での作成・提供も可)を交付または提供すること | 証明書の様式と発行フローを用意しておく |
倉庫管理システム(WMS)は「所有」ではなく「利活用」が条件
第7号の情報システムは、自社で所有していなくても構いません。 国土交通省は「いわゆる倉庫管理システム(WMS)を念頭に置いています」としたうえで、次の2点を明らかにしています(令和8〔2026〕年6月時点)。
- 製品名は問わない — 「入庫管理・在庫管理・出庫管理の機能が満たされたものであればよく、倉庫管理システムと銘打って製品化されていないものでも構いません」
- 所有は不要 — 「システムを【利活用】していること」としているため、所属機関自身が所有していなくても、外国人が就業する事業所で情報システムが使える状態にあればよい(荷主や委託元の倉庫業者のシステムを使って作業している事業者でも、それが確認の起点になります)
分野別運用方針から、告示で具体的になった点
告示の9項目は、分野別運用方針(別紙12)の「特定技能所属機関に対して特に課す条件」を、法令上の基準として定めたものです(1対1の対応ではなく、情報システムの条件は第7号・第8号に分かれ、協定書の条件は事業者の類型の中に置かれました)。準備に影響する違いは3点です。
- 利活用状況の報告 — 「入会から概ね1年を目途に」報告し「確認を受ける」から、「加入した日から起算して1年以内に」「協議会において定める方法により」報告する形になりました(「確認を受ける」の文言は消えました)
- 調査・指導への協力先 — 「国土交通省が行う調査又は指導」から「国土交通大臣又はその委託を受けた者が行う調査、指導その他の活動」へ広がりました
- 委託先事業者と交わす書面 — 「協議書」から「協定書」になり、所属機関に課す条件ではなく類型ロに該当するための条件へ移っています
ただし告示が定めているのは「雇用の継続に係る責任を負う旨の協定書を共同して作成していること」までで、記載事項や様式までは定めていません(委託契約が終了したときの外国人の雇用の扱いは論点になりますが、記載内容は運用要領別冊待ち。書面の作成そのものは行政書士などの専門家の領域です)。
つまり倉庫作業を受託している事業者にとって、協定書は後から整える追加手続きではなく受け入れ側の類型に当たるかどうかの前提です=委託元の倉庫業者との調整は早めに始めておくことになります。
この9項目は「申請の前」に効いてくる
協議会への加入をはじめとする分野の上乗せ要件は、在留資格の申請時点で満たしている必要があるタイプの条件です。 いつまでに何を終わらせておくかという論点は分野共通のため、特定技能で受け入れる企業の要件の「分野ごとの上乗せ要件——『申請の前』に終わらせておく手続き」をあわせて確認してください(報酬を日本人と同等以上にする等の分野共通の基準も適用されます=社内に同じ仕事の日本人がいない場合の示し方も同記事にあります)。
自社が要件に該当するか、在留資格の申請が通るかの個別の判断は、行政書士などの専門家や出入国在留管理庁・国土交通省にご確認ください。
「物流の仕事」と特定技能の分野対応——運転は別分野
倉庫内で働く人と、トラックを運転する人は、特定技能では別の分野になります。
| 仕事の内容 | 特定技能の分野 | 受け入れ状況(2026年7月29日時点) |
|---|---|---|
| 倉庫内の入庫・保管・出庫などの倉庫作業 | 物流倉庫(本記事) | 準備中(上乗せ基準告示は公布済み・申請受付の開始時期は未公表) |
| トラックドライバーなど運転の業務 | 自動車運送業 | 受け入れ中 |
倉庫内作業と運転では分野・要件・試験が異なるため、運転の担い手の採用も検討している場合は自動車運送業の特定技能採用をご覧ください。
2026年1月23日の閣議決定で同時に追加された3分野は整備の進み方に差があり、先行分野が閣議決定から一覧掲載まで何ヶ月かかったかは、自社の受け入れ開始時期を見積もる材料になります(特定技能「資源循環」の解説に整備状況の比較)。
