外国人雇用の助成金・補助金|在留資格別の対象可否と特定技能での使い方
目次
外国人の採用には、就労環境の整備や研修など一定のコストがかかります。そこで気になるのが「使える助成金・補助金はないか」、そして「うちの採用のしかたで対象になるのか」です。
まず全体像から言うと、雇用関係助成金の多くは在留資格を問わず、要件を満たせば外国人・日本人のどちらの雇用でも使えます。外国人特有の事情に特化した中心的な制度が、就労環境の整備に使える「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」(上限80万円)です。そのうえで、制度によっては在留資格の性質(帰国が前提かどうか)や採用の経路に要件があり、特定技能の採用で使いやすい制度と、そうでない制度が分かれます。このページでは、主要な制度の金額を、特定技能1号・2号それぞれの対象可否まで一次出典つきで一覧化し、その理由を要件レベルで整理します。
この記事の要点
- 「外国人を雇うだけ」ではもらえない — 多くは就労環境の整備・正社員化・訓練など、認定を受けた計画に基づく取り組みを行い、要件を満たすことが条件。
- 外国人特有の制度の中心は「就労環境整備助成コース」 — 1制度導入につき20万円・上限80万円(令和8年4月1日現在・厚生労働省)。在留資格を問わず対象(特別永住者・在留資格「外交」「公用」を除く)=特定技能1号でも使える。
- 在留資格で分かれるのは「長期定着を要件にする制度」だけ — 無期雇用への転換を求める正社員化コースは、帰国が前提の特定技能1号は対象外(特定技能2号は対象)。就労環境整備・処遇改善・賃上げ系は在留資格を問わない。
- 「◯万円もらえる」の一律金額に注意 — 現行の就労環境整備助成コースに賃金要件・生産性要件の上乗せはなく、「72万円」等の数字は現行版と一致しない。
- 国の制度に加えて自治体の助成もある — 例:東京都は外国人従業員への日本語教育等の経費の1/2(上限25万円)を助成、神奈川県など外国人労働者の職場環境整備に最大40万円の奨励金を用意する自治体もある(いずれも令和8年度)。
本記事は助成金・補助金制度の概要をまとめた情報提供です。助成金・補助金は要件・金額・募集期間の改定が頻繁で、受給には要件審査があります。特定の金額や受給を保証するものではありません。助成金の申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士の業務であり、実際の申請可否・金額は厚生労働省の各制度ページや社会保険労務士などの専門家にご確認ください。
助成金と補助金は何が違う?
まず混同しやすい2つの言葉を整理します。
- 助成金 — 主に厚生労働省が所管し、財源は雇用保険料が中心。雇用の維持・改善や人材育成などが目的で、要件を満たせば原則として受給できるものが多い(予算の上限で先着・抽選になるものもある)。外国人雇用で使える制度の多くはこちら。
- 補助金 — 主に経済産業省や自治体が所管。設備投資・IT導入・事業拡大などが目的で、公募・審査があり採択されないと受給できないものが多い。
外国人雇用で企業がまず検討するのは、厚生労働省の雇用関係助成金です。
在留資格別の対象可否|主な助成金の一覧
外国人雇用で活用されることが多い助成金を、特定技能1号・2号それぞれで対象になり得るかという観点で整理します。○=対象になり得る/△=取り組み内容・採用経路次第/✕=この採用では使いにくい、を目安に示します(実際の可否は要件審査で決まります)。「外国人向け」に特化しているのは就労環境整備助成コースで、それ以外は在留資格を問わない一般の雇用関係助成金です。
在留資格による違いはキャリアアップ助成金の正社員化コースだけ(特定技能1号は対象外・2号は対象)で、それ以外の制度は1号・2号どちらでも同じ扱いです。まずはその全体像を図で示し、金額や判定理由の詳細は下表で確認してください。