受入見込数11,400人は何を意味するか——枠の逆算
この枠は「不足すると見込まれた人数を、特定技能と育成就労で分け合った結果」です。 分野別運用方針(別紙12)の記載(2(3)・2(4)ア)を整理すると、令和10年度の需給は次のように積み上がっています。[5]
| 項目(分野別運用方針・2026年1月23日閣議決定) | 人数 |
|---|---|
| 令和10年度に必要と見込まれる就業者 | 34万人程度 |
| 令和10年度に見込まれる人手不足 | 55,100人程度 |
| うち 生産性向上(倉庫管理システム等の活用)で緩和 | ▲20,300人程度 |
| うち 女性・高齢者の起用など国内人材の確保で緩和 | ▲16,500人程度 |
| なお残る人手不足 | 18,300人程度 |
| 物流倉庫分野全体の受入れ見込数(=なお残る人手不足と同数) | 18,300人 |
| ├ 特定技能1号(令和8年度から3年間・令和10年度末までの上限) | 11,400人 |
| └ 育成就労(令和9年度から2年間・令和10年度末までの上限) | 6,900人 |
分野全体の受入れ見込数18,300人は、国内での対策を織り込んでもなお残ると見積もられた人手不足と同数です=「余裕をもった上限」ではなく、なお埋まらないと見積もった穴とちょうど同じ大きさです(同方針は「物流倉庫分野全体における令和8年度から令和10年度までの3年間の受入れ見込数は、1万8,300人である」と直接記載しています)。規模感でいえば、単年度で34万人程度の就業者を要すると見込まれた業界に対して、3年間の特定技能1号の受け入れ枠が11,400人という関係です(編集部算出=11,400÷340,000で約3%。ただし分子は3年間の累計、分母は令和10年度の単年度の必要数なので、年あたりの置き換え割合ではありません。いずれも同方針の記載)。
分野の人手不足の実感を示す数字として、同方針は業界団体アンケートによる令和6年時点の人手不足数を19,000人程度、ハローワーク経由の求人数/応募人数を2.54(令和6年1月〜12月)、普通倉庫の従業員1人あたり所管面積を令和元年度633㎡→令和5年度674㎡(直近5年で約6%伸張)と記載しています。
枠の終期が「令和10年度末」と明示されている点にも注意が要ります。 方針は11,400人を「令和10年度末までの3年間の受入れの上限として運用する」と書いており、開始が後ろにずれた場合に終期も動くとは書かれていません=開始が遅れるほど、枠を使える残りの期間が短くなる形です(開始時期は未公表のため、実際に何年分になるかはまだ分かりません)。
なお、この受入れ見込数を超えることが見込まれる場合などには、国土交通大臣が法務大臣に対して在留資格認定証明書の交付の一時停止を求める仕組みが同方針に置かれています。分野ごとの受け入れ停止・再開の実際の動きは特定技能の受け入れ停止と最新動向で追っています。
採用候補者に求められる水準——物流倉庫分野特定技能1号評価試験
受け入れる外国人は、技能・日本語の2つの試験に合格した人に限られます。 分野別運用方針が定める技能水準は「物流倉庫分野特定技能1号評価試験」、日本語能力水準は「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上です。物流倉庫分野は現状特定技能1号のみが対象で、2号の規定はありません。
日本語水準は「A2.2相当以上」と「A2相当以上」の2つの書き方がある
同じ物流倉庫分野でも、公表資料によって日本語水準の書き方が違います。 分野別運用方針(別紙12・閣議決定)は「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上、国土交通省の案内ページは「日本語能力A2相当以上の試験(JLPTのN4等)の合格が必要」と書いています。どちらが優先するかを説明した資料は確認できていないため、受験させる試験を決める段階では両方の記載を踏まえ、最新の運用要領・試験実施要領を確認してください。参照枠の水準と実際の試験(JLPT・JFT-Basic)の対応は分野共通の論点のため、特定技能の日本語試験・技能試験で整理しています。