| 制度 | 金額の目安 | 特定技能1号 | 特定技能2号 | 判定の理由(要件レベル) |
|---|---|---|---|---|
| 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース) | 1制度導入につき20万円・上限80万円 | ○ | ○ | 在留資格を問わず対象(特別永住者・「外交」「公用」を除く)。外国人特有の就労環境整備が要件 |
| キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 有期→正規で1人40万〜80万円(中小・区分と期数による) | ✕ | ○ | 特定技能1号は帰国が前提(在留5年・更新不可)で無期雇用・長期定着の前提と不整合=対象外。2号は在留制限がなく対象(厚労省Q&A A-6) |
| キャリアアップ助成金(処遇改善支援:賃金規定等の改定など) | 賃金規定等改定で1人4万〜7万円(中小・引上げ率による)ほか | ○ | ○ | 正社員化コースと違い在留資格による除外なし=特定技能1号でも対象になり得る(同Q&A) |
| 人材開発支援助成金(人材育成支援コース) | 経費の45%+賃金助成760円/時(中小・基本区分) | △ | △ | 在留資格でなく訓練の中身が要件。日常会話レベルの日本語講習は対象外・職務に直接関連する訓練が条件 |
| トライアル雇用助成金(一般トライアルコース) | 1人あたり月額最大4万円(最長3か月) | △ | △ | 在留資格でなく採用経路が要件。ハローワーク等の紹介経由が必須で、海外から呼び寄せる採用とはかみ合わない(国内在留者の紹介採用なら該当し得る) |
| 業務改善助成金 | 引上げ額・人数で変動(上限最大600万円) | ○ | ○ | 国籍・在留資格による除外なし(賃上げ+設備投資が要件) |
金額・要件は年度で変わります(上表は確認日2026年7月22日時点)。各制度の一次出典は下記のとおりです。[1][2][3]
在留資格の性質から可否を読み解く
上の表で在留資格によって可否が分かれるのは、正社員化コースだけです。ここに、特定技能で助成金を考えるときの勘所があります。
- 無期雇用・長期定着を要件にする制度は、在留期間に上限があり帰国が前提の在留資格(特定技能1号・技能実習など)を外します。正社員化コースが典型で、厚生労働省のQ&Aは特定技能1号を「帰国が前提となっているため(在留期間5年・更新不可の制限あり)」対象外と明記しています。
- 在留期間に制限のない在留資格(特定技能2号・永住者・定住者など)は、同じ制度でも対象になります。特定技能2号は「在留期間の制限なし・更新可」として正社員化コースの対象です。
- 就労環境の整備・訓練・賃上げに対する制度(就労環境整備助成コース・人材開発支援助成金・業務改善助成金・処遇改善支援)は、そもそも在留資格を問いません。特定技能1号でも、要件(取り組みの中身や採用経路)を満たせば対象になり得ます。
つまり、特定技能1号だから助成金が使えないのではなく、「無期雇用への転換」を求める制度とだけ相性が悪い、という整理になります。
就労環境整備助成コースを詳しく|特定技能で最初に検討する制度
外国人労働者は、日本の労働法制や雇用慣行の知識不足・言語の違いなどからトラブルが生じやすい傾向があります。この助成金は、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主に対して助成するものです。在留資格を問わず使えるため、特定技能の採用で最初に検討したい制度です。
対象は「雇用保険被保険者となる外国人労働者(特別永住者および在留資格『外交』『公用』を除く)」を雇用する事業主です。特定技能1号も、この対象から外れる規定はありません(後述のとおり、特定技能1号は離職率の算定で「帰国者を除外する」文脈で個別に扱われます)。
主な受給要件(厚生労働省・令和8年4月1日現在)
- 外国人労働者を雇用している事業主であること。
- 認定を受けた就労環境整備計画に基づき、次の措置を新たに導入・実施すること。
- 必須(両方):①雇用労務責任者の選任、②就業規則等の多言語化
- 選択(1つ以上):③苦情・相談体制の整備/④一時帰国のための休暇制度の整備/⑤社内マニュアル・標識類等の多言語化
- 措置の実施日の翌日から6か月間の外国人労働者の離職率が15%以下であること(算定期間初日の外国人労働者数が2人以上10人以下の場合は、離職者数が1人以下)、かつ算定期間の末日まで継続して雇用されている外国人労働者が1人以上いること。
受給額は、要件をすべて満たした場合、1制度導入につき20万円(上限80万円)です。現行版に賃金要件や生産性要件による上乗せはありません(後述の「72万円」俗説の項も参照)。
支給対象になる経費
措置の導入を外部機関等に委託した場合、次のような費用が支給対象経費として想定されています(厚生労働省ガイドブック)。
- 通訳費、雇用労務責任者と外国人労働者の面談に必要な翻訳機器の導入費
- 就業規則等の翻訳料
- 就業規則・労働協約の変更にかかる委託料(社会保険労務士などへの委託料を含む)
- 社内マニュアル・標識類等の変更にかかる委託料や、標識類の設置・改修費
申請の流れ
就労環境整備助成コースは「取り組みを始める前に計画の認定を受ける」ことが出発点です。
就労環境整備計画を提出し、認定を受ける
就労環境整備計画書を作成し、計画期間の初日から6か月前の日から1か月前の日までに、本社を管轄する都道府県労働局またはハローワークへ提出します。取り組みを始めた後では対象になりません。
認定計画に沿って措置を導入・実施する
認定された計画のとおりに、必須2措置+選択1措置以上を導入・実施し、記録・書類を整えます。
実施日の翌日から6か月間の離職率を算定する
措置の実施日の翌日から6か月間の外国人労働者離職率を計算し、基準(15%以下・少人数事業所は離職者1人以下)を満たすか確認します。
算定期間の終了後、2か月以内に支給申請する
離職率算定期間が終わってから2か月以内に支給申請します。助成金は原則として後払いです。
審査を経て支給される
提出書類の審査を経て、1制度導入につき20万円(上限80万円)が事業主単位で支給されます。
特定技能1号ならではの注意|離職率の算定から「帰国者」は除外される
この制度で特定技能1号を雇う場合に知っておきたいのが、離職率の算定ルールです。ガイドブックでは、在留期間の上限を満了したことに伴い母国等に帰国した人は、離職率の算定(資格喪失者数)に含めないとされています。除外の対象となる在留資格の例として、「特定技能1号」「技能実習」などが挙げられています。[4]
これは、在留期間5年の上限で帰国する特定技能1号の離職を「事業主の定着努力の失敗」とはカウントしない、という趣旨です。特定技能1号を雇っていても、この制度の離職率要件で不利になりにくい、と読めます(実際の算定は最新のガイドブック・支給要領で確認してください)。
受給要件・金額・様式は年度で改定されます(上記は令和8年4月1日現在版・確認日2026年7月22日)。就労環境整備計画は取り組みを始める前に提出・認定を受ける必要があります。申請前に必ず厚生労働省の最新のガイドブック・支給要領をご確認ください。
電子申請とGビズID
就労環境整備助成コースの計画認定申請・支給申請は、電子申請にも対応しています(厚生労働省ガイドブック)。雇用関係助成金を電子申請する際は、一般にGビズIDプライム(法人代表者・個人事業主向けのアカウント)が前提になります。GビズIDプライムのオンライン申請は比較的短期間で進みますが、書類申請の場合は審査に最大1か月程度かかることがあるため、電子申請を予定するなら早めに取得しておくと安心です(取得方法・所要期間の最新は公式で確認してください)。[5]
キャリアアップ助成金|正社員化は「特定技能2号なら」