物流倉庫分野には「専門級」の試験がない
この分野で公表されている、試験を経て特定技能1号の水準に至る段は3つです。 国土交通省の整理では、就労開始前に日本語A1相当以上(JLPTのN5等)、1年目の習熟確認として「育成就労技能評価試験(初級)」、終了までに求められる水準として「特定技能1号技能評価試験」に合格する、という順になります。物流倉庫分野には「育成就労技能評価試験(専門級)」の設定がありません——同省は、終了までの水準を確認する試験は特定技能1号の評価試験になる、と明記しています。制度の仕組みと2つの制度のつなぎ方は育成就労とは・育成就労から特定技能への移行で扱っています。
なお、技能実習2号良好修了者の試験免除が物流倉庫分野で使えるという公表は確認できていません。 外国人技能実習機構の技能実習移行対象職種・作業の一覧(令和8年4月10日時点)に倉庫内作業に対応する職種・作業は掲載されておらず、分野別運用方針にも免除の記載はありません。免除の有無は運用要領別冊などの公表を待って確認するのが確実です。[6]
フォークリフトを任せるなら、特定技能の試験とは別に国内の資格が要る
特定技能の技能評価試験に合格していても、それだけでフォークリフトを運転させることはできません。 労働安全衛生法は、政令で定める業務について、就かせられる者を法定の資格を持つ人に限っています(第61条第1項)。倉庫内作業でこれに当たる代表がフォークリフトです。[7][8]
| 運転させたいフォークリフト | 根拠 | 必要になるもの |
|---|---|---|
| 最大荷重1トン以上(道路上を走行させる運転を除く) | 労働安全衛生法第61条第1項・同法施行令第20条第11号 | 就業制限業務。労働安全衛生規則別表第3が定める者=フォークリフト運転技能講習を修了した者、職業能力開発促進法の普通職業訓練(揚重運搬機械運転系港湾荷役科)を修了しフォークリフトの訓練を受けた者、その他厚生労働大臣が定める者 |
| 最大荷重1トン未満(道路上を走行させる運転を除く) | 労働安全衛生規則第36条第5号 | 特別教育の実施が必要 |
法令が挙げているのは、いずれも日本国内の技能講習・職業訓練を修了したことです。外国で取得した運転資格がそのまま使えるかは条文からは読み取れないため、個別の資格の取扱いは所轄の労働基準監督署・都道府県労働局にご確認ください。
準備の段取りという意味では、この2つは性質が違います。 1トン以上の技能講習は都道府県労働局長の登録を受けた者(登録教習機関)が実施するもので、自社では実施できません=外部の受講枠と日程に依存します。一方、1トン未満の特別教育は事業者自身が行う義務です(労働安全衛生法第59条第3項)[7]=日程を自社で組めます。技能講習の日数・料金は教習機関ごとに異なるため、受け入れ人数と時期が見えた段階で、地域の登録教習機関に空き状況を確認するのが実務的です。受講の言語や外国人向けのサポートの有無についても法令上の定めはなく、教習機関ごとに対応が異なります——この点もあわせて事前に確認しておくと、就労開始の逆算が立てやすくなります。
開始に備えて企業が今できる準備
告示で要件が確定したことで、待っている間にも自社側の準備を具体的に進められるようになりました。 分野固有の準備は告示8項目の表の右列にまとめたとおりです(協議会に関わる部分は設置を待つしかない一方、システム・機器・書面は今から動かせます)。加えて、フォークリフトを任せるなら技能講習・特別教育の段取りも同時期の作業になります。