有期雇用の労働者を正社員に転換した場合などに助成する制度で、いくつかのコースに分かれます。特定技能の採用では、どのコースかで在留資格の可否が変わる点に注意が必要です。
- 正社員化コース — 有期雇用から正社員へ転換した場合、中小企業で1人あたり40万〜80万円(重点支援対象者は2期に分けて計80万円、それ以外は40万円。無期雇用からの転換はその半額が目安)です。厚生労働省のQ&A(令和8年4月8日版)は、特定技能1号を対象外(帰国が前提で在留期間5年・更新不可のため)、特定技能2号を対象(在留期間の制限なし・更新可)と整理しています。技能実習生も帰国が前提のため正社員化コースは対象外です。
- 処遇改善支援 — 賃金規定等の改定(基本給を3%以上増額改定)、賞与・退職金制度の導入などのコースの総称です。賃金規定等改定コースは中小企業で1人あたり4万〜7万円(引上げ率による)などです。こちらは同Q&Aで在留資格による除外がなく、特定技能1号も対象になり得るとされています。無期転換を求めないため、帰国前提の在留資格でも使える点が正社員化コースとの違いです。
「特定技能だからキャリアアップ助成金は使えない」と決めつける必要はありません。正社員化コースは特定技能2号・処遇改善支援は特定技能1号でも、要件を満たせば対象になり得ます。自社のケースが対象になるかは、管轄の労働局・社会保険労務士に事前確認するのが確実です。
人材開発支援助成金・トライアル雇用助成金|要件の相性を確認
- 人材開発支援助成金(人材育成支援コース) — 従業員への訓練(10時間以上のOFF-JT等)にかかる経費・賃金の一部を助成します(中小企業の基本区分は経費助成45%+賃金助成760円/時)。外国人従業員への「日本語教育」に使えるかは訓練の中身で分かれ、日常会話程度の語学習得のみを目的とする講習は「趣味教養」として助成対象外です。対象は「職務に直接関連する訓練」で、業務マニュアルの読解や業務上必要な専門用語の習得など、職務との関連が明確な計画を組めるかがポイントです(日本語教育が対象になると明示した記述はないため、計画届の前に労働局へ確認するのが確実です)。[6]
- トライアル雇用助成金(一般トライアルコース) — 一定の求職者を試行雇用(原則3か月)した場合に1人あたり月額最大4万円を助成しますが、①ハローワーク等の紹介経由が必須、②紹介日より前にその人を雇用することを約束していないことが要件です。海外から呼び寄せる特定技能の採用は、入国前に雇用契約を締結し人材紹介会社経由で進めるのが典型で(採用の流れ)、この流れとはかみ合いません。一方、すでに日本国内に在留し転職活動中の外国人をハローワーク等の紹介で雇い入れる場合は、対象者の類型に該当する可能性が残ります。
業務改善助成金|国籍を問わず使える
事業場内の最低賃金を50円以上引き上げ(令和8年度・50円/70円/90円の3コース)、あわせて生産性向上に資する設備投資等を行った場合に、費用の一部(助成率3/4または4/5・上限最大600万円)を助成する制度です。対象労働者の要件は雇用形態上のもの(雇入れ後6か月経過・週20時間以上の雇用保険被保険者)のみで、国籍・在留資格による除外はありません。外国人従業員を含む事業場の賃上げと設備投資を計画している場合に検討できます(設備投資は交付決定後の実施が必須です)。[7]
国だけではない|自治体の助成金も確認する
厚生労働省の雇用関係助成金に加えて、都道府県・市区町村が独自の助成制度を設けている場合があります。例えば東京都は、都内中小企業等が外国人従業員に行う日本語教育等(日本語教員による教育・教材作成・ビジネスマナー講座・異文化理解講座)の経費について2分の1・上限25万円(短時間プランは上限15万円)を助成しています(令和8年度・募集は令和8年4月9日から令和9年1月14日まで)。対象となる従業員の日本語レベル(概ねN2以下)や就労可能な在留資格などの要件があるため、詳細は募集要項で確認してください。[8]
同様に神奈川県は、県内中小企業等を対象に多様な人材が活躍できる職場環境整備支援奨励金(外国人労働者の職場環境整備コース)を設けています。基本額は20万円で、県主催セミナーの受講・社内規程の多言語化・雇用労務責任者の選任・苦情相談体制の整備といった取組をあわせて実施すると加算され、最大40万円まで支給される仕組みです。対象となる在留資格の限定はなく、外国人労働者を常時1名以上雇用していることが要件のため、特定技能で採用する場合も対象になり得ます(令和8年度・募集は令和8年5月29日から令和8年10月30日まで)。[9]
介護分野に限れば、大阪府は外国人介護人材受入施設等環境整備事業を設けています。府内で介護保険施設等を運営する法人が対象で、受け入れ環境の整備にかかる経費の3分の2(1施設あたり上限20万円・1回限り)を補助する制度です。対象となる在留資格には技能実習・特定技能・留学・特定活動が含まれており、特定技能で介護分野の外国人を受け入れる場合も対象になり得ます(令和8年度は通年での受付・交付申請は事業実施の1か月前までなど時期の要件があるため、詳細は府へ確認してください)。同種の制度は他の都道府県にもあり、対象経費(日本語学習の支援・介護福祉士の資格取得支援・生活支援)と自治体ごとの違いは介護の特定技能 採用費用・相場で整理しています。[10]
一方で、対象となる在留資格が限定されている自治体の制度もあります。福岡県の外国人材受入企業支援補助金は、県内中小企業を対象に技能実習生の受入に向けた居住環境整備や魅力発信の経費を補助率2分の1以内・上限30万円で支援する制度ですが、対象は技能実習に限られ、特定技能・特定活動の外国人は対象外と明示されています(募集は令和8年11月30日必着)。特定技能での採用を検討している場合、この制度は利用できない点に注意してください。[11]
このように、自治体の助成制度は対象となる在留資格の範囲が制度ごとに異なります。神奈川県のように在留資格を限定しない制度もあれば、大阪府のように特定技能を含む介護特化型、福岡県のように技能実習のみを対象とし特定技能を除外するものもあり、国の制度と同様に、自社が採用する在留資格が対象に含まれるかどうかは募集要項で個別に確認する必要があります。ここに記載した金額・要件・締切は、2026年7月22日時点で各自治体の公式サイトを確認したものです。
自治体の制度は募集年度ごとに内容・金額・締切が変わり、地域差も大きいため、本記事で全地域を網羅することはしません。自社の所在地の制度は、次の順で探すと見つけやすいです。
- 所在地の都道府県・市区町村の公式サイトで「外国人 雇用 助成金」「外国人材 定着 補助金」などを検索する(労働・産業・国際部局のページ)。
- 地域の産業振興公社・中小企業支援センターの助成金一覧を確認する。
- 気になる制度が見つかったら、必ず公式の募集要項で年度・金額・対象・締切を確認する(まとめ記事の数字は古いことがあります)。
国の制度と自治体の制度は併用の可否も含めて要件が異なるため、あわせて確認するのがおすすめです。
「72万円もらえる」という話の実際
外国人雇用の助成金について「72万円もらえる」といった一律の金額を見かけることがありますが、外国人雇用に特化した現行制度(就労環境整備助成コース)は、1制度導入につき20万円・上限80万円のみです(令和8年4月1日現在のガイドブック・リーフレット)。現行版には、賃金要件や生産性要件を満たすと増額される仕組みはありません。
「◯万円もらえる」と雇用しただけで受け取れるかのような一律金額の情報には注意してください。就労環境整備という取り組みに対する後払いの助成であり、金額も過去の版・他制度と混同されていることがあります。正確な金額は、必ず厚生労働省の最新のリーフレット・ガイドブックで確認しましょう。[12]
特定技能で外国人を採用するときの注意点
特定技能で外国人を採用する企業が、助成金を検討するうえで押さえておきたい点です。