分野共通の準備は、制度の全体像・企業側の義務・費用構造・採用の流れを特定技能採用の完全ガイド・採用の流れ・採用費用・相場でつかみ、登録支援機関の情報を集めておくことです。物流倉庫分野では支援計画の全部を委託するなら委託先も協議会の構成員である必要があるため(告示第3条第6号)、委託先選びがそのまま分野の要件に関わってきます。ただし協議会が未設置である以上、現時点でこの条件を満たしている機関は存在し得ません=告示要件(協議会加入等)への適合は、受付開始後に各機関へ個別に確認する必要があります。
開始を待てない場合、選択肢は3つに分かれる
倉庫の人手が今すぐ要るなら、取れる道は「待つ・育成就労に賭ける・別の在留資格を検討する」の3つです。
| 選択肢 | 向いている状況 | 今すべきこと |
|---|---|---|
| 特定技能の開始を待つ | 開始時期が読めない状態を許容でき、令和10年度末までの枠を使う前提で採用計画を組める | 自社で動かせる準備=システム・証明書(類型ロは協定書も)を進め、国土交通省の当該ページで協議会の加入要件・受付開始の公表を追う |
| 育成就労で受け入れる | 3年かけて育てる前提が取れる。制度の運用開始は2027年4月 | 育成就労とはで要件を把握し、監理団体・監理支援機関・登録支援機関の違い(物流倉庫分野の告示788号が監理支援機関に課す4条件を掲載)で相手の方針を確認する |
| 他の在留資格を検討する | 数か月以内に人が要る | 就労制限のない身分系の在留資格、資格外活動許可を受けた留学生(週28時間以内)などが候補。可否は資格ごとに異なるため、外食業で受け入れが停止したときの代替手段の整理を出発点に、行政書士などの専門家や出入国在留管理庁に確認する |
在留資格ごとの可否は個別性が高く、この記事で断定できる性質のものではありません。 3つ目を選ぶ場合は特に、採用を具体化する前に専門家にご確認ください。
なお、受付が始まってからも、在留資格の手続きや入国・生活オリエンテーションの期間が必要です(逆算の考え方は分野共通=採用の流れ)。特定技能1号で在留できるのは通算5年が上限で、3年の育成就労を経てから1号へ進む場合と、1号から入る場合とで、社内に人が定着する期間の見え方が変わります(特定技能の在留期間と更新)。
どのルートが自社に現実的かの当たりは、今の時点でもつけられます。
まとめ
物流倉庫分野は、2026年6月26日公布・適用の上乗せ基準告示(告示787号)で受け入れ企業の要件が確定(要件=3類型・WMSの利活用・実務経験証明書・協議会加入/直接雇用のみ)した一方、在留資格の申請受付はまだ始まっていません(技能評価試験・運用要領別冊・分野別協議会はいずれも調整中。2026年7月29日時点)。枠は令和10年度末までの11,400人で終期が固定されているため、開始を待つ間に自社の類型確認・システムと書面の準備・フォークリフトの資格取得の段取りを進めておくのが現実的な備えです。
「受け入れが始まったら物流倉庫で採用したい」「自社が対象になるか・費用感を先に知りたい」——開始に備えた情報収集の段階から、条件に合う登録支援機関・人材紹介会社を無料でご紹介します(提携先のサービスをご紹介しています)。
よくあるご質問
- 物流倉庫分野の特定技能はいつから受け入れできますか?「2027年4月から」という情報を見ましたが正しいですか?
- まだ受け入れは始まっていません(2026年7月29日時点)。2026年6月26日に上乗せ基準告示(令和8年国土交通省告示第787号)が公布・適用されて受け入れ企業の要件は確定しましたが、技能評価試験・運用要領別冊・分野別協議会はいずれも調整中で、開始時期は公表されていません。なお「2027年4月」は、国土交通省が「育成就労制度は令和9年4月1日から運用開始」としている育成就労制度の運用開始日であり、物流倉庫分野で特定技能の受け入れが始まる日として公表されたものではありません。特定技能1号の技能評価試験の開始時期は「現在調整中であり未定」とされています(令和8〔2026〕年6月時点)。
- 物流倉庫分野ではどんな業務を任せられますか?どんな企業が受け入れできますか?
- 対象業務は倉庫作業=「貨物の入庫、保管、出庫その他の倉庫内における作業」です(告示第2条。業務区分は「物流倉庫」の1区分)。国土交通省は主な業務として入出庫貨物の受渡し・検品、貨物の移動、保管庫への格納、ピッキング、流通加工等を挙げています。受け入れできる企業は、告示第3条第1号で①倉庫業者②倉庫業者の委託を受けて倉庫作業を実施する者③一般・特定の貨物自動車運送事業者、の3類型に限られ、雇用形態は直接雇用のみです。
- 物流倉庫分野の受入見込数と、特定技能2号の有無を教えてください。
- 特定技能1号の受入見込数は2026年度からの3年間で11,400人が上限とされています(同時に追加されたリネンサプライは4,300人、資源循環は900人。いずれも各分野の分野別運用方針より)。物流倉庫分野は現状、特定技能1号のみが対象で、2号の規定はありません。数値・制度は変わる可能性があるため最新の分野別運用方針で確認してください。
- 倉庫業の登録がない会社(荷主の自社倉庫など)でも受け入れできますか?
- 告示第3条第1号は、受け入れ企業を①倉庫業法の倉庫業者②倉庫業者が現に営業に使用している倉庫で、その委託を受けて倉庫作業を実施する者(雇用の継続に係る責任を負う旨の協定書を当該倉庫業者と共同して作成している者に限る)③一般貨物自動車運送事業者または特定貨物自動車運送事業者、のいずれかに限定しています。倉庫業法は「倉庫業」を寄託を受けた物品の倉庫における保管を行う営業と定義し(第2条第2項)、これを営む者に登録を義務づけています(第3条)。倉庫業の登録も貨物自動車運送事業の許可もない荷主企業が自社倉庫での作業で受け入れられるかは、今後公表される運用要領別冊での具体化を確認してください。
- 受け入れに倉庫管理システム(WMS)は必須ですか?自社で所有していない場合はどうなりますか?
- 告示第3条第7号は、入庫管理・在庫管理・出庫管理の機能を有する情報システムを利活用していることを受け入れ企業の条件としています。国土交通省はこれを倉庫管理システム(WMS)を念頭に置いたものと説明したうえで、製品として「倉庫管理システム」と銘打たれていなくても3機能が満たされていればよく、条件は「所有」ではなく「利活用」なので、所属機関自身が所有していなくても外国人が就業する事業所でシステムが使える状態にあればよい、と案内しています(令和8〔2026〕年6月時点)。
出典・参考(一次情報)
- 物流倉庫分野に特有の事情に鑑みて当該分野を所管する関係行政機関の長が告示で定める基準を定める件(令和8年国土交通省告示第787号・2026年6月26日公布・適用)(出入国在留管理庁)
- 特定産業分野(19分野)の分野別運用方針(出入国在留管理庁)
- 物流倉庫分野における特定技能外国人・育成就労外国人の受入れについて(受入れ可能な事業者の類型・試験/協議会の準備状況/確認日2026年7月29日)(国土交通省)
- 倉庫業法(昭和31年法律第121号)第2条第2項・第3条・第7条第1項(e-Gov法令検索)
- 物流倉庫分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針(別紙12・受入れ見込数・人手不足の状況・交付停止の措置)(出入国在留管理庁)
- 技能実習移行対象職種(令和8年4月10日時点/確認日2026年7月29日)(外国人技能実習機構)
- 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第59条第3項(特別教育=事業者が行う)・第61条第1項(就業制限=免許または登録を受けた者が行う技能講習)(e-Gov法令検索)
- 労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)第20条第11号(最大荷重1トン以上のフォークリフトの運転の業務)(e-Gov法令検索)