- 助成金の制度情報と申請は担い手が違う — 制度の概要は本記事のように公的情報で確認できますが、申請書類の作成・提出の代行は社会保険労務士の業務です(登録支援機関の業務には含まれません)。
- 就労環境整備助成コースは「自社支援か委託か」で扱いが変わる場合がある — 支援を登録支援機関に委託しているか、自社で支援しているかによって、選べる措置や経費の考え方が変わることがあります。自社支援と委託の違いは特定技能は自社支援?委託?で整理しています。
- 助成金は「採用コストの相殺」ではなく「取り組みへの助成」 — 採用そのものの費用を直接補填する制度ではなく、就労環境整備・訓練・正社員化など具体的な取り組みに対して支給されます。採用にかかる費用の全体像は特定技能の採用費用・相場で、採用後に毎年かかる費用は特定技能の維持費・ランニングコストで整理しています。
なお、特定技能制度そのものの全体像や採用の進め方は特定技能で外国人を採用する完全ガイドにまとめています。
申請で共通して注意したいこと
助成金は「申請すればもらえる」ものではありません。制度をまたいで共通する注意点を整理します。
- 「外国人を雇うだけ」ではもらえない — 就労環境整備・正社員化・訓練など、具体的な取り組みと要件の充足が前提です。
- 取り組みの前に計画の認定が必要な制度が多い — 就労環境整備計画・訓練計画などは、取り組みを始める前に提出・認定を受ける必要があります。実施済みの内容では対象にならないことがあります。
- 助成金は原則として後払い — 実施後に一定期間(離職率の算定期間など)を経てから支給申請し、審査を経て支給されます。
- 労働法令の遵守が大前提 — 労働保険・雇用保険への適正な加入、賃金台帳・出勤簿の整備などが求められます。法令違反があると支給されません。
- 不正受給には厳しい措置 — 実態と異なる書類による受給は不正受給となり、返還や事業主名の公表などの対象になります。
- 助成金は原則として課税対象 — 受け取った助成金は原則として益金(収入)に算入されます。
- 申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士の業務 — 助成金の申請代行は登録支援機関の業務ではありません。申請は社会保険労務士などの専門家と連携して進めます。
どの助成金が自社の取り組みに使えるか、要件を満たすかの判断は専門的です。受給可否・金額・申請手続きの詳細は、厚生労働省の各制度ページや、社会保険労務士などの専門家にご確認ください。本記事は制度の概要を整理した情報提供であり、受給を保証するものではありません。
まとめ
外国人雇用で使える助成金の多くは在留資格を問わず、要件を満たせば使えます。外国人特有の制度の中心は人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース・上限80万円)で、特定技能1号でも対象です。在留資格で可否が分かれるのは無期雇用・長期定着を要件にする正社員化コースだけ——帰国が前提の特定技能1号は対象外ですが、特定技能2号は対象で、処遇改善支援・業務改善助成金は特定技能1号でも対象になり得ます。加えて、東京都のように自治体の上乗せ制度がある地域もあります。いずれも、外国人を雇うだけではもらえず、認定を受けた計画に基づく取り組みと要件の充足が前提という点は共通で、金額・要件は年度で変わります。最新の要件・金額は厚生労働省の各制度ページや社会保険労務士などの専門家で確認しましょう。
採用にかかる費用の全体像は特定技能の採用費用・相場で、登録支援機関への委託費の相場は登録支援機関の費用相場で整理しています。
自社の採用条件に合う登録支援機関・人材紹介会社を無料でご紹介します(提携先のサービスをご紹介しています)。費用や進め方の比較材料としてもお使いいただけます。助成金の受給可否や申請の詳細は、社会保険労務士などの専門家にご確認ください。
よくあるご質問
- 外国人を雇用するだけで助成金はもらえますか?
- いいえ。「外国人を雇うだけ」でもらえる助成金はありません。多くは、就労環境の整備・正社員化・訓練の実施など、認定を受けた計画に基づく取り組みを行い、要件を満たした場合に支給されます。また助成金は原則として取り組みの後に支払われる後払いで、労働法令を守っていることが前提です。
- 「外国人を雇うと72万円もらえる」という話は本当ですか?
- 外国人雇用に特化した現行制度は人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)で、1制度導入につき20万円・上限80万円です(令和8年4月1日現在)。現行版に賃金要件や生産性要件による上乗せはなく、「72万円」など一律の金額を約束する情報は現行の同コースの内容とは一致しません。金額は年度で変わるため、必ず厚生労働省の最新のガイドブック・リーフレットで確認してください。
- 特定技能の外国人も助成金の対象になりますか?
- 制度によります。就労環境整備助成コース・業務改善助成金・キャリアアップ助成金の処遇改善支援は、在留資格を問わず要件を満たせば対象になり得るため、特定技能1号でも使える可能性があります。一方、キャリアアップ助成金の正社員化コースは、厚生労働省のQ&A(令和8年4月8日版)で特定技能1号は対象外(帰国が前提で在留期間5年・更新不可のため)、特定技能2号は対象と整理されています。制度ごとの可否は本文の一覧をご確認ください。
- 特定技能1号でも使える助成金はどれですか?
- 在留資格を問わない制度が中心です。人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)、キャリアアップ助成金の処遇改善支援(賃金規定等の改定など)、業務改善助成金は、特定技能1号も要件を満たせば対象になり得ます。逆に、無期雇用・長期定着を要件とする正社員化コースは、帰国が前提の特定技能1号は対象外です(厚生労働省Q&A・令和8年4月8日版)。個別の可否は管轄の労働局・社会保険労務士にご確認ください。
- 外国人雇用の助成金はいくらもらえますか?
- 制度と取り組み内容によります。外国人特有の就労環境整備に使える「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」は、1制度導入につき20万円・上限80万円です(令和8年4月1日現在・厚生労働省)。キャリアアップ助成金の正社員化コースは、有期雇用から正社員への転換で1人あたり40万〜80万円(中小企業・対象者区分と期数による)などです。要件・金額は年度で変わるため、正確な額は厚生労働省の各制度ページや社会保険労務士などの専門家にご確認ください。
- 個人事業主でも外国人雇用の助成金を受け取れますか?
- 多くの雇用関係助成金は、雇用保険の適用事業所であることなどの共通要件を満たせば、法人・個人事業主を問わず対象になり得ます。ただし制度ごとに要件が異なるため、対象になるかは各制度の要件と厚生労働省・労働局の案内でご確認ください。
- 助成金の申請は登録支援機関に任せられますか?
- 助成金の申請書類の作成・提出の代行は社会保険労務士の業務です。登録支援機関の業務は支援計画の策定・生活支援などで、助成金の申請代行は含まれません。助成金の申請は社会保険労務士などの専門家と連携して進めるのが基本です。
出典・参考(一次情報)
- 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)(厚生労働省)
- キャリアアップ助成金Q&A(令和8年度版・令和8年4月8日)※A-6に外国人労働者の在留資格別の対象可否(厚生労働省)
- キャリアアップ助成金のご案内(令和8年4月8日現在)※正社員化コース・処遇改善支援の支給額(厚生労働省)
- 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)ガイドブック(令和8年4月1日現在)(厚生労働省)
- GビズID(デジタル庁)
- 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内(厚生労働省)
- 令和8年度 業務改善助成金のご案内(厚生労働省)
- 中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金(東京都(TOKYOはたらくネット))
- 多様な人材が活躍できる職場環境整備支援奨励金(外国人労働者の職場環境整備コース)(神奈川県)
- 外国人介護人材受入施設等環境整備事業(大阪府)
- 外国人材受入企業支援補助金(福岡県)
- 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)リーフレット(厚生労働省)